ブラームスのダブルコンチェルト/国際主義の立場からのグローバリズム、特にリベラル帝国主義に対する批判
Posted at 23/12/25 PermaLink» Tweet
12月25日(月)晴れ
昨日久しぶりに東京の自宅に帰ったのだが、どうもかなり疲れがたまっていたらしく、お昼ごろに帰ったのに外出する気にならず、日が暮れてから西友に買い物に行くのがやっとという感じだった。
8時過ぎに実家の地元の駅を出る特急は華やいだ若い女性が多くて何かなと思ったが、昨日がクリスマスイブであることと関係があったのかもしれない。カバンの中を見てiPhoneがないのに気付き、iPadは持っていたのでずっと「葬送のフリーレン」をkindleで読んでいた。東京駅で降りて弁当を買い、丸の内の丸善に行って馬場紀寿「初期仏教」(岩波新書)をようやくゲットして、少しケーキでも食べてから帰るとカフェに行ったら空いていたのに順番待ちとのことだったのでやめて、東西線に乗ったら次に来る列車が快速だったので快速停車駅で降りることにし、駅前のローソンでケーキを買って帰った。
家についてから鞄を開けてみたら中からiPhoneが出てきて、なんだったのかと思ったが、どうもこういうのも疲れているんだよなあと思う。ガラケーも持っていたからiPhoneにかけてみたらあるかないかわかったのに、と後で思ったが、まあ普段からスマホに頼りすぎなのでわずかとはいえ「ない」時間があったのはよかったかなと思ったり。iPad見てたんだから変わらない気もするが、まあツイッターからは4時間くらい離れていたことになる。
西友で鮨やスパークリングワイン、ポテトチップスやサラダなどを買って帰り、何となく自分にお疲れ会をして、テレビも見たいものがなかったから音楽を聴いていたのだが、LPで中古で買った(多分ディスクユニオン)ブラームス作品102の「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」がかなり良かった。買ったときにも聞いたはずなのだがあまりちゃんと覚えてない。古いレコードはいつの録音か書いてないのでネットで調べてみたら、「クリスチャン・フェラス&ポール・トルトゥリエによるブラームスのダブル・コンチェルト。巨匠2人よる品の良い華麗な演奏で素晴らしい。パウル・クレツキ指揮フィルハーモニア管弦楽団が、またバランスの良い伴奏をして、2人を引き立てている。」とあり、1962年6月22・23日の録音らしい。後半にはベートーベンのバイオリン奏鳴曲1番が収録されているが、ベートーベンらしい曲でこれもよかった。
https://twitter.com/hori_shigeki/status/1626987885701521410
ネットで堀茂樹さんの「グローバル化と国際化の違い」という指摘を読み、紹介されている施光恒さんという方の新聞記事に当たり、読んでみていろいろ思うところがあった。
https://www.sankei.com/article/20220111-UUKRQNE2FFP5RPPIECJSKISL2I/?685184
確かに指摘されるまでは私自身も国際化とグローバル化を混同していたところがあったなと思うが、ただその辺に違和感を感じていたことは確かだなと思う。昔考えていた国際化とこのところ実際に進行していたグローバル化というのは何だか違う、と感じていたのだけど、でもそれは子どもの頃考えていた国際化というのが実際に経験してないことだから実際に経験してみたら思っていたのと違った、ということなのかと仕方ないなみたいな感じで思っていたけれども、「グローバル化と国際化は違う」と言われて見たら、そうかなるほど、と腑に落ちた感じはある。
実際に進行したグローバル化というのは二つの波があったと思う。一つは「経済のグローバル化」である。これに日本は上手く波に乗り損ねた。IT革命で世界経済が全体的に好調になる中で、日本は「経済敗戦」と言われる状況に陥り、「失われた30年」を迎えることになった。これは0年代の小泉改革とリーマンショックにぶつけられた民主党不況=事業仕分けなどの緊縮政策の二重の苦しみがあり、そこに阪神大震災や東日本大震災などの自然災害や原発事故などの国論を二分する問題が持ち上がったことなどが大きかったのだと思うがそれだけではなく、過度のリストラや研究投資への著しい絞り込みが最も大きな原因で、これは予算当局や財政当局・政策担当者の責任は免れないと思う。
ただその間、「経済のグローバル化」は進行して日本以外の多くの国は豊かになっていった。日本は豊かになった国々からのインバウンドなど、世界経済に依存する形での経済運営になってしまっているのは残念だが、少しずつ自力回復もし始めている感じはする。
もう一つのグローバル化というのは「思想のグローバリズム」であってつまり「リベラリズムの席巻」である。いわゆるポリティカルコレクティズムやマルチカルチャリズム、フェミニズムやLGBT運動など、主にアメリカ民主党系の人々が日本に対し仕掛けてきた一連のことで、日本では学生運動や過激派の生き残りの勢力にアカデミズムや社会運動家が共振してついには関連立法までなされるような状況になってきている。
日本ではこれらの動きに対して強い抵抗も起こっているわけだが、世界的に見れば資本主義的グローバリズムは世界的に見れば受け入れられ、成功した国も失敗した国もあるが、リベラリズムに関しては西側と日本や韓国などの一部にとどまっている感じはする。
