「推しの子」139話「ルッキズム」を読んで考えたこと/「セクシー田中さん」をめぐる事件に展開:日本テレビとプロデューサーによる事実説明が待たれる
Posted at 24/02/09 PermaLink» Tweet
2月9日(金)曇り
昨日までに比べると冷え込みは少し緩んでいるようだ。昨日は午前中会計の仕事をしてもらいながら書類を取りに行ったり銀行へ行ったり。午前中になんとかブログを書いたけど、午前中にやろうと思っている仕事がなかなか片付かない。かといってサボっているわけでもないので、つまりはTwitterを見ている時間が長いということなんだろうと思う。
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あとは木曜日はジャンププラスに加えてヤングジャンプとモーニングの発売日なのでそれを読む時間もある。昨日はヤンジャン連載の「推しの子」の139話「ルッキズム」が面白く、何度も読んでしまったということもある。ギャグとシリアスの落差が激しく、また「ルッキズム」というある意味今日的かつ普遍的なテーマでもあり、物語は過去の真実に迫りつつある、というところでもある。
ルッキズムとは見た目の良さに人は惹かれる、突き詰めて言えば性欲を感じ人を動かす、場合によっては常識から人を連れ去り、魔道に落とす、というようなことまで含めての「見た目主義」というような意味だ。現代では「美人が得をして美人でないものが損をするということに対する批判」として取り上げられることが多いが、上に述べたように「美しさ」は人間という生物の持つ欲望の根源に関わることだから、人が他者に対して美しさを求め、その反射として自分に対しても美しさを求めるという世の中の中で、「天性の美しさ」を持ったもの、そしてその周囲にあるものがどのように運命に翻弄されるか、ということだろう。主人公のアイはそれゆえにアイドル=偶像に仕立て上げられ、またこの物語のラスボスと目されるカミキヒカルもまた幼い時からの輝くような美しさの故に芸能界で翻弄される、という展開になるように思われる。
だからルッキズムというのは恋愛とは必ずしも言えないし、性欲の問題に突き詰めるだけでは話は済まないし、差別や特権の問題とも絡み、また「美しさ」という究極の聖なるものへの指向も含まれる重層的な問題だということになる。この問題を解くにはフェミニズムだけでは問題の一面しかとらえられないだろう。
こうしたテーマを扱ったものとして一番思いつくものとしては「べニスに死す」だろう。トーマス・マン原作の小説としても、ルキノ・ヴィスコンティ監督、ダーク・ボガードとビョルン・アンドレセンが主演のこの映画では、アンドレセン演じる美少年の美しさに取り憑かれたボガード演じる老作曲家が疫病により危険なベニスを離れることができず死んでいくという話で、これは「天性の美」に恋焦がれてしまった側の物語であったわけだけど、この映像自体が非常に美しく耽美的で、背後に流れるマーラーの五番の音楽とも絡み、大ヒットした。
「推しの子」では少年少女が美をある意味至上価値とする芸能界で翻弄されつつ自分の求めるもののためにそれぞれに生き抜き、あるいは死に追いやられるわけだけど、その中で人間の持つ様々な憧れや生への希望といった明るいものから、憎しみや迷い、怒り、それを見つめる視線、大人としての役割そのほか、様々なものが描かれているわけだ。
だからこの作品はストーリーの面白さもさることながら、美しい、綺麗な、かわいいしかし性的なものも含めた、それでいてシリアスに偏らないギャグも決まる絵がなければ成立しない作品なのだけど、そういう点で横槍メンゴさんの絵は唯一無二の絵なんだろうなとも思う。
思ったより「推しの子」について考察してしまったが、それだけの読み甲斐のある作品であることは確かだと思う。
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昨日は「セクシー田中さん」をめぐる問題について、ドラマ化の脚本を担当した相沢友子さんのコメントが出て、「原作者が原作に忠実に脚本を書くことを条件にドラマ化を許可した、ということ自体を知らなかった」と釈明・謝罪したり、小学館の編集者たちが「一同」の声明として「自分たちは日本テレビ側に原作者の意思をちゃんと伝えた」と表明したり、それを受けて小学館本体が声明を出したりとかなり展開があったのだが、そうなると問題は「日本テレビのプロデューサーが脚本家に原作者の意向をちゃんと伝えたのか」、という点に絞られてきたことになる。プロデューサーの3氏の名前は今までも取り上げられてきているし、調べればすぐわかることで今は書かないが、番組制作に最終的な責任を持つプロデューサーと日本テレビ本体の事実説明はますます求められてきたということになる。
編集者たちの態度表明に漫画家さんたちが感動してある種のカタルシス、クライマックスが起こってしまってなんとなく「ヤマを越えた」みたいな雰囲気になっていて大丈夫かなという感じもあるのだが、問題はまだ何も解決していない。テレビ側の制作態度やマンガ家・原作者に対する接し方の改善について日本テレビは何か言わなければこの問題は何も解決していないことは忘れてはいけないだろう。
芦原妃名子さんの死に少しでも報いることができるとすれば、そういうことしかないということは忘れられるべきではない。
もちろん民事刑事上のことに関してはまだ残っているのだが、とりあえずはということとして。
***
なかなか本を読む時間と物事をこなす時間が取れない。新宿駅に7時間もいたのだから本当はその間に少しはできたかなと思わなくもないが、まあ条件を整えた上で取り組んだ方が効率も上がることは確かなので、その辺しっかりワンオペだがこなしていかないとはとは思う。
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