向坂寛「対話のレトリック」を読み始めた:「中傷を中傷で返す技術」と「日本のツイッターとギリシャのアゴラ」
Posted at 23/11/18 PermaLink» Tweet
11月18日(土)雪混じり雨
季節は容赦なく進んでいく。というか、あれだけ暑かったのにもう雨に雪が混じっている。いつもの都市なら大体12月に入ってから振ることがあるという感じだけど、今年は早いのか。まだタイヤを冬用に換えていないので、この土日などはどこのタイヤ屋もすごく混雑するだろうと思うのだが、私のつもりとしては来週交換する予定なので、少しでも空くと良いけどなと思う。まだ雨に雪が混じるという程度の感じなので今朝は車で走りながら怖い感じはしなかったけれども、次の寒波が来る前には換えたほうがいいかなという感じはする。
昨日は午前中母を病院に連れていき、施設に送り届けたあと出かけて、高速に乗って塩尻まで行き、その先の農協の専売所まで車を走らせ、お歳暮がわりのりんごを何件か注文した。今年は気候の関係なのか、りんごの出来があまり良くないということだったけど、危惧していた値段は昨年なみ、りんごの見た感じもそう悪い感じはしなかったから、よかったかなと思う。帰ってきて昼ごはんを食べて、少し休んだらもう時間になり、TSUTAYAまで車を走らせてヤンジャンコミックスを6冊ほど買った。
ここのところいろいろな場所に分散して残された父の蔵書を整理しているのだが、やはり新書が自分が読んで面白いと感じるものが多い。昨日見つけたのは講談社現代新書の向坂寛「対話のレトリック」。この題だけではどういう本かよくわからないが、著者は古代ギリシャ哲学が専門で、いわゆる「日本人の対話下手」について、日本人の言葉との関わり方、人と人との関係のあり方から来る構造的な問題ではないかと言い、皆が聞いている場での率直な意見の言い合い、責任と張り合いのある発言とその難しさと危険さも含めて、その方法と心得を完成させたのはギリシャ人である、その彼らの話の技術=弁論術から学ぶものは学ぶべきではないか、という提案として書かれたというのは、これは面白いだろうと思わされた。
これは確かに、現代のTwitterなどの発言を見ていても、発言の仕方が下手だなと思う人は多いし、かなり立派な肩書きを持った人でもそのツイートで墓穴を掘ったりすることはよくあるわけで、現代においてもその重要度は上がることはあっても下がることはないだろうと思う。
ギリシャでそうした話の技術が発達したのは、都市の真ん中にアゴラ=広場があったからだ、という話から始めていて、その辺りの現代のTwitterで同じような人たちがそれぞれの輪を囲んで話をしているが、一度発言が捉えられるとTwitter全体に瞬く間に拡散していく感じというのもある種「ひろば」感があるなと思った。この比喩は結構現実的かもしれないという気がする。
パラパラと見ていくと、「中傷には中傷で返す技術」みたいな話が出てきて笑ってしまうのだが、ペルシャを撃退した海軍の英雄テミストクレスが「彼が成功したのは彼の功績というよりも彼が偶然アテナイ人だったからである」と中傷されたのに対して、テミストクレスは「なるほどもっともな点がある」と言い、「もし私が君の出身地の出身だったら有名にならなかっただろう。しかし君がアテナイ人であったとしても、有名にならなかったであろう」と答えた、というプルタルコスの英雄伝に出てくる話を引用していて、なるほど今でもこういうことを言う人はいそうだなと思った。
まあこの程度のことは今ではTwitterなら普通にありそうな会話だが、しかし日本人では面と向かって言うとなるとなかなか言えない、と言うのは変わってないかもしれない。つまりこの程度の擦り合いならギリシャ人なら、またあるいは日本人でも若者の時代なら普通かもしれないが、大人になってこの程度のやりとりをやると「戦争」になりかねないからだ。つまり、日本人は中傷に寛容でない、と言うことを言っていて、まあこれは体面を重んじると言うことでもあるから中国や台湾などでは尚更だろう。また日本の言論人も表向きにはそう言う丁々発止のやりとりをしても裏に回ると酒を飲ませあって慰撫しあう、みたいな話が「ゴーマニズム宣言」にもあったけれどもそうやってバランスを取る、みたいなこともあるかもしれない。
まあそう言う耳の痛い話も受け止めて反論すべきは反論する、みたいなことは流石に処世術としても必要になってくる場面は多くなってきたと思うけれども、Twitterはそう言うものが現象面で色々と現れているから面白いなとは思う。
この本はあれっと思うところにあったのだが、1985年に出た本で、父のメモによれば父が読んだときには書庫に眠っていたようで、掘り起こして読み始めたみたいなことが2006年の日付で書いてあって、なんだか何度も発見されてる本なんだなと思ったり。著者の向坂寛氏は、この本の脱稿直後に急逝されたと言うことも書いてあって、色んな意味で読むべき本である気がした。
そのほか少しずつ読んではいるのでまた進んだら面白いと思ったことを書いてみようかと思う。
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