宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」(スタジオジブリ作品)を見た。豊穣なイメージにシンプルなメッセージが込められた作品だった。
Posted at 23/07/18 PermaLink» Tweet
7月18日(火)曇りのち晴れ
早朝に起きた時にはかなり雲が多かったが、7時前になってだいぶ晴れてきた。気象予報では3時間ごとに時間のいい方が決まっているということをこのあいだ車の中でFMを聴いていて知ったので、メモとして書いておこうと思う。
0時~3時「未明」、3時~6時「明け方」、6時~9時「朝」、9時~12時「昼前」、12時~15時「昼過ぎ」、15時~18時「夕方」、18時~21時「夜のはじめ頃」、21時~24時「夜遅く」
午後3時から夕方というのは少し早い気がするし、午前9時半が昼前というのも早い気はするが、まあそのように言うということを知っていれば気象予報もわかりやすいかなと思った。
昨日は1日を通してとても暑く、いつもブログを書いている作業部屋が2階で屋根に日光を受けてとても暑くなるのでパソコンを持って1階の居間に避難したりなど、なるべく過ごしやすいように工夫しているが、お腹や足元は逆に冷えやすく、なかなか調整が難しい。昨夜はパジャマを着ないで布団もかけずに寝てしまい、脚が汗まみれになっていたが、明け方に一度起きて夏のパジャマに着替え、布団を夏掛けに替えてもう一度寝床に入ったらちょうどいい感じだった。寝室も二階なので夜は10時ごろになってももわっとするのだが、これだけ暑いならいいかと脚を出して寝たのは失敗だったなと思う。まあ今のところ風邪を引いた感じもないので体調はキープしたいと思う。
午後は家にいても暑くて何もできないし近場の街に行ってもこれと言ってすることもなく、また月曜だけど休日なのでどこに行っても混んでるしな、と考えた結果、いい機会なので気になっていたスタジオジブリ宮崎駿監督の新作、「君たちはどう生きるか」を見にいくことにした。
隣町の映画館に行ったのだが、前回この映画館で見たのは宮崎監督の前作「風立ちぬ」の時だったから、ちょうど10年前ということになる。場所がよくわからないので3時15分からの回だったが30分くらい前に着くように出かけたが、駐車場がややこしい場所にあって、管理してる人に案内してもらって映画館の下にあるスペースに入れることができた。
本当に宣伝も何もしていない映画なので映画パンフレットもまだなくて、周辺情報が全然わからないのだが、恐らくはそれも含めて宮崎監督の意図だと思い、ほぼまっさらの状態で見ることになった。
そういう状況なので、ネタバレをどれだけ書いていいのかよくわからないから、感想はこれから小出しにしていこうかなと思うのだけど、簡単に感想を言えばとても良かったと思う。
Twitterなどを読んでいても評価が分かれるのだが、物語を期待していた人にはわかりにくかったということだろうか。
とりあえず説明しようと書き出したらやはりネタバレになったので、これから見る人は以下は飛ばしていただけるといいかもしれない。
***
構造的にはとてもシンプルで、時代は戦時中、母を空襲で失って、現世の中で違和感を感じていた少年(眞人・まひと)が父の再婚相手で母の妹に当たる人(夏子さん)がお腹に子供がいるのに失踪してしまい、その後を追いかけてタバコ好きの女中と不思議な塔から異世界に入っていき、さまざまな体験をする中で生まれる前の自分のお母さん(ヒミ)に出会い、不思議な塔とその不思議な世界を作った「大叔父様」に世界を受け継ぐように言われるがそれを拒絶し、現世に戻って生きることを宣言する。不思議な世界は崩壊し、少年たちは無事現世に戻ることができ、夏子さんは子供を産み、戦争は終わり、少年たちは東京へ戻る、というところで話は終わる。
つまりは「千と千尋の神隠し」のように異世界に行って親しい人を助け出す、という構造なのだけど、そこには多重に意味が込められていることは間違いなくて、おそらくこの「大叔父様」というのが宮崎監督自身(宮崎監督は自己イメージを作中によく投影させるが、こんな造物主みたいな存在に投影させるのは初めてだし、これが最後だろう)だと思う。
そしてこの不思議な世界の展開は、ものすごく贅沢にふんだんに多様なイメージが注ぎ込まれていて、ジブリ世界の自己オマージュ的なものだけでなく映画史そのものも、また彼が読んできた児童文学史など様々なものが反映しているのではないかと思わされた。
一つ一つの場面に恐らくは「出典」があり、それと重ねられての「意味」を読み取ることができるだろう。パンフレットがないこともあり、それらを読み取るにはもう一度見るしかないわけで、正直あと5回くらいは見たいと思った。
つまり、この不思議な世界そのものが「宮崎駿ワールドの集大成」みたいなものであって、戦争という「悪意に満ちた世界」にいる私たち自身がある種の「地獄めぐり」をして親しい人を助け出し、そして「自分自身の悪意と向き合い」、「世界を更新して」新しい世界を生きる、という話とそれそのものがメッセージということになる。
「君たちはどう生きるか」というのは「自分たちの悪意と向き合い、それを乗り越えて、親しい人を助けながら、世界を新たなものにしていってほしい」ということなのだろう。
まあメッセージとしてはとてもシンプルだしわかりやすいのであえて秘すこともない気はするが、まあそうできるといいな、とは思う。
「自らの悪意」というものが開始早々に割と衝撃的な場面として現れ、それが「傷」として残るというのもわかりやすい象徴で、ダンテの「神曲」でダンテが煉獄を巡る際にヴェルギリウスに七つの「P=罪」の文字を額に刻まれるということに近い。それを考えるとこの不思議な世界は地獄ではなくて煉獄だということになるが、「大叔父様」はどうにかしてこの世界を良くしたいと頑張ってはいたけど老いたペリカンが死ぬ時に「この世界は地獄だ」とか言っていて、なかなかそうはいかなかったのだなと思う。このペリカンが具体的な誰かを指していたのか、みたいなことも思ったりはするが、まあそれは深読みのしすぎというものだろう。
あとは「母=不思議な力を持つ少女ヒミ」と「夏子の産屋のタブー」あたりが宮崎の「胎内回帰幻想」を読む人は多いだろうなと思う。この辺はどちらかというと諸星大二郎的なものを感じながら見ていたが、あとは現世ではタバコをねだる不良?女中の桐子が異世界では船乗りキリコとして真人を助ける存在になってるあたりは「カッケー」と思った。またワラワラ出てくる老婆の女中たちが異世界で真人を守る存在になってるという設定も良かった。あれは出てきた時は湯婆婆みたいなのがたくさん出てきたぞ、という感じだったが、ああいうコロス的な存在の面白さが相変わらず冴えてるなとは思った。
コロスと言えばトトロのススワタリとかもののけ姫の木霊みたいな存在の「わらわら」が、生まれる前の子供たちだというのは実際のところ、ああ、これを宮崎さんはやりたかったんだろうなあと思った。ただこれは今までもさまざまな形でいろいろな作家によって描かれてきているから、ある意味使い古されたテーマであって、それをどう描くのかはすごく難しいだろうなと思うのだが、思ったよりシンプルに描いていて、これは逆にこういう集大成的な作品かデビュー作かでないと難しいテーマかもしれないなと思った。
***
ああ、思ったより書いてしまったな。今日はもう一つ「紫式部や清少納言は今のような暑い京都の夏を経験したのか」、という「中世の気候変動」がらみのことを書こうと思っていたのだが、時間がなくなったので改めて書きたいと思う。
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