「神様と神はどう違うのか?」を読み始めた:神と悪と自由の問題について

Posted at 23/06/19

6月19日(月)晴れ

今朝は母を松本の病院に連れていくので時間がないので短めに。昨日は一日なんとなく、というかいろいろ考えたり考えすぎたり、マンガを読んだりスマホのゲームをしたり、気分を変えて草を刈ってみたり、ネットを見ているうちにどこにいくにも遅い時間になってとりあえず出かけたりしていた。

岡谷まで行くのが時間的に遅くなったので近めの書店に出かけて本を物色して、上枝美典「神様と神はどう違うのか?」(ちくまプリマー新書、2023)を買った。結論から言えば、「神様」というのは信仰の対象としての神という意味でこの本では使われていて、「神」というのは哲学の考察の対象として使われている、ということだ。

言われてみたら「神」というものは信仰の対象としてだけでなく哲学にも出てきているわけで、ニーチェが「神は死んだ」ということ自体、「神」について考察してきたということを意味している。フォイエルバッハも神に言及していた記憶があるし、デカルトも方法序説を読んでいたら出てきた。というか、「我思う故に我あり」に到達した後、すぐ神が出てきたので読む気をなくしたのを覚えている。

哲学というのは神なしでも人間が思考できるようにするためのもの、みたいな話をどこかで読んだ気がするが、それについてそこまで深刻に考えたことがなかったので、「哲学における神の問題」というのは一度考えておいてもいいのかなと思って買ってみたわけだ。

だからこれはキリスト教の神についての話になるわけだけど、全知全能の神が存在するのになぜ悪が存在するのか、という問いが生まれ、それは人間に自由が与えられているから、悪をも為してしまうのだ、と説明されているのだという。つまり全知全能の神の存在と事実としての悪の存在を両立させるために人間は自由であるというテーゼが必要とされている、ということなのだという。

これはまあある意味アクロバティックな論理だなとは思うが、そんな感じのことは読んだことはある。ただそれが西洋哲学的な根本問題だというところまで深くは考えていなかったなと思う。

高校の倫理社会で「仏教」も「キリスト教」も習ったけれども、キリスト教の神の愛はアガペーで、みたいなことはあったがそこまで深くは考えていなかった。しかし、仏教の方についてはこの世は「苦」に満ちている、と言われたらそうかも、と思うわけで、その苦から人が救われるには方法がある、その方法が仏道である、という筋道は少なくとも普通の思考としてはわかりやすい気がする。

しかしキリスト教では最初にあるのは「苦」ではなく「全知全能の神」なので、その神が存在するのになぜ「悪」が存在するのかというのは、大問題だということになるわけだ。

キリスト教の信仰を持たない我々なら「そりゃキリスト教の考え方自体が間違っているからじゃないか」と思うわけだけど、彼らはそういうわけにはいかないようだ。それは「神を信仰する」という意味での宗教を持つと持たないとにかかわらず、「神が存在する」と考える前提に立たざるを得ない、ということなのだろう。

仏教的な世界観であれば、この世に苦が存在することは事実であるし、その苦に耐えられず悪をなすのもまた人間、しかしそこから抜け出す意思を持てば菩薩の道にも入れる、というような考えは成り立つ。本当の理想の世を実現するのは難しいし、弥勒の世が来るのは56億年後であり、現在は末法の世であっても、よりよく生きることはできる、みたいな感じになるかなと思う。まあ仏教的というよりは日本的なのかもしれないが。

しかし万能の神が存在するという前提から出発するとこの世の現実を説明するためには「人には自由が与えられている」という新たなテーゼが必要になり、だからこそ悪の問題や自由の問題が哲学にとって抜き差しならないものになる、というのはなるほどなあとは思った。

これはポリコレの問題とかもそうだけど、日本ではそういう面倒くさい議論が起こると面倒くさいと思う人がかなりの割合を占めると思うけれども、キリスト教社会では悪の問題は重要な問題だから、自分が悪のポジションにいることは無理、という感じになって雪崩を打ってしまうのだろうなと思う。

つまりは内面の自由と言うけれども、キリスト教社会においては内面はそんなに自由ではない、と言う面もあるのではないかと言う気はする。

まあその辺について書かれているようなので、またゆっくり読んでみたいと思う。

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