10月は12月の仲間/「あやかしトライアングル」最終回と「邪馬台幻想記」:「弱い男を女の子が導く」という「原点」
Posted at 23/10/01 PermaLink» Tweet
10月1日(日)雨
昨日で今年度も上半期が終わり、下半期に入った。2023年としては第3クォーターが終わり第4クォーターに入ったというところ。そう考えてみると、10月から年末や新年に関連したことがいろいろ出てくるというのもなるほどと思う。受験生にとっては新年早々の共通テストを考えればあと1クォーター、3月までを視野に入れれば2クォーター。この辺の速度調整が実は難しい感じがする。私が大学を受験した頃は国公立の二次試験は3月だったので3月がゴールだと思って勉強していたが、その前に1月に最初の関門があるのでそこに一つのピークを持っていくという考え方もある。私はフタコブラクダだと大変だから3月ピークと考えて勉強したけど案の定共通一次はそんなに良くなかった。器用にフタコブラクダができる人は最初のピークを共通テストに持っていくことになるわけだが。
結局、秋というと漠然としていて9月と10・11月に分かれて考えにくいが、10・11・12を1クールと考えれば10月は12月の仲間だという感じになるのでその方が実際的であるような気がする。これはアニメの季節感と同じ(10月から秋アニメ)と同じなので、趣味の方はより捉えやすい話ではないかと思う。
***
矢吹健太朗「あやかしトライアングル」は9月で第1期の放映が終わった。これは元々冬アニメだったのが中国の制作事情の影響で中断してしまって改めて放送したもので、トラブルに巻き込まれたわけだが、原作のジャンププラスにおける連載も9月25日に144話で最終回を迎え、大団円となった感じである。
この作品は主人公風巻祭里とヒロイン花奏すずの物語だが、あやかしと戦う「祓忍」である祭里はあやかしの王・シロガネの力で女の子に変えられてしまう。男であった間はあやかしと戦い続け、友達もいなかったが女に変えられてからすずの友達達とも仲良くなり、新しい「女としての祭里」として生きるようになる。すずは子供の頃からあやかしが身の回りにいる少女だったが、実は「妖巫女=あやかしたちの王」であることがわかり、二人はさまざまなあやかし達と戦ったり改心させたりの話が続いていく。
最終回では、矢吹氏のデビュー作である「邪馬台幻想記」に話が繋がる、というコメントがジャンププラスのコメント欄でいくつも見られたので、興味を惹かれて集英社文庫版をAmazonで取り寄せて読んでみた。
この話は邪馬台国の女王・壹与とその守り手として戦う紫苑という二人の関係で、それがすずと祭里の遠い前世であった、ということが「あやトラ」のラストで暗示されているのだが、この話はもっと壮大な構想で描かれたものらしく、読んだ部分だけでは打ち切りで終わった作品であったように感じられる。
紫苑は気の力で具現化した「心具」を駆使する強力な使い手なのだが、このストーリーの中ではむしろ壹与の強さが強調されていて、紫苑は心を閉ざしたり病んだりするのだが、壹与は折れずに意思を貫く。その理由が開示される前に話が終わってしまっているのでその先を読みたい、という感じなのだが、矢吹氏が「あやトラ」をこの話に繋げてエンドにしたことの意味を考えてしまった。
「邪馬台幻想記」のあとがきを読むと、矢吹さんはこの話を「弱い男を女の子が導く」話だとしていて、なるほど実は「あやかしトライアングル」も「弱い男=祭里」を「強い」女の子、すずが導くという話として書いているのだなということで合点がいった。代表作である「To Loveる」もまたその構図で自分の原点だ、と書かれている。
言われてみると祭里は紫苑のように心が揺れたり病んだりする、というののバリエーションとして迷いを持つだけでなく性別まで変わってしまうわけだから揺れ方が半端ない。すずの方は「強い少女」というのが「生きる力の強さ」、具体的に言えば「性欲の強さ」として表現されていて、逆に言えばこの構造のバリエーションの中でも相当際どいところを狙ってきているということがよくわかる。
最後に祭里は男に戻れるようにはなったがもう少し女のままでいるが、すずとは付き合う、という選択をしてすずはその申し出に一番いい笑顔で「はい」と答える。この素直さが最上のラストという感じだが、ここは何かの作者さんの心境の変化の現れであるような気もしなくはない。
「邪馬台幻想記」のあとがきで矢吹さんは「三世紀の日本という舞台は歴史的に謎が多く魅力的なので、いつかこの世界観でもう一度作品を描いてみたいと密かに思っていたりします」と書いていて、この先、「邪馬台国幻想記」の、あるいは「あやかしトライアングル」を含めたこの先が読めるのではないかという期待を持った。
もしそうならとても嬉しいので、ぜひ実現してほしいなと思うのだった。
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