こうした経済と思想のグローバル化に対して、ヨーロッパ諸国の中でも反対の動きは起こってきているが、19世紀からの経済のグローバル化の先駆けだったイギリスや20世紀から21世紀の経済のグローバル化を主導したアメリカにおいて、ブレグジットやトランプ現象などの反グローバル的な動きが起こってきているのは面白い、というか注目すべき現象だろうと思う。
もともと非欧米諸国ではどちらにも抵抗があり、アジア諸国でもアジア通貨危機などグローバル化に伴う痛みはあったけれども、固定相場制で通貨危機の影響を受けなかった中国の経済好調にも牽引されて今では経済のグローバル化自体は受け入れているように思える。しかし多くのアフリカ諸国などまだその波に乗れていない国もあるし、アルゼンチンやスリランカなどそれに対する対応を失敗して経済的な困難に落ち込み、ドラスティックな変革が叫ばれている国もある。
しかし「思想=リベラリズムのグローバル化」においては、非欧米諸国の多くはこれに乗らないようにしているように思われる。これはウクライナ戦争において案外ロシアを支持する国が多いという現象という形を取って表れているが、アメリカや欧米の「リベラル帝国主義の押しつけ」に強い抵抗を感じている国は多いということでもあるだろう。
現在最も帝国主義的な動きをしているロシアが返って「反リベラル帝国主義」の立場から支持されているというのは皮肉であるけれども、それだけ各国の危機感が強いということなのだろう。
思想的なグローバリズムというのはある文明文化の帝国主義という形を取るわけで、欧米のリベラリズム帝国主義に対して、イスラムもまたグローバリズムであるから、イスラム主義=カリフ主義もまた帝国主義だろう。現在の思想のグローバリズムがリベラリズムの形を取っているからリベラル帝国主義に見えるわけで、思想の押しつけという本質はこれらの思想のグローバリズムに共通していることに違いはない。
共産主義と自由主義の対立、イスラムと欧米近代主義の対立、中華主義とアメリカ帝国主義の対立などもまた結局はグローバリズム同士の対立と解釈できるのだろうと思う。
一方で国際主義というのは国家の存在を前提とし、国民国家の歩みを尊重する形でそれぞれの国の文明文化を尊重しつつ交流していくということだろう。もともとアメリカやフランスの文明=civilization主義に対しドイツがculture主義を唱えたのは後進国が先進国に呑み込まれないための抵抗だったわけだが、現代でも経済的・軍事的に弱い非欧米諸国は欧米化に呑み込まれないために様々な抵抗をしている。
しかし先に行ったように最近の減少として面白いのはイギリスやアメリカのようなグローバリズムのトップランナーの国から反グローバルな動きが強く起こってきていることで、これは左翼的なものが取り上げられがちだが、ナショナリズムの立場からグローバリズムを批判するジョンソンやトランプが力を得ていることが重要なのだろうと思う。
トランプについてはいろいろな角度からめちゃくちゃな点も結構あって批判の多い人物ではあるが、つまりは「アメリカは世界の警察をやめる」というのが彼の反グローバリズムなのであって、これは勢力を伸ばしたい中国やロシアには都合のいいことだから世界の権威主義国から支持された、みたいな側面のみが強調されているけれども、経済のグローバル化はほどほどに、思想のグローバル化はやめにしよう、というのが彼のメッセージで、彼の「アメリカを再び偉大に MAGA」というのは「世界に関わる帝国主義的なリベラリズムや侵略的な資本主義は放棄し、アメリカはアメリカらしい、自国の工業力で発展できる、国に戻ろう」というメッセージであると解釈すれば、うなずけるところは多いだろう。
ただ軍事的に見れば中華帝国主義の中国や白人右翼の中心になりつつあるロシア、またイスラム勢力などのグローバル帝国主義の芽はあるので、アメリカはそれに対抗できる力を持っている必要がある、というところをどこまでトランプが見ているのかという心配はあり、故・安倍元首相がトランプとの付き合いを語っている中で強調されているのがそうした国際軍事的な「同盟国の重要性」であったとは思う。安倍首相亡きあとのトランプが政権に復帰してもそのあとの世界戦略が妥当なものになるのかは心配はあるが、リベラル帝国主義を踏襲しているバイデン政権とは一線を画す外交になることは間違いないだろう。
保守主義において国際関係をどう考えていくかというのは視点が難しいなと思っていたが、「アンチグローバリズムの国際主義」という考えに立てばそれは構築できるなと思ったし、たとえば戦前の日本帝国主義を批判する視点としては、「影響下に置いたそれぞれの国の尊重」という「アジア主義」的な大義の方向でなく、いわゆる皇民化政策など「日本のやり方のグローバル化」の方向性を取ったことに問題があったという総括はできる。これは日本の官僚機構の利便性などの動機があったような気はしなくはなく、官僚機構というものは本来的に効率化を至上とした標準化・平準化を求めるものだから、反官僚主義的な側面が加わるのも保守主義の一つの方向性としてはあるかなという気はする。
まあ国際主義の観点からのグローバリズム批判というのは世界の方向性を良い方向に変更するうえで重要な視点になるかなと思ったので、素描ではあるが書いてみた。
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