パレスチナ国家雑感:パレスチナ人はテロ以外の手段でイスラエル国家に対抗できるだけの「国民的強度」を持ち得るか
Posted at 23/11/04 PermaLink» Tweet
11月4日(土)晴れ
今朝もよく晴れていい天気だ。最低気温は5.1度、山もだいぶ色づいてきて秋も深まってきたという感じ。後4日で立冬なので、本当に晩秋ということなのだなと思う。今日は連休の中日で世間は休日という感じ。私も忙しく更新が遅くなったが、少しだけ書いておきたい。
「パレスチナ国家」についての雑感。
https://twitter.com/marimandona262/status/1720566441101918607
「パレスチナは5つに引き裂かれている
ガザ、ウェストバンク、イスラエル在住者、ヨルダン等の難民キャンプ、世界中に離散した人々。彼らの政治的(国家的)権利を認めなければハマスを壊滅した所で何の意味もない。」
この指摘は重要だと思った。「パレスチナ人」と呼ばれている人たちが現在暮らしているのはヨルダン川西岸地区、ガザ地区の二か所以外にもイスラエル国内に暮らす人々、ヨルダンほかの難民キャンプで暮らす人々、アメリカほかの世界に離散した人々の5つの在住形態がある。
イスラエル在住の若手の企業家がパレスチナ人とユダヤ人の融和を唱えてユダヤ人も雇用しているのを描いた動画を見たが、その中でも彼に対して「テロリスト」と吐き捨てるユダヤ人の高齢女性などが出てきた。また特に西岸ではユダヤ人の入植が進み、ヘブロンなどではほとんど迫害と言えるような状況にあるという記事も読んだ。
彼らはそうした困難にさらされながらも郷里の土地に住み続けているが、それ以外の人々はディアスポラと言えるような状況にあると思う。彼らに「国家を形成するチャンス」が与えられるべきだというのはもっともな主張だと思うし、実際のところいわゆる「二国家解決」以外に道はないだろうと思う。
ただ難しいのは、「パレスチナ人」とはだれか、どういう範疇の人々かということ。イスラム教徒とは限らないし、アラブ人はほかにもいて、一つの民族とも言いにくい。「パレスチナを自分または1948年時点での祖先の故郷とする人たち」としか定義できないが、この集団の凝集性はどれくらいあるのだろうか、という問題があるように思う。さまざまな歴史的過程を経て政治的な主張や求めるものも多様になっているということもあり、当然ながら過激な思想を持つ人から穏健な暮らしを求める人までそちらの面でも多様だろう。
これはクルド人やウイグル人などの国家を持たない人々の国家形成の問題にも重なるが、近代国家を運営する下地があるかというのは結構大きい問題だろうと思う。植民地時代の境界線が新国家の境界線になってしまい、独立の際に十分な支援を受けられなかった国が多いアフリカでは、いまなおクーデタが頻発するなど、国家運営がうまくいっていない例も多い。
パレスチナの場合も、1930-40年代にパレスチナ分割が俎上に上がった時点でパレスチナ国家を志向する人々は少なかったように思われる。これはもともとイスラム教が国民国家を志向する宗教ではなく、また人的ネットワークも部族的な性格が強い部分があるということもあるのだろうと思う。その結果、パレスチナ分割が国連で決議された際にはイスラエルはイギリス委任統治時代のユダヤ人組織が母体となって速やかにイスラエル政府を発足させ「建国」を実現させたのに対し、アラブ人・アラブ諸国家の側はそれを否定するための戦争を起こしたが、かえってイスラエル国家の地域を拡大させ、大量のパレスチナ難民を生み出す結果につながってしまった。
その後のパレスチナはヨルダンやエジプトに併合されたり、イスラエルに占領されたりしながら、オスロ合意でパレスチナ国家建設の方向に舵を切ったものの、東イェルサレムをめぐる協議が難航し、ユダヤ人の右派は西岸の入植を強行し、アメリカがそれを黙認するなどの経緯をたどって現在に至っている。
先に述べたようにパレスチナ人はパレスチナ国家を建設していわゆる「二国家共存」を図る以外に道はないと思うが、決して簡単なことではない。
現在出ているプランは1967年の国境、つまりパレスチナ国家を西岸とガザに分断された状態で建設し、一つの国家を運営しようということだから、もともとかなり難易度が高い。そして「二国家」のカウンターパートがイスラエル国は何が何でも自分たちの「国」を守ろうとする国であるだけに、その強烈さにテロ以外の手段で対抗するだけの「国民的強度」を持ち得るかが大きな課題になっているのだと思う。
