浮世絵と現代の百合の世界/カラヤンの不思議な「公職追放」生活
Posted at 23/07/10 PermaLink» Tweet
7月10日(月)晴れ
昨日は朝町内会の草刈りの予定だったのが雨で中止になり、少し準備して10時過ぎに出て中央道を走って東京の自宅に帰った。いつもは早朝から午前中に奔るので車が少ないのだが、昨日はもうお昼になっていたので東京に帰る車も多く、この時間になるとだいぶ混んでいるのだなと知る。特に高井戸出口で出口渋滞が発生しているのは少し驚いた。環八に出るところだから当然と言えば当然なのだが、まあもう午後1時を過ぎていたのでそういう時間なんだなと思った。
自宅についたのは2時ごろで、それから双葉SAで買った牛肉弁当(小淵沢駅の駅弁らしい)を食べ、少し部屋の空気の入れ替えなどして4時過ぎに出かけて神保町に行った。雨の予報が出ていたのでビニール傘を持って行ったのだけど、幸い雨に降られずに済んだ。
新御茶ノ水の南側の出口で出て神保町の方に歩くと、以前行ったことがあるハワイ的なハンバーガーの店とタイ的なカレー屋が無くなっていて、コロナ明けのタイミングと関係があるのかないのかと思ったり。最初に文房堂をのぞいたらカフェは空席があったので後で行くことにして東京堂をのぞいたり書泉グランデをのぞいたり。
最近できたアットワンダーという古書店が面白かったので昨日も行ってみたのだが、感じとしては我々の年代かあるいはもう少し上の世代にアピールするような品揃えだなと思った。70年代から80年代のものの品ぞろえという感じ。戦前の絵ハガキなどもあってこういうのも興味をもてば面白いだろうなと思う。とんぼの本の「春信 美人画と艶本」(1992)を買ったが440円なら安い。
それからディスクユニオンに行った。前回行ったときにクラシックでおもしろいLPが大量放出されていたので何かあるんじゃないかと思ってみてみたのだが、カラヤンの1940年代のポピュラーな演目の演奏というのがあり、盤質Bとあったが前回買った時もOKだったので買ってみた。それから文房堂に戻ってカフェで日向夏(だったかな)のケーキにダージリンでお茶。三省堂のビルがないから窓から神保町の交差点の車の動きが見えて、なんだか不思議な感じがした。
鈴木春信の本を読んだのだが、春信という人がいかにすごいかというのが読んでいてすぐわかった。絵柄から、竹久夢二の先駆者みたいなものかと思っていたが、全然そんなものじゃない。この本の中である作品について「ユニセックスの世界」という指摘があり、現代の「百合」のことが思い浮かんだ。なるほどそうだな、百合というのはある種ユニセックスの幻想世界みたいな意味もあるんだなと思った次第。どういうものを考えるかは書き手読み手によって違うだろうとは思うが。春信は春画の祖でもあってその辺百合作家のR18とかも含めていろいろ考えさせられる。そういう意味で、春信の絵は現代的な文脈でかなり読み込めると思った。ちらりと見える脚とかの描写が、アニメ【推しの子】のOP「アイドル」のPVで映る舞台上の脚とかの描写を思い出させ、本当に直系の祖だなと思う。
この人は浮世絵の可能性を爆発的に高めた人だなと思う。春信の浮世絵の構図、そのまま現代の百合絵で使えるものばかりだなと思う。というか百合というジャンルの祖先はおそらく白洲正子の言う「両性具有の美」なのではないかと思うのだよな。これは美少年の世界なのだけど、今は少女たちの世界になっているのはおそらく何か理由があるのだが、まだちょっとわからない。
蛍の光が流れたのでカフェを出てさて夕食に何を食べるかと考えつつ東京堂で本を見ていたら、エドワード・ホッパーの画集があり、アメリカ的な寂寥感があっていいなと思ったのだが少し高かったので今回はやめにした。
夕食はいろいろ考えたがはちまきで天丼を食べた。エビ、キス、野菜、それに味噌汁も美味しかった。
もう少し歩いて三省堂の小川町の仮店舗まで行き、立ち読みしたら面白かった小島寛之「世界は素数で出来ている」(角川新書、2017)を買った。素数についてももう少し解像度を上げてみたいなと思ったので読んでみよう。
帰ってきてカラヤンを聞いたのだが、かなりいい。カラヤンが1946年10月にウィーンフィルを振った録音なのだが、「フィガロの結婚序曲」などポピュラーな演目を演奏していてとても若々しい印象。カラヤンは取っ付きにくい印象が強かったけど、これはいいなと思う。
しかし調べてみると1946年カラヤンは戦前にナチス党員になっていたカドでソ連軍に演奏禁止を命じられていたのだよな。これはスタジオ録音だと思うが、明らかに禁止期間中で、実はわりとおおっぴらに録音はしてたのかもしれない。英語のウィキペディアを読んでたらザルツブルグ音楽祭にも匿名で参加したとあり、ちょっと笑った。出演してたら匿名もへったくれもあるんだろうか。見りゃみんなわかるだろうにと。確かカラヤンの伝記が出てたと思うので、この時期の活動についてちょっと読んでみたいなと思った。
A面は私でも知ってる曲ばかりだったのだが、B面はチャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」でこれは初めて聞いた。かなりいい。今までチャイコフスキーは好きではなかったのだが、初めていいと思ったのではないかと思う。こういう出逢いがあるから中古レコード探しはやめられないのだよなと思う。
結果的に中々充実した日になり、よかったなと思う。
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