「フットボールネーション」:合理的な体の使い方を取り戻す/日本で保守であることと明治維新というアポリア
Posted at 23/12/03 PermaLink» Tweet
6月3日(日)晴れ
今朝は出かけるということもあり、3時過ぎに目が覚めたときにもう起きることにした。昨日はブラタモリを見ながら寝落ちしていたので8時過ぎには寝かかっていた。金曜土曜あたりになるとどうもパワー切れになっていていけない。今日明日でエネルギーを補給できると良いのだが。
「フットボールネーション」をずっと読み返しているのだが、この作品はサッカーというものについて科学する、みたいなテーマがあるのだけど、いかにヨーロッパの一流選手たちは理にかなった動き方をしていて、日本のサッカー教育が間違っているか、みたいな感じになりがちなので、ある意味究極の「欧米出羽守」マンガと言えなくはない。
ただサッカーという競技が欧米のスポーツである以上、そして野球と違って国別対抗で優勝するということはまだ実現できていない以上、ヨーロッパや南米が「先進国」であることは間違いなく、そこから良いところを謙虚に取り入れるということは悪いことではないと思う。
「絢爛たるグランドセーヌ」などを読んでいると、バレエというジャンルがいかに西欧文化の密接に絡み合って作られてきたかということはよくわかるし、そういう意味でヨーロッパに留学することの積極的な意味というのもよくわかるのだけど、サッカーは芸術ではなくスポーツ競技なので、極端に言えば勝てばいい。それが日本においてなかなか優秀な選手を育成できない現状というものがあって指導者の意識改革を図るという意味ではこうした徹底的に科学的な分析をしながら物語におこしていくつくりは悪くないなと思う。
私は右翼反動保守なので(笑)インナーマッスルの有用性を強調するならバレエよりも相撲を例に出せばいいのにとか思うのだけど、まあそれは何を用いるかは作者の勝手なので余計なお世話なのだし、まあ相撲よりもバレエの方の言語化の徹底ぶりがすごいのは確かなのだが、まあつまり身体の使い方として明治以降の軍隊教育・学校教育・体育教育の中でなされてきたことをより合理的で自然なものに戻していくという意味では古武術などにも通じる話があるなあと思いながら読むことも多い。
ストーリー的には友達のために罪を被って少年院に入ったり、ストリートで日系ブラジル人たちと賭けサッカーをやったり、エリートの家庭に生まれながら反抗して家を出てネカフェ難民やってたり、捨て子で施設で育った女の子をちゃんと扱ったりなど、割と昭和残侠伝か、と思うような古い感じの男っぽい主人公なのが全然出羽守っぽくなくて面白いのだけど、絵柄の個性みたいなものもあるし、全体にすごく「いい味」が出ていてつい読まされてしまうところがある。
このところ一年に一巻の単行本出版ペースでスペリールの連載も掲載されてるとレア、みたいな感じで読んでいるのだが、何巻も続いた天皇杯決勝もいよいよ決着がつきそうなので、この後の展開も楽しみにしたいと思う。
***
日本において保守であるということは、「明治維新」を原点としてそれに返る(そこから振り返る)べきなのか、それとも悠久の日本の歴史の中から日本の保守たる所以みたいなものを見出していくべきなのか、ということを考えると、私はできれば後者の方がいいと思うのだけど、日本が近代国家ないし現代国家として生きていかなければならないことを考えれば明治維新以降の歴史も軽視することはできない。日本で保守であろうとすることはそこのある種の矛盾をどう解決するかということが伴うし、それにうまく成功して説得力を持つ言説というのはまだ生まれていないと思う。小林秀雄が一つはその試みをしたとは思うのだが、後ろの世代がまだ十分にそれを受け取り受け継げていないようには思う。
また明治以前の日本像というものも欧米に対し日本らしさを強調するために日本の中の非中国的な部分を強調してきたという指摘もあるように、福澤諭吉以来のそうした営みが逆に日本人自身にとって日本らしさを見えにくくしている面もあるのではないかと思う。
呉智英さんのいう「戦後を疑うだけでなくまず明治維新から疑え」というテーゼは日本の保守にとっては不可欠の論題だと思うのだが、その辺りで「保守と言ってもいろいろある」になり、まだうまく言説化されていないなといつも思う。なんとかしたいところである。
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