大事にすべき存在が増える前にやっておきたいこと/マンガ家の権利を守るためのシステムの構築について/「セクシー田中さん」は面白い

Posted at 24/02/01

2月1日(木)雨

昨夜はまたうたた寝をしてしまい、気がついたら1時を過ぎていて、それから寝床に入ったのだが4時45分ごろもう寝ていられない感じになって起きた。壁の横にベッドが置いてあるので布団がよくずり落ちるのだが、起きた時に整えておかないと寝る時にぐしゃっとしたままベッドに入って布団が変な具合のまま寝ることになりがちなので今朝はきちんと整えておいたのだが、バランスを失って壁の柱に手をついたらそこに釘の頭が出ていてぐえっとなった。よくみると何か短冊のようなものをかけていたのかというような釘の打ち方をしてあって、手をつきそうなところにその釘があるのは危険だから打ち込むか抜くかしないといけないなと思いながら手のひらの下の方が傷んだ。今見ると軽く内出血してるくらいの感じなので大したことはないのだが。

さて今日から2月、ということもありちょっと頭の中を整理しようとノートにいろいろ書き始めたのだが、こういう「あとで柱の釘を打っておく」みたいなやつは(まだ暗いし他にうるさいといけないという気持ちと・一軒家だから大丈夫なのだが集合住宅のサガがあるので・ちゃんと頭が動かないうちに金槌とか使って怪我を広げるといけないという気持ちもあり)ちゃんとメモしておかないといけないのだが、こういう「優先度・重大度が判定しにくい事項」みたいなものは処理に困ることがよくある。で、例えばポリタンクに灯油を入れておく(屋外にタンクがあってそこからポリタンクに移して室内でストーブのタンクに給油する)とか忘れがちなことを確認する、みたいなことも一応毎日やっておいた方がいいこともあるので(冷蔵庫に食べ物があるかどうかとか)そういうこと「だけ」を書くノートを作った方がいいと思って書きかけのA5版のノートをそれ用に転用しようと思ったのだが、タイトルを「確認発見ノート」にすればいいのか「気づいたことを書いていくノート」にすれば良いのか迷って仕方ないので両方書いた。

自分で勉強したいことや仕事の上で必要なこと以外にも、管理しなければならないものやことが山のようにあるので本当に把握しきれず、ノートに書くようにしているがそのノートの管理も難しい、みたいなことがあってそれでも少しでも使いやすいようにと小規模アップデートを続けている。アナログだが、それの方が自分には楽かなと。若い人にはまだ自分が管理すべきものや考えることが少ないうちにちゃんと自分に関することの管理システムを作っておくと、管理すべきものや相手にすべき関係、ケアすべき存在などが増えたときに混乱せずに対処できるのではないかと思う。

私は若い頃は大体頭の中でそういうことは済ませていたので、今考えるとノートに書くなりしておけばもっと客観的に自分を見られたところがあっただろうなあと思い返すようなことはあるのだけど、管理すべきもの、面倒を見るべき存在が一度に増えて手が回らなくなってからそういうことをやろうとしても管理スキルがないから難しい、ということになる。料理やら趣味もいいけど、そういう管理スキルみたいなものも身につけておくとそういう意味での仕事が増えてから楽だと思うし、デジタルで全て済ませるよりもアナログ的な部分を残しておいた方がやりやすい面もあるのではないかと思った。

まあこういうのは一般企業や官公庁などで働いていると仕事のスキルとしてはある程度身についていく部分はあるのかなとは思うのだが、みていると教員などはそういうことが苦手ない人が多いし、自営業だと常に修羅場みたいになりがちだから、まあほんとに若くて体力と明晰な頭があるうちにそういうこなし方を身につけておくと良いのではないかと思う。

***

一昨日から「セクシー田中さん」の件でちょっとネットでいろいろ調べたり書き込みすぎたりしていた感じがあるのだが、今の時点で思っていることをいくつか。

日本テレビや小学館、その他関係した責任のある人たちは、「こんなことになって申し訳ない」ということをちゃんと発信した方がいいのではないかということ。「謝ったら死ぬ」と思い込んでいる人が多く、事実それが間違ってはいないことは結構あるのだけど、一人の大きな才能を持った人を死に追いやったわけだから、その辺は「こんなことになって申し訳ない」程度のことは言った方がいいと思う、ということ。それにプラスして、「今後は原作者の意向を十分尊重したい」とか「しっかり話し合って関係者が納得の上で進められるようにしたい」という程度の決意表明はした方が良いと思う。

どうしたらこういうことがなくなるかというのは、やはり法律上は一義的に強いはずの漫画家=原作者の権利が十分に守られていない、尊重されていないということが大きいと思うので、それを解決していくべきだと思う。

マンガ家やクリエイターが自分の権利を守る、ということで言えば、現在の例で思い浮かぶ例は宮崎駿さんとスタジオジブリの存在が一番わかりやすいだろう。宮崎駿さんの創作を支えるために鈴木敏夫さんをはじめとするスタジオジブリの存在があり、高畑勲さんがいた時代は特にそうだったがスケジュールよりも内容優先で完成が予告より数年単位で遅れることも珍しくはなかった。もちろん宮崎さんも全てが自分の思い通りにやっているわけではなくて、鈴木さんたちと衝突することも珍しくなかった感じのことはいろいろ書かれているけれども、やはり鈴木さんという得難い存在があることで宮崎さんの創作が支えられているということは確かだと思う。

