整理こそがポイント/車椅子の人の送迎/「ダンス・ダンス・ダンスール」ケアする人とされる人/「上手くなりたい」と「上手いと思いたい」/「初期仏教」僧院の成立と仏教の変化/「無記」間違った問いと文脈の奪い合い
Posted at 23/12/13 PermaLink» Tweet
12月13日(水)晴れ
今朝は昨日ほどではないが暖かめの朝だなと思っていたのだが、6時を過ぎてから気温が下がっている感じがする。5時前に起きた時には3度あったが6時の気温は0.7度。寒気が入ったのか放射冷却が進んだのか。あと10日で冬至ということもあり、日の出も遅いので暗くて寒い冬が来たなと思う。最近灯油の配達が時間がかかるようになったので年内に配達してもらえるようにと月曜に注文したら昨日もう来てそんなに早くなくてもいいのにと思ったり。配達の方でも年の瀬が押し詰まると忙しくなるから今のうちに配達したい、というのがあるのかもしれない。いろいろあるな世の中。
普段、月曜日はジャンプだけでなくスピリッツとヤンマガも発売日で、ジャンプ+の方も読んでいる作品がいくつも更新されるのでマンガ的に忙しい日なのだが、「葬送のフリーレン」を連載で読むようになってからは、水曜日の朝もマンガ的に充実するようになってきた。マガジンだけでなくサンデーも買うからで、ジャンププラスでも読んでいる作品がいくつも更新される日なので読むものが多いということである。
昨日は午前中いろいろ片付けて(特にノートシステムの整備だが)かなり疲れたのだが、「整理こそがポイント」というか、自分が何を求めているのかはっきりしないままいろいろ行動しているので、自分で納得ができるように整理することでそれがはっきりし、「何を求めているか」が分かればあれをやろうこれをやろうというアイデアもたくさん出てくる、ということだよなと思った。
かなり疲れたがまだ仕事はあり、午後は母を歯医者に連れて行った。午前中に雨が上がったのでラッキーと思っていたのだが、午後また降り出して、まあそれほどでもなかったのだけど雨の中車椅子を押して段差を越えるのはちょっとスリリングではある。いつもは10分くらいで終わる治療が昨日は30分以上になって、車椅子を出し入れしやすい位置に車を止めたのでその隣に違う車が入らないかとひやひやしていたのだが、とりあえずなんとかなった。自分のことなら適当に済ませてしまうことでも、母とはいえ違う人の面倒を見ながらいろいろやるのは大変だなといつも思う。集中して車椅子を押し上げたり段取りを実行しているときに母の方はやることがないのであれをやれこれをやれと言い出すから後にしてくれと強い声で言いながら車に乗せることになる。
ドアを開けて、そこに車椅子を入れ、立たせて、つかまった状態で車椅子を引き、足を持ち上げる手助けをし、座る時にこちらも体幹を使って押し込む。シートベルトをさせて、自分は車椅子をたたみ、ハッチバックを開けて車椅子を持ち上げて入れる。というようなことをやっている時に「煎餅を買ってくれ」とか言われても「後で言ってくれ」という気持ちにはなるのだよな。まあもともとそういう状況での空気を読むのは苦手な人なのだが。
まあとりあえず施設に連れ帰って看護師さんに治療の概要を話し、次回の予約について話して施設を出る。甥姪たちに葉書を書いたので出してくれというが切手も貼ってなくて住所も書いてないからカバンを探ったら切手はあったので貼って、時間的にはかなり厳しくなったが車を走らせてツタヤへ「ダンスダンスダンスール」の27巻を買いに行き、職場に出てから住所を調べてポストにダッシュした。
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「ダンスダンスダンスール」はローザンヌに出場する前の頃の話が載っているところで、ブランコがバイクで事故る場面があるのだが、ずっと連載で読んでいるはずなのにこの場面の記憶がない。恐らくはものすごく忙しい時に(月曜日は朝からかなり忙しい日がある)後で読もうと思って読み忘れたのだと思うが、この辺りの展開はとてもエモーショナルだ。純平が大人になっていくということは、逆にいえば純平を今までサポートしてくれてた人たちが「純平から卒業する」みたいな意味もある、みたいなことは「これはあるよなあ」と思う。誰かが誰かをケアするということは、ケアしている人がケアされている人に知らず知らず悪くいえば精神的に依存したり、よくいえば心の支えになっていたりすることはよくある。そしてそれが自分はそれでいいのかという忸怩たる思いに繋がることもまたあるわけで、その辺の人間の出会いと別れというのは「一人の人間として生きる」ということにおいてとても大事なプロセスなのだよなと改めて思った。
バレエを描くマンガというのは概ねステージにおける「キラキラ」と、人間関係における「ドロドロ」を描く感じのものが昔から多い気がするが、「ダンスダンスダンスール」はそれぞれのキャラクターが強烈に「自分を生きよう」としていて、そのあたりで衝突もあるが清々しさもある、みたいな感じになっている。最近のものでいえば「絢爛たるグランドセーヌ」は若いダンサーの本当にキラキラした部分を描いてドロドロはあまり描かないところが良いところだなと思うのだけど、まあそういうのも時代に求められるものということもあるのだろうなと思う。
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これはネットで絵描きアカウントの方が書いていたことだけど、「絵が上手くなりたい」と「上手い絵を描きたい」というのでは全然違う、という話があって、前者にはアドバイスできることはたくさんあるが、後者には手を焼く、みたいなことが言われていてなるほどそうだよなあ、と思う。
