マンガの展開について考え込む:「進撃の巨人」にみる「最終回の難しさ」/「平治の乱の謎を解く」読了/「市民結社と民主主義」冷戦終結後の歴史学会に起こっている「修正」

Posted at 23/09/02

9月2日(土)晴れ

今朝はいろいろあってブログを書く気になかなかなれず、取り掛かるのが遅くなった。書こうと思ったら書けることはいろいろあるのだけど、あまりそういう気にもならない。

まあ今日更新されたマンガの展開が自分の読みたいものと違う方向へ行きそうだという他愛のないことがきっかけなのだけど、マンガとかの嗜好の世界で好きでない方向へ動いてしまったというのは割とダメージがあることだなと思う。中国が処理水で騒いでいる、とかいうのはまああってもおかしくはないと普通に思うのだが、「好きなもの」が思ってもない動きをするということが堪える時というのはあるなと思った。

マンガといえば、とある好きなウェブ上のサッカー漫画も昨日の更新が最終回で、これも自分の好みのラストではなかったのでちょっとうーんという感じがあり、マンガの最終回というものについて考えたり。マンガの最終回ばかりを集めた「いきなり最終回」という本が出たりしたこともあったのだが、「巨人の星」や「あしたのジョー」、「デビルマン」など今でも最終回が語られる作品というのはある。物語としてのストーリーよりも連載自体が目的になってしまった長期連載の作品の最終回というのは元々かなり難しいだろうとは思うのだが、最近では「鬼滅の刃」とか「進撃の巨人」がそうだろうか。

これらはかなり賛否両論があった気がするが、私はまあこんなものだろうなと思った。特に「進撃の巨人」が叩かれたのは気の毒だったが、エレンを無理に善の意思もあったみたいにしないほうがいいのに、とは思っていたので叩く人はいるだろうなとは思った。あの話は「巨人を一匹残らず駆逐してやる、と言ってたエレンが巨人を生み出した世界に対して一匹残らず駆逐してやるという意思を遂行しながらもそれを止めてくれることをアルミンやミカサに求める」、というちょっと構造が複雑な話で、「エレンだけでなく世界も原罪を負っている」のだが、そこは上手くは書ききれなかったとは思う。

スポーツマンガの最終回というのは確かに難しく、どんなに続いても最後は「俺たちの戦いはこれからだ!」にならざるを得ないところがあるのかなとは思うし、でなければ巨人の星やあしたのジョーになってしまうのかもしれない。

「平治の乱の謎を解く」は最後まで読了。諸国平定後の頼朝が九条兼実との会談の中で義朝・頼朝親子に対して行使された「朝廷の不義」に言及し、「朝廷は自分にその償いをする義務があるが、幕府権力の公認がされるなら水に流してもいい」と取引材料に使った、というのはなるほどと思った。朝廷・摂関家と融合したために独自の権力機構を持たず、それゆえ頼朝は朝廷を離れることで没落した平家政権の二の舞を踏まないために朝廷や摂関家と距離を取る独自の権力を構築した、つまりは「反乱軍とその政府を公認させる」というのはいうのは簡単だが先駆者はない(失敗した平将門が先駆者と言えなくはないが)わけで、やはり構想力がすごいと思う。

「市民結社と民主主義」は序章を読了。面白いと思ったことを一つ挙げると、歴史研究としてここ20年行われてきたことは、東西冷戦時代の「東は東、西は西」という考え方を修正して、「ボストンからモスクワまで」の市民社会、時には植民地に及ぶまで、を見直していこうという動きがあるということ。特に市民社会は米英では発達したが大陸ヨーロッパでは発達しなかった、という見方ではなくて市民結社が東欧でも盛んに結成されたことなどを見ていくことで、より幅広い「国境を超えた関係性の絡み合い」を見ていくことができるのではないかというこの本の提案はなるほどと思った。

あと時代だなあと思ったのは、2006年に出た本格的な歴史の研究書がすでに2009年には訳されて岩波書店のシリーズのうちに取り込まれて出版されていること。ホブズボームなど一部の例を除いては、90年代でもなかなかそんなことはなくて、新しい研究は基本文献すら英語や仏語で読むしかなかった。自動翻訳の技術も高まっているので新しい研究書の内容を大雑把にでも掴むのは、私のように語学に難のあるものでもより早くできるようになっているというのはありがたいことだなと思う。

とりあえず今日はここまで。

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