カテゴリ
- Bookstore Review (17)
- からだ (237)
- ご報告 (2)
- アニメーション (211)
- アンジェラ・アキ (15)
- アート (436)
- イベント (7)
- コミュニケーション (3)
- テレビ番組など (70)
- ネット、ウェブ (139)
- ファッション (55)
- マンガ (848)
- 創作ノート (669)
- 大人 (53)
- 女性 (23)
- 小説習作 (4)
- 少年 (29)
- 散歩・街歩き (298)
- 文学 (262)
- 映画 (105)
- 時事・国内 (369)
- 時事・海外 (232)
- 歴史諸々 (258)
- 民話・神話・伝説 (31)
- 生け花 (27)
- 男性 (32)
- 私の考えていること (1062)
- 舞台・ステージ (54)
- 詩 (82)
- 読みたい言葉、書きたい言葉 (6)
- 読書ノート (1584)
- 野球 (36)
- 雑記 (2225)
- 音楽 (205)
月別アーカイブ
- 2023年11月 (5)
- 2023年10月 (31)
- 2023年09月 (32)
- 2023年08月 (31)
- 2023年07月 (32)
- 2023年06月 (31)
- 2023年05月 (31)
- 2023年04月 (29)
- 2023年03月 (30)
- 2023年02月 (28)
- 2023年01月 (31)
- 2022年12月 (32)
- 2022年11月 (30)
- 2022年10月 (32)
- 2022年09月 (31)
- 2022年08月 (32)
- 2022年07月 (31)
- 2022年06月 (30)
- 2022年05月 (31)
- 2022年04月 (31)
- 2022年03月 (31)
- 2022年02月 (27)
- 2022年01月 (30)
- 2021年12月 (30)
- 2021年11月 (29)
- 2021年10月 (15)
- 2021年09月 (12)
- 2021年08月 (9)
- 2021年07月 (18)
- 2021年06月 (18)
- 2021年05月 (20)
- 2021年04月 (16)
- 2021年03月 (25)
- 2021年02月 (24)
- 2021年01月 (23)
- 2020年12月 (20)
- 2020年11月 (12)
- 2020年10月 (13)
- 2020年09月 (17)
- 2020年08月 (15)
- 2020年07月 (27)
- 2020年06月 (31)
- 2020年05月 (22)
- 2020年03月 (4)
- 2020年02月 (1)
- 2020年01月 (1)
- 2019年12月 (3)
- 2019年11月 (24)
- 2019年10月 (28)
- 2019年09月 (24)
- 2019年08月 (17)
- 2019年07月 (18)
- 2019年06月 (27)
- 2019年05月 (32)
- 2019年04月 (33)
- 2019年03月 (32)
- 2019年02月 (29)
- 2019年01月 (18)
- 2018年12月 (12)
- 2018年11月 (13)
- 2018年10月 (13)
- 2018年07月 (27)
- 2018年06月 (8)
- 2018年05月 (12)
- 2018年04月 (7)
- 2018年03月 (3)
- 2018年02月 (6)
- 2018年01月 (12)
- 2017年12月 (26)
- 2017年11月 (1)
- 2017年10月 (5)
- 2017年09月 (14)
- 2017年08月 (9)
- 2017年07月 (6)
- 2017年06月 (15)
- 2017年05月 (12)
- 2017年04月 (10)
- 2017年03月 (2)
- 2017年01月 (3)
- 2016年12月 (2)
- 2016年11月 (1)
- 2016年08月 (9)
- 2016年07月 (25)
- 2016年06月 (17)
- 2016年04月 (4)
- 2016年03月 (2)
- 2016年02月 (5)
- 2016年01月 (2)
- 2015年10月 (1)
- 2015年08月 (1)
- 2015年06月 (3)
- 2015年05月 (2)
- 2015年04月 (2)
