私たちが見ている「日本文化」とはどう言うものか、政府の文化に対する理解度はなぜ「低い」のか
Posted at 23/09/12 PermaLink» Tweet
9月12日(火)曇り
午前5時15分、空を見上げるとほのかに赤く色づいていて、空の大部分を薄い雲が占めているのだけど、敵概況を見ると「晴れ」になっている。薄い雲だと雲のうちに入らないのかなと思うが、本当に曇りの日の空の暗さに比べればかなり明るい。それにしても、だいぶ明るくなるのが遅くなってきた。今は二十四節気で言えば白露で秋がそろそろ本番という感じなのだけど、次の節気は秋分。昼と夜が等しくなる。いつまでも暑い日があるからぼやぼやしているうちにどんどん地球は太陽の周りを回っている。
昨日はブログを書いたり、マンガを読んでいたら昼頃になり、お昼を食べてから母の入居している施設に石鹸を届けて、欲しいと思っていた本を買いに松本に出かけた。途中セブンイレブンに寄ってコーヒーを買った時に携帯を忘れてきたことに気づいたのだが、もう戻るのは時間がもったいないと思ってそのまま出かけた。どういう具合か思ったより時間がかかり、いつも止めている駐車場まで1時間かかった。3時着。
丸善で本を探して、猪木武徳「社会思想としてのクラシック音楽」(新潮選書、2021)と多木浩二「ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読」(岩波現代文庫、2000)を買う。哲学書のコーナーに行くとベンヤミンの原書自体の翻訳があったが、とりあえずまず多木さんの本から読もうと思う。
ゆっくり本を探してからちょっと周りの店にも行こうと思い、歩いてパルコまで。5階に上がってまずアニメイト、これはほぼ一周しただけ。隣にアニメイラストのギャラリー兼グッズ店みたいなのができていて、そこも見て回ったが自分が見ている作品のものではないので見学しただけという感じか。向かいのヴィレヴァンでは普段読まないようなマンガをいくつか見てみたが、ここでも結局買わなかった。でもこういう感じの雰囲気は田舎ではなかなか味わえないので感じるだけでも癒される感はある。
さて夕食の買い物でもするかと思ってアルピコプラザへ行って地下のスーパーで買い物。駐車券を引き換えてもらってから、5階のブックオフへ行って出物を探す。興味深いものはいくつかあったが収納状況と照らし合わせてでも欲しいというほどのものはなかったので買わなかった。
そう言えば丸善の上の階とさらに上の階の文教堂に行ってないなと思ってまず3階の文教堂でマンガを見るが欲しいものは特になし。2階の丸善の芸術関係のところを探す。一昨日に書いたようなアートと階級のような関係の本がないかと思って探して、前崎信也「アートがわかると世の中が見えてくる」(IBCパブリッシング、2021)を買った。
まだちゃんと読んでないので内容ははっきりとは言えないが、階級とアートという問題もなくはないようだけど、立ち読みして買った方がいいと思ったのは、なぜ「現在日本文化とされているものが生き残っているのか」を考えた時、「欧米に対して日本の文化というものを主張するときに、誇れるものを持たなければいけないという基準で残された」から、という話がとてもわかりやすいなと思ったから。福沢諭吉「帝室論」が引用されていたが、問題は、日本の文化が中国の文化の影響を大きく受けていることで、「日本独自のもの、あるいは中国から伝わったものでも日本独自のものに昇華しているもの」を、つまり「中国とは違うもの」「中国より優れているもの」を示さなければいけない、という切羽詰まった理由があったから、というのは身につまされるものがある。
それに寄って文化財の調査なども大々的に行われ、その中でフェノロサによって法隆寺の秘仏が「発見」されたり、日本文化の美が紹介されるようになったりしたわけだけど、特に政府にとって良かったのは「法隆寺が世界で最古の木造建築であることがわかったこと」とか「正倉院の御物が世界との交流があったことを示すもので、その時代のものとして残されている唯一のもの」であったこととかが得点としてカウントすることができた、ということになる。
だから基本、そうしたものに対しては政府は他のもの比べたら手厚い保護を加えてきたわけで、我々が今日本文化として認識しているものはそういうものなのだ、ということである。
これは確かにその通りだなと思った。というのは、日本文化というものを学校で学んだときも、ある独特の偏りがあるなと思ったからで、また歌舞伎などが明治において生き残りがかかったときに天覧の栄に浴して権威あるものと認められたから評価されるようになったとか、能楽などもそうだが明治維新によって武家の保護を失った様々な技芸がそういう形で再評価されることによって復活した例は多い、ということを色々なところで読んだりしていたからだ。
ただ、そういう中でも明治以降につながらなかったものとしては、日本医学(和漢医学)と日本音楽があるわけで、中国においては漢方医、インドも地元の伝統医術を今に守っているというのに比べれば、日本では近年になってようやく漢方の薬に保険が効くようになったり鍼灸も残ってはいるが、西洋医学の全盛に比べれば権威市場ともにはるかに小さいだろう。音楽も雅楽や日本の旋律が学校で教えられないわけではないけれども、「先生の弾くオルガンで唱歌を歌う」のが近代日本の小学校のある種の象徴であったわけで、あまり優遇されているとは言えないだろう。
日本が近代国家になるために、いろいろなものを削ってその代わりに新しいものを補給したわけで、それは基本は欧米諸国に日本が伍していくために、まずは文化もこれだけのものがあると認めさせること、そして科学技術や西洋芸術の面でも追いつき追い越していかなければならないという思いの現れだということになる。
科学技術に関しては特に医学などの面では早くに北里柴三郎など成果をあげる人たちが出てきたが、芸術においては戦前に認められたのは藤田嗣治くらいだ、というのはまあそうだろうなと思う。元々が「日本が生き残るための国威発揚」から始まっていることで、そこに多くの才能が乗っかっていったわけだけど、元々の土壌の上に花開いているフランスやイタリアとは話が違うわけで、その辺りのところも理解しておかなければならないし、逆に言えば芸術が「特に国家の利益にならない」と判断されるようになると援助も減らされて行くのは構造上ある意味仕方ないことでもある、ということになる。
日本におけるアート市場の貧困とか、芸術家支援の少なさとか、いろいろ文句を言う人はあるのだが、それらはもともと日本のそう言うものが何からスタートしているのかと言うことから考えていかないと、良い手を打つことは難しいかもしれないなと思う。
ただまあ、これらのことは昨日立ち読みした範囲で考えたことなので、その先はちゃんと読んでから書きたいと思う。
結局5時半ごろ駐車場を出て、帰宅したのが6時半なので、帰りもほぼ1時間。帰りは帰宅時間だから途中それなりに渋滞したのだが、行きも同じくらいかかった理由がよく思い出せない。セブンで携帯を忘れたことに気がついたときにちょっと考えていたりしたからかもしれない。
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