マンガ・アニメで「ぼっち・ざ・ろっく」を見た:「ぼっち」は存在自体がロックだ/南アフリカの社会構造を大きく変えた植民地支配とその「遺産」としてのアパルトヘイト
Posted at 23/05/02 PermaLink» Tweet
5月2日(火)晴れ
今日は八十八夜。夏も近づくと歌われているが、今朝は寒い。こちらの気温は最低気温3.5度。寒くて目が覚めて、風呂に入って暖まったがそれでもまだ寒く、しばらく足湯をして少し汗をかいてだいぶ暖まった。
昨日はお休みの日だったのだが、午前中に銀行関係の仕事をいくつかしていたら結構時間を食ってしまった。一昨日に読み始めた「ぼっち・ざ・ろっく」が面白く、ツタヤに2巻を買いに行って帰りにガソリンを入れ、西友で昼の買い物をして帰った。
***
午後は「岩波講座アフリカ諸地域」の網中昭世「植民地主義の展開」まで読んだ。これは面白かったのだが、一方で「ぼっち・ざ・ろっく」のアニメが見たくなり、検索していたらAbemaで一気再放送をタイミングよくやるということがわかったので、少しずつ見た。これはかなり面白い。
https://abema.tv/channels/anime-live/slots/9o6a4MaX3Ro48F
ちょうど2巻の文化祭のあたりまで読んでいたのでアニメ1期のオンエアの範囲がちょうどそこまでになっていて、どこで盛り上がる、つまり具体的に言えばライブの場面が来るかというのもわかっていたので、流石に12回全部は見てないのだが、原作読んでてみたい場面はほとんど見られたと思う。
この作品の存在はもちろん知っていたのだが、Twitterで時々言及されているのと自分が少し気持ちの余裕が出たのとで見てみようかなという気持ちになって原作1巻を買い、昨日は関係者のインタビューを読んで、その熱量の凄さに驚かされたのが見る大きなきっかけになった。
https://febri.jp/topics/btl_live_1/
https://febri.jp/topics/btr_live_2/
https://febri.jp/topics/btr_live_3/
またニュース動画でもオンエア中やその後もCDや配信で爆発的にOPや劇中歌が売れたというのは予想はついたが、作中の演奏に使われているギターのモデルが普段の10倍、100倍(だったかな)と売れた、という話なので音楽業界にとってはかなり大きなニュースだっただろう。
バンドマンガ・音楽漫画というのはそれを追いかけているわけではないから全部を知っているわけではないけれども、一番有名なのは「NANA」だろうか。あれはバンドというよりも二人のナナの数奇な運命、みたいな話が中心になり、最後は連載が中断したまま10年以上経っているけれども、あの作品の影響力はすごかった。それから「BECK」だろうか。これもKindleでほとんど読んだが、この作品で今のロックミュージックにおけるラップの位置を知った感じがある。
最近では「パリピ孔明」も一味違う設定の音楽・バンドマンガだろう。これも昨年アニメ化されてかなり話題になった。OPの「チキチキバンバン」がハンガリーの作曲家の作品であるとかの話題もあったが、昨日だったかには向井理さん主演で実写ドラマ化が発表され、話題になったのも記憶に真新しい。あとはラップマンガの「Change!」も読んだ。
今連載中なのは「SHIORI EXPERIENCE」もそうだ。ジミ・ヘンドリックスの霊が高校の英語教師のシオリにとりつくというこれも設定が重要な作品だが、カート・コバーンとか知らないミュージシャンを知るきっかけになった。連載が終わったのでは「バジーノイズ」も読んだ。これは絵の表現がひさうちみちおっぽくて好きだった。
ここからはググってみてみると、「デトロイトメタルシティ」があったことを思い出した。あと「けいおん!」もあるか。これらは自分が読んでいないのでよくわからないが、ヒットしたことは知っている。みていけば他にももちろんあるだろうけど、自分も案外バンドマンが読んでるなと逆に言えば思った。
現代はロックをやるのにいい時代なのか、そうでもないのか。ロックとは何か、みたいなこととも関わってくる話だけれども。私は中学生の頃からギターを弾いていて、大学の時はバンドに参加したこともあったのだが、ステージは一度だけで結局演劇の方に行った。中学高校と普通にはロックも効いていたし、ビートルズやウィングスだけでなくレッドツェッペリンやディープパープルなども聞いていたのだが、どちらかというと情緒的なポールマッカートニーとか知的な方向性のYMOとか坂本龍一の方にひかれていき、演劇をやるようになってからは演劇に使えそうな音楽の方向へ聞くものも変わっていって、民族音楽やらヨーロッパ中世の音楽、みたいな方向へ行って、30代以降はクラシックやジャズの方が中心になっていった感じがある。
だから「ロックとは何か」みたいなことに関してはあまりよくわからないのだけど、ものすごくシンプルに言えば「反抗の音楽」だよな、と思う。何に反抗し何に抗うのか、というのは一概に言えないが、「社会と戦う」「古い考えと戦う」みたいなシンプルなものはもうあまり魅力が減じてきているようには思う。ただ、若者というのはどの時代も古い時代を乗り越えていかなければいけないものだから、そういう意味で常に「抗うべきもの」が存在していない社会はないので、ロックの種は尽きないのかもしれない。