- 2015年03月 (5)
- 2014年12月 (5)
- 2014年11月 (1)
- 2014年10月 (1)
- 2014年09月 (6)
- 2014年08月 (2)
- 2014年07月 (9)
- 2014年06月 (3)
- 2014年05月 (11)
- 2014年04月 (12)
- 2014年03月 (34)
- 2014年02月 (35)
- 2014年01月 (36)
- 2013年12月 (28)
- 2013年11月 (25)
- 2013年10月 (28)
- 2013年09月 (23)
- 2013年08月 (21)
- 2013年07月 (29)
- 2013年06月 (18)
- 2013年05月 (10)
- 2013年04月 (16)
- 2013年03月 (21)
- 2013年02月 (21)
- 2013年01月 (21)
- 2012年12月 (17)
- 2012年11月 (21)
- 2012年10月 (23)
- 2012年09月 (16)
- 2012年08月 (26)
- 2012年07月 (26)
- 2012年06月 (19)
- 2012年05月 (13)
- 2012年04月 (19)
- 2012年03月 (28)
- 2012年02月 (25)
- 2012年01月 (21)
- 2011年12月 (31)
- 2011年11月 (28)
- 2011年10月 (29)
- 2011年09月 (25)
- 2011年08月 (30)
- 2011年07月 (31)
- 2011年06月 (29)
- 2011年05月 (32)
- 2011年04月 (27)
- 2011年03月 (22)
- 2011年02月 (25)
- 2011年01月 (32)
- 2010年12月 (33)
- 2010年11月 (29)
- 2010年10月 (30)
- 2010年09月 (30)
- 2010年08月 (28)
- 2010年07月 (24)
- 2010年06月 (26)
- 2010年05月 (30)
- 2010年04月 (30)
- 2010年03月 (30)
- 2010年02月 (29)
- 2010年01月 (30)
- 2009年12月 (27)
- 2009年11月 (28)
- 2009年10月 (31)
- 2009年09月 (31)
- 2009年08月 (31)
- 2009年07月 (28)
- 2009年06月 (28)
- 2009年05月 (32)
- 2009年04月 (28)
- 2009年03月 (31)
- 2009年02月 (28)
- 2009年01月 (32)
- 2008年12月 (31)
- 2008年11月 (29)
- 2008年10月 (30)
- 2008年09月 (31)
- 2008年08月 (27)
- 2008年07月 (33)
- 2008年06月 (30)
- 2008年05月 (32)
- 2008年04月 (29)
- 2008年03月 (30)
- 2008年02月 (26)
- 2008年01月 (24)
- 2007年12月 (23)
- 2007年11月 (25)
- 2007年10月 (30)
- 2007年09月 (35)
- 2007年08月 (37)
- 2007年07月 (42)
- 2007年06月 (36)
- 2007年05月 (45)
- 2007年04月 (40)
- 2007年03月 (41)
- 2007年02月 (37)
- 2007年01月 (32)
- 2006年12月 (43)
- 2006年11月 (36)
- 2006年10月 (43)
- 2006年09月 (42)
- 2006年08月 (32)
- 2006年07月 (40)
- 2006年06月 (43)
- 2006年05月 (30)
- 2006年04月 (32)
- 2006年03月 (40)
- 2006年02月 (33)
- 2006年01月 (40)
- 2005年12月 (37)
- 2005年11月 (40)
- 2005年10月 (34)
- 2005年09月 (39)
- 2005年08月 (46)
- 2005年07月 (49)
- 2005年06月 (21)
フィード
Powered by Movable Type
Template by MTテンプレートDB
Supported by Movable Type入門