人間は自分たちが生み出した膨大なもの・制度・思想・コンテンツその他とどう付き合っていくのか
Posted at 23/09/20 PermaLink» Tweet
9月20日(水)曇り
夜中に雨が降ったようで、外に出たら車が濡れていた。車で出かけると、わずかに降ったり止んだり。セブンイレブンに行ってマガジンとコーヒーを買って、電気代を払う。ここ数日で飲んでいたペットボトル飲料が同時に二つからになったので、セブンのゴミ箱に捨てる。今日はゴミの日でもなく資源物の日でもないので朝は少し忙しくない。一昨日夜東京から帰ってきて昨日は1日疲れが溜まっていた感じで、しかも暑かったので余計疲れたのだが、今朝は涼しくて体も気持ちもわりあい楽に正常に動く感じがする。本来のこの季節はこのくらいだと思うが、油断するとすぐ寒くなるので、秋を楽しめればいいなと思う。今年はほとんど咲かなくて残念だなと思っていたコスモスが、駐車場に固まって咲いていて少し嬉しかった。
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昨日はアートと人間、みたいなことを少し考えていて、私はやはりアートが好きだなと思うのだけど、考えてみたら私は大学院を何度か受験しているのだが、そのうち一度は美術史を受けたということを思い出した。結果的には行ってないのだけど、コース選択として一度は考えたこともある、くらいには美術は好きだったのだなと思う。もともと美術は好きだったが、そういう選択をすることは頭になく、(高校時代も美術は3だったし)学科の選択、つまり教養課程の時点では西洋史にしたのだけど、西洋史に行って4年の時にヨーロッパ(主にスペイン)を旅行して、黄金世紀の画家たち、特にムリーリョと、現代美術ではピカソがすごく好きになったことが大きかったなと思う。あの頃は今更コース変更も難しいなと思っていたし、美術史の書物自体があまり面白く感じられなかったのであまり入り込むことはできなかったのだけど、自分が取り組める「角度」を見つけられていたら、そっちの方向へ進んだということもあったかもしれないなと思う。
これは学問だけでなく、ものを書くときとかもいつもそうなのだけど、結局は「角度」を見つけられるかどうか、みたいなことは大きい。一つのものも、正面から見たらどうしようもなくつまらなそうなのに、ある角度から見たら世界の秘密がわかるんじゃないかと思うくらい面白く感じることもある。歴史とかを教えていても、聞いてくれる人からの要望としては「歴史うらばなしを聞きたい」みたいなことは結構あって、つまりつまらないように見えることでも角度によってはすごくヴィヴィッドに魅力的に見える、ということは大事なことなんだろうと思う。
逆にいえばスタンダードとかオーソドックスというものは、その辺の「面白さ」を捨象して成り立っているものであって、それを描く側、語る側というのはその骨格にさまざまなものを肉付けしていく。逆にマルクス主義などの大きな物語というのは元の「階級闘争によって資本主義社会は打倒され社会主義社会になる」という元々の物語が「おもしろすぎる」ので、肉付けの方が痩せてくるから結局は失敗に終わったんだろうなという気はする。
それに比べると宗教というものは、「生まれながらにして原罪を持った存在である人間が、神の愛によって使わされた神のひとり子が自らを犠牲にすることで救済され、永遠の生命を与えられる」という物語自体もワクワクするところに聖書という多種多様な物語の源泉が供給され、さまざまな聖人伝が語られ、時代の変遷とともに新しい物語がどんどん肉付けされていく感じが強さなんだろうなと思う。
オーソドックスとかスタンダードというものはきちんと理解していないと仕事としてその知識を使うのは難しいのでそういう意味では大事なのだけど、特に歴史理解とか美術理解とかに関していえば、「人間の作ったもの」をどう解釈するかという面ではあるからオーソドックス以外にも解釈のしようはある。オルタナティブな物理法則は成立しにくいが、オルタナティブな歴史理解は成立しやすい、とでもいえばいいか。まあそれがトンデモが跋扈する理由でもあるのだが、物理法則にしても地球平面節とかを大真面目に信じる人たちもいるのでトンデモの芽はどこにでもある。
だから今アートと人間ということについて、つまりは人間は人間の作り出した膨大なものたち、物質的なものもあれば精神的なものもあり、制度的なものもあるしそうしたさまざまなものたちと、どのように付き合っていけばいいのかみたいな根本的に巨大なことを考えているのだが、(つまりアートというものを人間の作り出したものの総体と捉えている:アーティフィシャルなもの全て、ナチュラルなものと対立する)そういうことも角度の付け方がうまくいかないと解明も難しいし言いたいことの説明も難しくなるだろうなという気がする。
角度の付け方、というのは言い換えれば「視点」とか「視座」みたいなものでもあるし、とっかかり、きっかけ、みたいな意味もあるし、石を割るときの石の目みたいな意味でもあるし、それはつまり熟練と経験みたいなことも必要だし発想的なものも必要なのだが、多分炭治郎が岩を斬れたように、うまく斬れる道・方法みたいなものはあるんだろうと思う。
そういうものを探りながらいろいろなものを読んでいるのだが、あまりそういうことを考えている人はいない。ソローの「森の生活」的に一度人工的なものを全て否定してみる、みたいなことをやった人たちはいるし、近代アメリカとか古代インドとかにはそんな感じの考え方はあっただろうと思うけど、現代においての膨大な人工物に対してどう付き合うか、みたいなことはそう簡単ではないよなと思いながら書いている。
ただ、つまりは私はそういうものを「人工物:アーティフィシャルオブジェクト」のような言葉よりも「アート」という自分にとってはより身近に感じられる言葉で考えたいと思っている、ということがとりあえずは一つの角度、態度表明と言えるのかもしれないとは思う。
私は基本的には政治的には保守の立場だけど、それも人間の生み出してきたものをできるだけ肯定したい、みたいなものもあるからだなと思うし、それらを否定してより前に進もうという思想の方により浅薄なものを感じることが多いから、ということでもあるなと思った。
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