これは例えば「ブルーピリオド」で八虎が「絵が上手くなりたい」と言っていたり、「GIANT KILLING」で椿が「サッカーが上手くなりたい」と言っていることを思い出させるのだが、彼らは確かに「上手い絵を描きたい」とか「上手いプレーをしたい」という言い方はしないのである。
それは「向上心」ということだと思うのだけど、「上手い絵」とか「上手いプレー」というゴールを決めてそれに向かって頑張るという頑張り方はある、これは受験でいえば「合格する」ということなわけだけど、それはそれで頑張れるが、あるレベルに達したそのあとで頑張るというのが続かなくなりやすい。それに比べれば常に技術を向上させたいという欲望は終わりがないので、まだまだ上があるし、頂点に達しても頂点として何をやるべきか、みたいな課題は生まれるので、最後まで課題が消えることなく取り組んでいける、ということがあるわけである。
合格してしまったらその後学習する気がなくなる、という現象は実際よくあるわけで、こういう「向上」ということそのものにこだわれるタイプの方が伸びることは確かだ。「合格を目指す」というのは言葉を変えていえば「結果を欲しがる」ということであって、そこで結果を手に入れてしまったらもう願望が成就してしまって自分を導く灯台が見えなくなる、ということでもある。
この辺りの「向上心と目標」というテーマはまた考えてみたいと思うので、これに関しては今日はここまでにしておきたい。
***
「初期仏教」第2章「初期仏典の成り立ち」第1項「仏教の変容」読んだ。アケメネス朝のインドの一部支配やアレクサンドロスの東征によるインドと仏教への影響という点で、いくつかへえっと思ったこと。まずマウリヤ朝という巨大統一国家ができたこと自体が、アケメネス朝の統治方法を取り入れて実現した、という見方は初めて知ったのでへえっと思った。
それからギリシャ美術の影響でブッダを象徴するものとして従来の仏塔や菩提樹とともに仏像が製作されるようになった、というのは中学高校で習ったけれども、遊行していた出家集団が西方との貿易により利益を上げた富裕層の寄付によって僧院を寄付され石窟寺院などが作られたが、僧院自体が経済活動を行うようになって僧伽の組織自体が変容したというのはなるほどと思った。彼らは恒久財産を運用することで継続して生活できるようになり、口伝の仏典が書写されるようになって蓄積されていって、ナーランダ僧院のような学問寺が成立し、またナーガールジュナ(龍樹)の「中論」のような個人の作品も書かれるようになったというのはなるほどなあと思った。つまり大乗仏典が書かれるようになったのもこうした僧院・学問組織が形成されてきたからだということで、これは納得できるものがあった。まあ私は歴史系の人間なので、こういう説明は理解しやすい。50/221。
***
清水俊史さんのツイートに
https://twitter.com/AKBhVis/status/1734594899985793292
とあり、後の二つに関してはまだわからないが、一つ目の「無記」についてはなるほどと思った。「ブッダという男」に出てくるが、ブッダが輪廻転生に関する問いに答えなかったことについて「形而上的な質問に対して答えなかった」のではなく、「異教徒によって立てられた「間違った問い」について答えなかった」ということだと言っていて、これはなるほどと思った。
これは例えば今アメリカでも似たようなことがあるが、1950年代のマッカーシズムの全盛期に「あなたは共産党員であるかあるいはかつてそうであったか?」と問われて沈黙を守ったことで干された十人の映画監督、「ハリウッド・テン」の話などを思い出した。民主主義社会において思想信条の自由を無視して迫害目的で思想を問うことは「間違った質問」であり、それに答えず沈黙を守ることは「正しい態度」なわけである。ブッダも彼らの質問を彼らの文脈で理解されることを避け、改めて無我などの仏教の教理を説いたわけで、だから「形而上学的な問いに沈黙した」わけではなく、「輪廻転生を否定した」わけでもない、という説明はわかりやすかった。
つまりこれは、何かを学んでいるときに生徒から本質をついた質問が出ると「いい質問だね!」と褒められることの逆で、「それは悪い質問だ」ということなわけである。ものを教えていると筋の悪い質問、トンチンカンな質問というものはあるし、また逆に自分に都合のいい答えを引き出すためにタチの良くない質問をする生徒もあったりするわけで、それは質問の仕方自体をたしなめることになるわけである。
「質問はなんでも自由」というのは原則的に正しいわけだけど、「その文脈を理解するために役に立つ質問」であるかないかというのはあるわけで、場合によっては「質問自体の質が良くない」と否定することも必要だということだろう。
ただこれは議論においてはなかなか難しいところもあり、議論というものはある意味「文脈の奪い合い」であるというところもあるから、相手を微妙に困らせる質問を放つという技術もあるわけで、Twitterなどをみていると日々そういうことが繰り返されている。伝統を否定するとかポリコレを否定するとかは大きな文脈の語りから始めなければいけないからそうした当意即妙の議論術とはまた違ってくるのだろうとは思うのだけど、またこの辺りも「対話のレトリック」やアリストテレスの「弁論術」なども読みながら考えてみたいと思う。
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