仏教の観法・不浄観とか「神曲」地獄篇とか/日想観と浄土教世界
Posted at 23/11/14 PermaLink» Tweet
11月14日(火)晴れ
昨夜は早く寝てしまったので2時半ごろ目が覚め、気温を見たらマイナスに下がっていた。一度起きて「知的生活の方法」を少し読んだのだけどもう少し寝ようかと思い床に入り直し、いろいろ考えたり。
仏教の観法に「不浄観」というのがあり、死体を観察して身体が滅びていくことを観想し、身体の不浄を悟るという行なのだが、身体への執着を断って心を落ち着ける(止)というものなのだが、Twitterを見ていたら事故などの犠牲者の写真を見てその一助にするという話があった。今パレスチナで行われているイスラエル軍による攻撃やハマスの攻撃による死者の写真を連想した。私は見ないようにしているのだが。
死体を見たら、あるいは観想したら心が落ち着く、というのはよくわからないなと思いながら、そう言えばと思ったのがダンテの「神曲」で、これは教養文庫版とギュスターブ・ドレによる版画版、さらにそれを元にした永井豪の漫画によるものを持っていて、よく眠れないような夜に地獄篇の地獄で悪人が苦しんでいる絵を見ていると不思議に心が落ち着いて眠れるようになる、ということが自分にもあるなと思った。
これが通じるものなのか同じものなのかはよくわからないが、いずれにしても普通に考えてそう気持ちのいい絵ではないはずなのだが、そういうものを見ることによって心が落ち着くというのは不思議だなと思った。その落ち着きは仏教用語で言えば「身体の不浄を悟る」ということなのかもしれないが自分にとってはあまり言葉にならないものであって、普通に死体やその画像を見るのはいまだに苦手だし見たいとも思わないが、ドレや永井豪の絵でそれらのものを見ると落ち着くというのは不思議な感じがする。悪人が死後地獄でその罰を受けるという勧善懲悪的な快感だけとも思えないし、そういうなんというかある種の真理への通路みたいなものがあるのかもしれないと思った。
ヨーロッパもダンテのような中世人の時代には理性よりも信仰の方が重要なわけで、その信仰に向けて神=真理の一端に触れるためのある種の観法としての文芸、というような面もあったのかなという気がする。
***
「觀」とつく行法は他にもあったなと思って考えてみたら「日想観」を思いついた。これは夕日を見ることで西方極楽浄土を観想するという行法で、調べてみると観無量寿経というお経に出てくる行法らしい。この観無量寿経は阿弥陀経・無量寿経と並んで浄土三部経と呼ばれ、浄土宗や浄土真宗では根本経典になっているという。
しかし阿弥陀経・無量寿経がサンスクリットの原典があるのに対し、観無量寿経は漢訳仏典しか存在せず、ウイグル語の経典も漢訳からの重訳だということで、中央アジアで作られたという説と中国で作られたという説があるらしい。
ということはこの観法もインドや上座部世界では存在しないということになるわけだけど、考えてみたら西方極楽浄土というのはお釈迦様のいる天竺のイメージがあるだろうから、中国や日本などの東方的な発想の行法なのだと言えるかもしれない。日想観は文学でもよく取り上げられ、特に弱法師、俊徳丸にまつわる話が知られている。
大阪の四天王寺は西の大阪湾に下る急峻な上町台地の上に聖徳太子が創建した寺だが、現在でも夕陽が丘という地名が残っているように日想観には適した場所であり、聖徳太子がそれを意図してここにこの寺を創建したのだとしたら、7世紀初頭にはすでに観無量寿経は伝来していたということになるのかもしれない。現代ではイベント的に行われているようだけど。
日想観は観無量寿経で説く十六観の最初で、これは日想観・水想観・地想観・宝樹観・宝池観・宝楼観・華座観・像観・真身観・観音観・勢至観・普観・雑観・上輩観・中輩観・下輩観とあるようだが、瞑想によって具体的に浄土を観想するという行法かなと思う。こちらは仏教一般というよりは浄土教世界の広がりが感じられる。
***
6時を過ぎた。今までの最低気温はマイナス1.3度。もう一度横になってもう少し体調を整えようと思う。
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