「ブルーピリオド」と戦後のニューヨークを中心とした現代アート/整理整頓の意味
Posted at 23/06/01 PermaLink» Tweet
6月1日(木)晴れ
晴れなのか曇りなのか微妙だが、今日から6月というような日にはそんな天気なのかもなという感じもする。なんか普通に忙しいのに思いついたことでなるべくさっとやらないといけないこととか、昨日が期限なのに払い忘れていた令書とかが見つかったりして、朝からいろいろ慌てて対応したりしている。一つの原因は、やはり整理が悪いということなのだなと思う。自分ではやってるつもりなのだが、やりきれていないところがあるということなのだろう。とりあえずその辺のところを機能させるためにノートシステムを作ったが、まだまだ使いこなすのはこれからという感じだ。
思ったことは、整理整頓とかいうけれども、それは自分が全体を把握するためにやってるという目的を忘れたらいけないということで、それを忘れると「整理のための整理」という賽の河原の石積みになり、結局いなになって続かなくなってしまうということだなと思った。また自分の性質を考えると忘れないだろうと思ってメモしておかないと忘れるということがよくあり、ただ備忘録的なノートがすぐ出てこなくてとりあえずその辺の紙に書いたりして訳がわからなくなることがあるから、スケジュール管理に関しては紙のスケジュール帳とiPhoneのリマインダーで二重に管理した上で備忘録にも書いておく、くらいのことをしないとどういう状況でも対応できるようにはならないなと思った。
***
昨日は「ブルーピリオド」の今続いている「夏休みの広島で作品制作」編の前の「ノーマークス(アートコレクティブ集団)」編を読み返していて、主人公八虎がノーマークスの主催者・フジに「エミール・ノルデやデ・クーニングの表面をなぞってる感じがする」と批評される場面があり、ふとこの二人の画家のことが気になって調べてみたのだった。
エミール・ノルデ(1867-1956)はドイツ表現主義の画家で、ナチスに共鳴し党員になったものの彼の表現は画家出身のヒトラーには気に入られず、退廃芸術としてさらし者にされた、というのは興味深いというかなんというかドイツ人ぽい。表現主義の画家がナチスに取り込まれた的な文章を読んだことがある気がするが、ノルデのことだったのだろうか。
デ・クーニング(1904-97)はオランダ出身のアメリカの画家で、抽象表現主義(ニューヨークスクール)というアメリカを震源とする初の世界的な美術運動の画家とのこと。
デ・クーニングその人より「抽象表現主義」に興味を持って読んでみると第二次大戦で多くの画家がアメリカにわたりアメリカがアートの中心になった。アクションペインティングや巨大なキャンバス、地と図の無差別化など現代アートの特徴的なスタイルの淵源ということかなと思った。
現代アートというのは近代アートと何が違うのか、また20世紀前半のシュルレアリスムや表現主義と何が違うのか、というところが今まであまりよく理解できてなかったのだが、このデ・クーニングと抽象表現主義=ニューヨークスクールのWikipediaの説明を読んでかなり納得がいったように思う。つまり、現代アートとは「アートがアメリカ化した」のだな、と思った。
科学や文化の中心がヨーロッパから決定的にアメリカに移ったのは第二次世界大戦だということはよく言われている。多くの人々が戦禍を逃れてアメリカに渡った、特にユダヤ人の文化人が多くアメリカに渡ったことは知られている。その中には原子物理学の研究で原爆を開発しアメリカの勝利に貢献した人たちもいれば、大陸法のドイツと違う英米法のアメリカでは活躍の場がなかった法学者もいたりして悲喜こもごもなのだが、特にドイツ文学はその重要な読者であったユダヤ人が虐殺されたり移住したりして決定的にドイツ文学から失われたためにその輝きを失った、ということは読んだことがある。
美術に関してはあまり読んだことがなかったが、ナチスの退廃芸術排除の動きなどがセンシティブなアーティストにどんな影響を与えたかはわかりやすい。ただ、本気で体制を支持した人たちもいたわけで、藤田嗣治が事実上日本から追放されたりいろいろな傷跡が残っていたりはする。
しかし、戦中戦後にアーティストたちが最も流入したのはニューヨークで、だからこそニューヨークがアートの新しい中心になった、というのは言われてみればそうだよなと思うがあまりちゃんと認識していなかったので、「抽象表現主義」が初のアメリカ発のアート思潮だというのはかなり納得するものがあった。
この「抽象表現主義」のWikipediaの説明では、その特徴として
・巨大なキャンバス(イーゼル絵画との決別)
・画面に中心がなく、地と図の区別がない、「オールオーバー」(均一)な平面
・キャンバスは、作家の描画行為の痕跡(フィールド)であると考え、創作過程を重視する(アクションペインティング)
とあったのだが、アートから大きさの制限を外し、画面をすべてフラットに(図の特権性・地の背景性を外す)し、結果よりも過程を重視する、という考え方が非常にアメリカ的だなと思った。
大きいものが好きで、フラットでフランクな考え方が好きで、チャレンジを評価するアメリカ人、みたいなところがこの新しいアートの運動には関わっているのかなと思ったわけである。もちろんこの辺りは素人の感想なのでもうちょっと掘り下げて読んでみないとこの見方が妥当なのかはわからないのだけど。
特に「アクションペインティング」のように「制作の過程を見せる」ということの意味というのが私にはあまりわからないところがあり、腑に落ちてはいないのだけど、最近「プロセスエコノミー」というのが出てきて製品の良さだけでなく「SDGs的に作ってる」とかプロセスを売り物にする傾向が出てきていて、こういうのも同じ方向という面もあるかなと思ったりした。
マグロ解体ショーみたいなのもある意味アクションキュイジーヌというか同じようなところもあるのかなと思ったり。あと、私は料理はあまりしないけど料理番組は見るのが結構面白いなと思っていて、そういうのもアクションペインティングとプロセスエコノミーに通じるものがあるのかなという気がする。
「ブルーピリオド」で取り上げられているアート的な営為というものは「抽象表現主義」以来の伝統みたいなものの上に乗っかっているなあと思う。ただいずれにしても、「現代アート」というのは基本的にはやはり「第二次世界大戦後」という時代の中で生まれ特にアメリカを中心に発展してきたもの、ということだと思うし、自分はやはりあまりよく知らないなと改めて思った。
また現代美術館に行ったときなどに図書室で本を探していろいろ調べてみたいなと思った。
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