「国家神道」読了:研究史的に要になる本を読むことの重要性/「一級建築士矩子の設計思想」
Posted at 23/04/10 PermaLink» Tweet
4月10日(月)晴れ
昨日は午前中に帰京した。特急の中で村上重良「国家神道」(岩波新書)を読了。東京駅で下車した後、弁当を買い丸善で神道関係の本を見てから帰宅したら、留守だったので排水管清掃ができなかったというお知らせが入っていて、電話してみたら1時過ぎに来てくれるとのことだったから待っていたら、今日は1回目の清掃の時に留守だった家をやる日で、午前中に上の階を、午後に下の階をやる予定になっていたとのことで、順番は違うがやってくれた。通知が最近来たらしく、今日やるということは知らなかったのだが、とりあえずなんとかやってもらえてよかった。
午後は日本橋に出かけ、日本橋丸善で神道関係の本を見たり、マンガを見たり。「国家神道」を一冊読み切ってから書店の書棚を見ると、それぞれの本の位置づけが自然にわかり、自分がまだ勉強したりない部分とかも指摘されている感じがして、この分野に対する解像度がかなり上がった感じがした。内容的にはどうかと思うところもあったが、そういう意味ではまさに本当の意味での「基本文献」なんだなと思う。
「明治史研究の最前線」を読んでも、まさにこの本を廻って神道や近代の宗教の研究が進められた側面があるように書かれていたし、賛成反対や好き嫌いは別にして、読まなければいけない本というものはあるなと改めて思った。研究史的に要になるような位置にある本なので、ここで論じられていることを展開したりそれに対して批判したりしている本がたくさんあるから、なぜそのような批判がされているのか、元の本を読まなければわからないし、どういう問題意識で新しい本が書かれているのかも元の本を知らないと解像度が低くなる。
「国家神道」は正直言ってかなり大ざっぱなところがあり、葦津珍彦をはじめとする重要な人物についても触れられていないので、新しい本を読むとそのあたりでももっと解像度が上がるので、読んでいて楽しくなる。国家神道についての研究史は同時代から始まっているにしても、研究対象として掘り下げて研究できるようになったのは戦後になってからだからそういう意味では70年余り、研究史は短い。230年あまりのフランス革命研究の歴史に比べれば相当短いから、逆に言えば一冊一冊の役割が大きいことになる。偶然だが、早い段階でこの本を読むことができたのはよかったと思う。
「国家神道」、昨日読んだのは戦時中の話と戦後の話になるわけだけど、満洲事変以降、特に日中戦争開始以降に神道を国家主義的なイデオロギーとして利用しようという考えが強まったのは確かだなと思う。特に神武天皇紀などから「八紘一宇」だとか「撃ちてしやまむ」みたいな語彙を拾い出して戦意高揚に利用したとはいえるわけだが、国策がそうなってしまえばどういう思想でもいかようにも利用できるので、このあたりは神道の本来の思想が戦闘的というわけではないのだけど、このあたりの「国策による神道思想の展開」についてはもう少し調べてみたい感じはある。しかし、明治維新以来国の指導原理として神道を展開してきた先にこれがあったこともまた確かで、そこを神道関係者が抑えられなかったのは本当は問題があったのだと思う。
中国との戦争は地域的なものであったわけだが、米英との戦争は当時の世界秩序に対する争い・挑戦なのだという認識がどのくらいあったのか、少なくとも知識人層は「近代の超克」を唱えているわけだからそれは認識していたと思うが、結果的に見れば器を超えた挑戦であったということは思わざるを得ない。
ただ西欧文明的・近代科学的啓蒙と神道を基本にした国民の教化という路線以外に日本が近代国家として成功する道があったのかというとそれもまたよくわからないので、このあたりのところもまた考えてみたいと思う。
マンガは、鬼ノ仁「一級建築士矩子の設計思想」1巻(日本文芸社)を買った。漫画ゴラク連載だという。ジャケ買いなので中身はまだちょっとしか読んでいないが、興味深いし勉強になる感じで、面白そうだ。
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