朝鮮半島有事・台湾有事とウクライナ戦争:東アジアとヨーロッパの安全保障環境
Posted at 23/08/18 PermaLink» Tweet
8月18日(金)晴れ
いつの間にか日がすぎていくが、新幹線の乱れは昨日までかなり大変だったようだ。まだ当地でも県外車が多く、コツのいる交差点や通りなどで行き悩んでる車が多かったりすることで、まだ休みの人たちもいるんだなあと思うが、当方は昨日から仕事。文章の目標も一つ決めたのでなるべくじっくり書こうと思うが、時間がないのと気忙しいのとはなかなか変わらない。
「日本人が知っておくべき自衛隊と国防のこと」(長いので何か略称がないものか)は、第1章の「日本の厳しい安全保障環境」と第2章の「日本を脅かすシナリオ」の部分を読み終えて第3章日本を守り抜く方法、つまり第1章と第2章の「現状」と「想定される敵のシナリオ」について見た後、それに対して日本はどう言う作戦を持って臨むのか、と言う話に入っている。状況を踏まえての対処方法は、大きく行って戦略と戦術に分かれるわけだが、とりあえずは戦略の部分、その中でもまずは目標のところを改めて確認するところになっている。
防衛力を整備する目標は「日本の安全確保」と「より安定した安全保障環境の構築」であり、そのための手段が「我が国自身の努力」「同盟国との協力」「国際社会との協力」の三つある、と言うことで、まあそれは基本のきということになるが、当たり前と言えば当たり前だが軍ないし自衛隊というものはこういう明瞭な目的意識を持ってことにあたるのだなとある種の感動があった。
東アジアとヨーロッパではどちらが安全保障システムの構築に成功しているかという話で、ヨーロッパはNATOが成立しているが東アジアではアメリカをハブにして日米・米韓・米フィリピン・米タイ・ANZUS(米豪NZ)みたいにいくつもの2国間同盟が成り立っているというシステムになっているわけだけど、現実問題としてNATOのような多国同盟だと結束が図りにくい(ウクライナ戦争の前は割とバラバラになりかけていた)けれども2国間なら必要なところだけ動かせばいいので機動性がある、という指摘はなるほどと思った。
実際、東アジアとヨーロッパでどちらが安全保障システムが成功してるかと考えると、冷戦期間では朝鮮戦争やベトナム戦争など激しい戦いがあったけれども冷戦終結後には東アジアでは戦争が起こってないのに対し、ヨーロッパではユーゴ、コソボ、グルジア(ジョージア)、ウクライナと四回も戦争が起こっていて、東アジアの方が機能しているという指摘はなるほどと思った。ただソ連東欧と違い東アジアでは冷戦終結によって解体された国は一つもないのでその辺は違うんじゃないかなという気はした。逆に言えばまだ東アジアでは冷戦は終わってないともいえる。
朝鮮半島はWWII後のアメリカの防衛ライン=アチソンラインの外側にあったため金日成はアメリカは介入しないとみて侵攻したというのもへえっと思った。これはこの分野の人にとっては常識なのだとは思うけれども。またスターリンが死んだので毛沢東もあきらめて停戦に合意したというのも、朝鮮戦争とスターリン死去が連動しているとは思ってなかったので目から鱗だった。この時マッカーサーが核の恫喝を行ったことは北朝鮮のトラウマになってるかもしれないなと思ったりする。
実際、今の東アジアの安全保障環境の緊迫は、日中の東シナ海の大陸棚利権及び尖閣をめぐる争いなど割と新しいと言える火種もあるが、より大きいのは朝鮮半島有事と台湾有事の問題であって、要は二つの民族分断国家の存在という「未解決の冷戦」がホットな戦争になり得る可能性が問題になっているわけである。北方領土問題やロシアの北海道侵攻の可能性もいまだに完全にないとは言い切れないのだけれど、この二つの問題がより大きなものであることは確かだろう。
そうなるとアメリカー北朝鮮、アメリカー中国の戦いにおいて、後背基地としての日本の役割というのは非常に大きいし、朝鮮戦争でアメリカがなんとか踏ん張った仁川逆上陸においても米艦隊は佐世保から出港しているわけで、本土や沖縄の基地が北朝鮮や中国の核攻撃の対象になることは避けられないと考えた方がいいだろう。
またウクライナが各国からの支援で戦争が継続できているように、アメリカも日本が物資供給基地として利用できたから朝鮮戦争を継続できたわけで、それが日本ではいわゆる朝鮮特需になったわけだけど、経済的工業的な近接の供給地としての役割も大きいだろう。
また、韓国軍や韓国政府、あるいは台湾軍や台湾政府が自国領に地歩を失い、外国に後退せざるを得なかったときにくることができる場所というのはほぼ日本しかないだろう。朝鮮戦争の追い込まれた時も韓国は下関に臨時政府を作る構想があったらしいが、朝鮮半島有事や台湾有事というのはそこまで見通しておく必要はあるようには思う。
当然のことながら始まったら直接の参戦国だけでなく、日本にも重大な影響があることは間違いなく、自衛隊も実戦に参加せざるを得ないだろう。それが周辺事態というものだが、日本の軍備強化というのはそれを起こさせないために北朝鮮や中国を牽制する狙いもあることは理解しておかないといけないと思う。
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