もう一つの方向性は、マンガ家自身が自分の創作活動をバックアップするための会社を立ち上げることで、その中で一番成功しているのはさいとう・たかをさんのリイド社だろう。世界的に言えばウォルト・ディズニーのディズニー社という例もあるが、さいとうさんは他社の雑誌に描くだけでなく自分の会社で雑誌も発行しているし、他社で描いた作品も単行本は自分のところで出すなど、利益をしっかり出すとともにある程度強い立場で交渉できるような仕組みを作っている。また、さいとうさんの死後も「ゴルゴ13」の連載を続けられるようなシステムも構築している。

これは別に珍しい例ではなく、手塚治虫さんの虫プロをはじめとして自ら事業を起こしたり、また永井豪さんのダイナミック・プロのように社内に独立したマンガ家を抱えていたりする例もある。税金対策や生産管理のためにそうした会社を作っている人は現在でも小林よしのりさんのよしりん企画をはじめとして珍しくないだろう。

しかしマンガ家個人が経営者になるのはやはりそう簡単なことではないと思うし、さいとうさんはそういう意味でも本当に才能があったと思うが、手塚さんは虫プロを潰したり復活させたりしている。宮崎さんのように、経営的な相棒に恵まれるのは本当に僥倖なんだろうと思う。

その結果、現在では編集者、つまり出版社が個人事業主としてのマンガ家を支える、という例が一般化しているように思われる。これはうまく行っているように見える例も・あるし、新人時代の漫画家が良い編集者に恵まれることで成功するということもよく聞く話ではあるけれども、「よい漫画を制作して雑誌に掲載して人気を得る」ということでは利害は一致するが、(その時点までで既に対立することもままあるとは思うけど)アニメ化や実写化、メディアミックスなどの対応になると、マンガ家と出版社の利害は必ずしも一致しないわけで、テレビ局と出版社が一緒になってマンガ家を丸め込もうとしたり、そういう経緯で不信感を持って連載自体が終了したり出来上がった作品の再展開を原作権を持つマンガ家が一切許可しない、と言ったトラブルも珍しくない。

まあ実際、トラブルは起こるものと考えたほうがよく、私は戦後の少女マンガで最も重要だと思っている作品の一つである「キャンディ・キャンディ」がマンガ原作者と作画家の対立で凍結されてしまっていることなど、マンガ自体にとっての損失であると感じられることも多い。まあマンガ原作者と作画者の例で言えばこれも私の好きな「アクタージュ」が原作者の不祥事で作画者が仕事を失うなどの理不尽もあり、人間だから何が起こるかわからないけれどもなかなか悲しいものがあると思う。まあこの種のトラブルは今回のケースとは関係はないのだが。

だからいろいろな意味でトラブルは起こるという前提でシステムは構築されるべきで、マンガ家個人の権利を守るための仕組みが必要だということになる。マンガ家個人のバックアップ体制を強化するという意味では先に述べた「会社を作ってマンガ家個人、あるいは信頼できる手腕のある人」が作品を守っていくというのはある種の理想だが、現実には誰にでもできることではないだろう。

そうなると、マンガ家個人の権利を法的に守り、作品が作家の意に沿わない形で使われることがないように働く「代理人制度」が重要になるだろう。これは現在でもないことはないようだし、漫画家協会なども「紹介する」と言ってはいるのだけど、まだ十分にそうした態勢が出来上がっているとは言えないように思う。マンガ家は基本的にクリエイターでいわゆる世俗の事柄には強くない人が多いし、またそうしたことに煩わされずに制作に没頭したい、という人も多いから、マンガ家として国会議員になった赤松健さんやオタクの支持を得て議員になった山田太郎さんを中心に、そうしたバックアップシステムを国が中心になって、あるいは少なくとも支援する形で充実させてほしいと思う。「日本のコンテンツの持つ最大の力はマンガの原作力」ということを共通認識にし、国家的な文化輸出を続ける韓国や物量で世界を覆おうとしているハリウッドやディズニーに対抗して雇用を生み出し産業を振興するという方向でアピールして行けたらいいのではないかと思う。(アニメーターの待遇改善などの問題も思い付いてしまうけれども)


国立マンガ図書館みたいなものを作り(民主党政権で潰されたが)、同時にマンガ家の権利センターみたいなものもそこにおくことで、個人のマンガ家にとっても相談しやすい形でそういうものを作って、出版社がマンガ家と契約を結ぶ際にそういう事項の説明も義務付けるなどして、よりフラットな形で権利を守る態勢ができると良いなと思う。

まあこれは素人の一案に過ぎないが、こういう有象無象の提案も何かの機会に反映されて生かされることがあったらありがたいなと、マンガのまあまあヘヴィな読者である私としては思う。

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「セクシー田中さん」をめぐる騒動はもうなるべく追いかけないようにしたいと思うのだが、まだ問題がケリがついたわけではないのでどうしても引っかかってしまうことは出てくるかもしれないなと思う。Twitterではついいろいろ調べたり言ったりしてしまうのだが、この件以外にも同種の問題はかなりたくさん表沙汰になっていて、表沙汰になる以前の問題はさらにたくさんあるのだと思う。マンガ家個人の権利が守られるような仕組みを、それぞれの立場で作っていってもらえればと思う。こちらは見守り意見し賛同し反対し、みたいなことしかできないが、とりあえずはマンガを買って読むことで応援したいと思う。

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「セクシー田中さん」は今5巻の真ん中らへん、小西と進吾の会話のところを読んでいる。相変わらず面白い。

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