ハマスの侵攻はパレスチナ問題という終わらない悪夢の存在を世界に覚醒させた/イギリス委任統治領パレスチナの問題
Posted at 23/10/15 PermaLink» Tweet
10月15日(日)雨
今朝は雨。昨夜は疲れていたせいか9時ごろには寝落ちし、2時間ほどソファでうたた寝をしてから歯を磨いて寝たのだが、起きたら4時ごろで通算7時間は寝た。久しぶりによく寝たとは思うのだが、いろいろなところに不具合も感じるのでなかなか自分のペースでうまくいくというところは取り戻せていない。
自分の書きたいこと、調べてみたいことは13日に少し書いたが、シオニズムの問題、アートをめぐる問題、減税など日本経済をめぐる問題、ということを挙げたけれども、シオニズムについてはネットでいろいろ読んでいるのだが読めば読むほど「世界の困難さ」みたいなことを感じて少し落ち込む気分になるなと思った。今起こっているハマスとイスラエルの戦争のようなことも、直接的な原因がパレスチナにユダヤ人国家を建設したことそのものに発しているわけで、それに至るシオニズムの動きも19世紀に始まっていてそれはある種の近代化論や社会主義とも結びつき、宗教的情熱や社会主義的な社会実験としての意味合いや、ポグロムやホロコーストを避けるための生存を賭けての移住という側面もありつつ、第一次世界大戦でオスマントルコ帝国から中東地域、歴史的シリアとメソポタミアを奪ったイギリスの支配(委任統治)下で、地元のパレスチナ在住のアラブ人たちと軋轢を起こしながら移住・入植が進んだわけである。
彼らはヨーロッパから、特にロシアから移住した人々が多かったのはポグロムを避けてのことだったわけだけど、イギリスの支配下において出自のバラバラなユダヤ人集団の組織化に成功、またその組織が移民の受け入れ母体ともなって移民が加速し、特に1930年代にはナチスの迫害を逃れた人々が多く移住してきたという背景がある。彼らは民政組織でもありテロ組織でもあってパレスチナ人やイギリス当局とも戦っていたわけだが、彼らの組織が母体となってイスラエル建国が行われたわけで、この存在を無視することはできない。一方でアラブ人(パレスチナ人)たちも組織化をイギリス側に促されたが委任統治体制の正当性を疑うアラブ側はそれに応じなかったといい、この出遅れがイスラエル建国の成功を招いた面はあっただろうと思う。アラブ側は自分たちの部族社会の均衡を壊してまでそうした組織化を行う動機は感じなかったということなのだろう。
第二次世界大戦前夜になるとヨーロッパに兵力を割かなければならないイギリスが中東のアラブ人たちと妥協する必要に迫られ、パレスチナ分割やその先のユダヤ人のホームランド建設に消極的な姿勢を示し始めたのでシオニスト側はイギリスよりもアメリカに支援を求めるようになり、そうした経緯でアメリカとの関係が始まったようだ。
経済力においてもパレスチナにおけるユダヤ人の平均年収はアラブ人の2.6倍(1936年)に達しており、経済成長は著しかった。ユダヤ人の識字率は86%に達していたがアラブ人は22%にとどまるなど、差がつけられていたが、パレスチナにおける識字率は他のイスラム諸国に比べてはるかに高かった。1919年時点でユダヤ人社会は中央集権的ヘブライ語教育システムを作り、1924年にはイスラエル工科大学の前身、翌年にはイェルサレムにヘブライ大学を創設するなど高等教育システムも整備されていった。ユダヤ人も労働組合的なヒスタドールが生活を支えていたが、ドイツからの移民が増えると産業が多様化し、社会主義的な体勢と対立するようになったという。
アラブ人社会ではトルコ支配時代の現地エリートが権力を握り、イギリス側も主に彼らと交渉したが、彼らは大衆の支持を得ることはできず、ユダヤ移民の激増にも関わらずアラブ人同士で争う支配層に反発する青年たちがムスリム同胞団やインド国民会議派のボイコット運動などに影響を受けて青年ムスリム党やパレスチナ独立党などが組織されていったが、イギリス当局に弾圧されたという。
こうした動きの中でユダヤ人に対する大規模な武装闘争(アラブ大反乱1936-39)が起こり、第一次中東戦争までのパレスチナ人の最高機関となるアラブ最高委員会が組織された。イギリスはその調査を行った結果領土分割という発想に至り、「ピール分割案」ができたわけである。この戦いはユダヤ人側とイギリス当局がアラブ人勢力と戦うという形になり、アラブ人社会は5000人以上の犠牲を出して大きな打撃を受け、これが1948年の第一次中東戦争の時まで尾を引いて十分に戦えないという事態につながったという。
第二次大戦中のパレスチナをめぐる問題はさらに複雑になっていくのでここでは少しだけ書くが、イギリスはアラブ側の懸念を元にパレスチナへのユダヤ人の移民枠を年間15000人に制限した(1939年)が、同じ年に始まった第二次世界大戦とナチスによるホロコーストによって、枠を超える大量の脱出者がパレスチナを目指し、多くは不法移民としてユダヤ人組織に支援されたものの多くが拿捕されてモーリシャスなどに送られたのだという。この辺りのホロコーストにとどまらないユダヤ人の苦難の歴史を読むと、彼らがなぜイスラエル国家に強くこだわり、その安全を脅かすものを絶対に許さない姿勢なのかがよく理解できる。理解はできても虐殺は客観的に正当化できるわけではないが、「正当化はできないが巨大で強力な集団的意志として存在するもの」がそこにあることはわかる。そしてそれはもちろん、パレスチナ側にもあるわけで、こうした巨大な意思と意思がぶつかるパレスチナの悪夢というべき現状を、世界はいつの間にか忘却しつつあったのが、今回のハマスの侵攻によって再び我々はまだ悪夢の中にいるという現実に目覚めさせれれた、ということなのだと思う。
あと一つショッキングだなと思ったこと。イスラム社会にはもともと多くのユダヤ人が住んでいて、普通に少数者として暮らしていたのだが、1948年のイスラエル建国と第一次中東戦争以降、多くのユダヤ人が故国を捨てざるを得なくなったということ。
https://twitter.com/Locati0ns/status/1713273573589070149
これらの地域にもともと住んでいたユダヤ人にとってはイスラエルの建国は関係のないことのはずだったのが、国を追われることになってしまった。今でも一番ユダヤ人が住んでいるのは現在はイスラエルと敵対しているイランだった、というのはイスラム革命前は非アラブということで連帯が可能だったということのようだ。
西岸地区では今でもパレスチナ人が理由なく殺され、またガザ地区での避難民爆撃はハマスの自作自演説まで出てきていて、もはやどちらにも正義はない感じになっている。一刻も早く戦火を終わらせてほしいが、その後どうなるのがこの地域にとっての理想なのかは誰にも描けず、そのことがやはり悪夢としか言いようがない現状を表しているのだろうと思う。
***
パレスチナをめぐる問題は上記のように本当に出口のない問題なので、ずっと考えていると気持ちが落ち込んでくるような話なのだけど、自分がその分野の政治や宗教などについて専攻しているわけではないので、とりあえずは教養ないし常識としてもう少し知っておきたいという範囲のことだから、あまり深入りしすぎない方がいいなと思いつつ、この地域でなぜこのようなことが起こっているのかということを知りたいという気持ちもあるわけで、もう少しは勉強する必要がありそうだなと思う。
他のことも書きたいのだが、今日はとりあえずここまでで。
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