学び直し/ありふれた動作を見せることで見るものを感動させること/Dモーニングとかヤンジャンアプリとか
Posted at 23/12/08 PermaLink» Tweet
12月8日(金)晴れ
今朝の今のところの最低気温はマイナス1.7度。昨日に比べると寒く感じるが、まだ厳冬期の寒さではない。このところフロントガラスが凍結しなくなっているのは、空気中の水蒸気量が下がっているからかなと思う。毎年かかとにひび割れができて痛いのだが、今年もかなり痛くなってきた。水分は気をつけてとっているつもりだが、冬だなと思う。さらに気をつけたい。
昨日は午前中会計の事務をやってもらっていたのだがパソコンがおそらくWindowsの更新が自動的に行われた後でスペック不足なのか動かなくなり、頼まれて診たのだがいろいろとトライして持ってる知識や機器を総動員して見ているうちになんとか作業できる状態にできた。まあ良かったのだが、昔はかなりパソコンなら自分の使おうとする範囲なら結構なんでもわかるつもりだったけど考えてみればそれは2000年ごろの話で、その後20年以上の進歩には十分ついていけてない。改めていろいろ使いこなすためには学び直していかなければならないことが多いのだろうなと思ったり。世の中の変化についていくと言うことは、それだけで大変なことなのだと思う。
後を任せてまずクリーニングを出し、書店に車を走らせて来年の歳時記カレンダーと日めくりを二つ買う。日めくりはなんか好きなので職場と作業場の両方にかけている。昔は父の同級生の薬局が毎年暮れたのでそれを使っていたのだが、薬局が店を閉じたのでその後は毎年買っている。歳時記カレンダーは以前母が俳句をやっていたので参考のために買っていたのだが、母が施設に入ってからもずっと買っているのは、まあ家に帰ってきた時に変わらずに過ごせるように、と言う気持ちもあるのだなと今書きながら思った。そう言う無意識の気持ちというのは自分ではよくわからないところもある。
昼食の買い物をして戻り、会計の人といろいろ雑談して今考えている企画の話などしたりしたのだが、少しずつアイデアも出てきたのでうまく形になると良いなと思う。
昼食後うたた寝をした後LINEを見たら荷物がヤマトの営業所に届いているという連絡が入っていたので受け取りに行くことにする。時間があったら図書館にも行こうと思ったのだが、ちょっと時間は無くなった。
***
その代わりに家の近くの古書店に行くことにし、のぞいてみると棚の配置が変わっていて、薪ストーブの周囲を棚で囲う構造になっていて、基本的にこの書店は美術書が中心なのだが、入り口のあたりには一般書の棚もあって、仕入れ先から一緒に仕入れてきた本と思われるものが並んでいた。その中で興味が湧いたのが梅若猶彦「能楽への招待」(岩波新書新赤823)で、ストーリーも日常性も与えられない時に実際にコーヒーの入ったカップを持って「コーヒーを飲む」という動作をどのように見せるか、それを能楽師とパントマイムの人がやったらどうなるか、という話から入っていて、なかなか面白いなと思った。
これはつまり「コーヒーを飲む」というなんの変哲もない動作を見せることでいかに感動させられるか、という話である。つまりリアルな動きをただ見せたところで感動は与えられない。しかし考えてみれば、日本の芸事というのは究極はそういうところがある。能の多くの時間はただシテが歩くことに費やされている。歩くこと、立ち上がること、そうした動作一つ一つに詰まっているものを見なければ能を見たことにならない、ということがある。例えば茶道ではお茶を立てること、お茶を飲むこと、その一つ一つの動作が芸であり、感動であるわけで、またそれは落語家が高座でただ「そばを食う」動作をするだけで感動させるのと似ている。「幕末太陽伝」では主人公のフランキー堺が、ただ「羽織を羽織る」場面を何度も練習していた、という話がある。これはもちろんヨーロッパ映画などでも同じだろう。日常的な動作ほど難しいというのは、舞台芸術・映像芸術にとってそれらが根本を成り立たせる部分があるからだろう。
昔、三代目市川寿海という歌舞伎役者がいた。寿海というのはもともと歌舞伎十八番を制定した幕末の大立者・七代目市川團十郎の俳名であり、それを明治の大立者・九代目團十郎が継いだものなので、役者として寿海を名乗ったのはこの三代目しかいない。團十郎の係累でも弟子でもない(五代目市川小団次の弟子)この人がなぜ寿海をつぐことができ、また成田屋を名乗ることができたのかは調べられてないのだが、東京で役に恵まれず上方で名を挙げ、その中心になったものの最後まで「東京から来よった役者」の印象が強く、弟子の八代目市川雷蔵が歌舞伎を離れて映画スターになったのも舞台に恵まれなかったことが原因という話もある。
その寿海であるが、晩年は舞台で立つこともできないほど弱っていたものの出演を続け、1970年12月の京都南座顔見世「将軍江戸を去る」が最後の舞台になった。これは真山青果の新歌舞伎で最後の将軍・徳川慶喜が江戸に別れを告げる演目なのだけど、ずっと座ったままの演技だった。ところが千秋楽の大詰めの千住大橋の場面で寿海はすっと立ち上がり、観客は驚いてどよめき、大向うから「立ったぁー!」の掛け声がかかると場内からは万雷の拍手に包まれて、定式幕が引かれる中、壽海は舞台奥に消えた、という伝説的な役者人生の最期を迎えたのである。
「寿海が立った」というのはもちろん驚きではあっただろうし、弟子の雷蔵を前年の7月に肝硬変で失うなどの悲劇的な背景もあっただろうけれども、立つという動作だけで人々を感動させるというのは誰にでもできることではなく、それによって人々に「これで見納め」の感を強く持たせたのだろうと思う。
ということを序文を読んだだけで考えたのだが、内容はまだ読んでいないので見当違いのことを書いてるかもしれないのだが、久しぶりにそういうことを考えたりした。
***
夜、Dモーニングを読もうと思いiPadでアプリを立ち上げたら、なぜか無料で読める作品しか読めなくなっていて、何度もリロードを繰り返したりしたのだが、一度アプリを削除して再インストールしてみたら課金情報の確認みたいなポップアップが立ち上がって、それを見たらクレジットカードの有効期限が11月で切れていることがわかり、新しい有効期限とセキュリティコードを入力し直して再び立ち上げたらようやく有料作品も読めるようになった。アプリ上に「有効期限が切れた」という情報が提示されるまでにかなり手間が必要だったのはちょっと困るなと思うし、講談社のアプリ開発の方にはもう少しわかりやすくしてもらえるとありがたいと思った。
また、ヤングジャンプのアプリでも本誌の内容をサブスクで読めるようになったのだが、それに伴って「推しの子」の単品でのレンタル額が80ポイント(円)から120ポイントに値上げされていた。私は本誌を毎週買って読んでからこの回に対する感想を読もうと思ってアプリで課金して読んでいたので、かなり大幅な値上げに感じた。実際5割り増しになったわけであるが。感想を読んでいても値上げに対する怨嗟の声が感想それ自体だけでなく少なからず書き込まれていて、それぞれ事情は違うだろうけれども値上げを怒っている人が多いのだなと思う。
恐らくは、単品の値段を上げることによってデジタル本誌全体のサブスク(月額980円で期限なし読み放題)に誘導しようとしているのだろうとは思う(月4回押しの子を読めばそれだけで480円になる。しかも2週間のレンタルである)のだが、人の読み方はそれぞれなのでその辺りはもう少し考えてもらえるとありがたいとは思った。そういえばサブスクでも感想は読めるのだろうか。その辺りも気になるところである。
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