「ぼっち・ざ・ろっく」は、主人公の後藤ひとりが「青春的なものが苦手」で「青春コンプレックス」だというセリフがあり、それを受けてなのだろう、OPの曲名が「青春コンプレックス」であるということを知った時に、このアニメは絶対面白いと思った。つまり、アニメの制作側がどれだけ原作の本質を掴んでいるかということがアニメの面白さには絶対関わってくるわけだけど、OPのタイトルを「青春コンプレックス」にした時点でそれは絶対確実だと思われたからである。
ひとりはぼっちでコミュ障でヒッキーで陰キャで、と間違いなくそれらを制覇した女子高生なのだけど、ギターだけは一人で練習して「ギターヒーロー」の名で動画配信サイトに投稿し、そこで褒められることで承認欲求を満たしている、と書いただけで暗い女子なのだけど、ひょんなきっかけでバンドを始める中でそういう自分、特に自分の中の闇と戦いながらバンドメンバーともファンともさまざまな大人たちとも交流していけるようになっていく、つまり最初から大きな敵を抱えているから、「ぼっち」というのはそういう意味で存在自体がロックだ、と言えるのだと思った。
彼女らのバンド、「結束バンド」はオリジナル曲の歌詞をひとりが書くわけだが、その歌詞が暗い(らしい)。しかしそれをとにかく明るい喜多さんが歌うというギャップもまた面白いわけで、ロックな魂というのはそういうことなんだなと思ったりする。2巻のラストではひとりが「ギターヒーロー」であることが音楽ライターにバレ、ひとりだけを褒めて結束バンドを「ガチじゃないですよね?」と貶すのだが、そこで一念発起した四人が新たにフェスに参加を決意する、というところで終わっていて、2巻まで読んだらいいかと思っていたのにこれは3巻も読まないとダメだ、となってしまった。
これだけ売れたことだし、2巻の半ばで1クール作れたわけだから5巻あればあと3クールはできそうなので、2期以降のアニメも期待したい。
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「植民地主義の展開」では入植植民地のさまざまな実態について書かれていた。南部アフリカでは狩猟採集民のサン族や農耕民のコイコイ族、南下してきた牧畜・農耕民のバントゥー族などさまざまな人々がいたところにポルトガル人・オランダ人・ドイツ人・イギリス人とヨーロッパからの来航者もいくつかの勢力があり、金鉱などの資源開発が始まると外国から労働者を導入したりしてさらに民族構成が多様化し、また農地を収奪したり通過儀礼的な金鉱労働をある種の規範として行うようになったりなど、南部アフリカ地域での社会構造を激変させたことがよく理解できた。インド人や中国人などアジア人の労働者も使われ、多様化はされに進んだ。
アフリカーンス語といえばオランダ系の植民者の言語だと思っていたが、元々は征服された人々のピジン言語だったというのは知らなかった。南アフリカや南アフリカが支配した領域では英語が普通に使われていると思っていたけれども、例えば南西アフリカ=ナミビアでは南アフリカのアフリカーンス語を喋る人たちが統治に携わっていたため、英語よりもアフリカーンス語の方が通じるというのはこの論文ではなかったけどこの本で初めて知ってちゃんと調べないとわからないことは多いなと思った。
白人が入植した植民地における「植民地の独立」というのは当然ながら本国に結びついた現地支配層にとっては死活問題になるわけで、どこの国においても独立戦争は激しいものになった、というのはなるほどと思った。フランスの植民地が独立に戦争が伴い、イギリスは割とサラッと独立を許した、というイメージがあったが、そんなに単純なものでもないのだなと思った。アルジェリア戦争は16年続き、アルジェリア生まれのフランス人や植民地当局側の人たちは最終的にアルジェリアを離れてフランスに移住したわけで、カミュの「異邦人」ではないが、「知らない故国」で暮らすというある種の理不尽を経験したわけだ。この辺りは満洲生まれの人たちの引き揚げという問題とも共通したものがある。
南アフリカではオランダ系の人々にとってはむしろイギリスの支配から離れるというプラスの面に受け取られた部分もあり、英連邦さえ離れてアパルトヘイト体制を作っていくことになった、というのも植民地支配というものの一筋縄ではいかなさというものを改めて考えさせられた。ポルトガル植民地が温存され、むしろ入植が進んだというのも、第二次世界大戦が最終的な独立の契機では必ずしもなかったということで、世界史のシンプルな理解だけでは済まない部分があるのだなと思った。
また、コイサン族の多くは植民地支配の中で民族的にも解体させられてしまった部分が多かったというが、アパルトヘイト後になって自らの民族的ルーツをコイサンに求める人が多く出てきて、クリック(舌打ち音)を伴うコイコイ語の学習熱が上がっているのだという。これらもまた、新しい、いわばポストモダン的な現象なんだろうなという気がする。(この件は佐藤千鶴子さんのコラム「現代に甦る南アフリカのコイサン」)
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