日本の宗教政策の変遷と宗教団体の多様なあり方/保守は必ずしも権力側ではない/中国の一人っ子政策とベトナムの人身売買/「鎌倉殿の13人」メイキング写真集
Posted at 23/04/04 PermaLink» Tweet
4月4日(火)晴れ
朝から寒いなと思っていたのだが、現在の気温は1.4度。最低気温は1度だったらしい。桜は実家の近辺でも満開だが、これが花冷えというものかと思う。日中は気温が上がるようなので、体調管理がまた難しくなる。
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昨日は基本的に休みの日にしたのだけど、やはり「国家神道」を少しずつ読んでしまい、日本における宗教と国家の関係についてまたいろいろ考えさせられることになった。今では宗教ないし宗教団体は文部科学省の外局である文化庁の所管になっているわけだが、これは政教分離の徹底という意味から宗教を文化として位置付けるという考えからきているのだろう。
明治政府の成立以来、宗教と国家の関わりは複雑な経緯を辿ってきているわけだが、国家としては国家イデオロギーとしてのいわゆる国家神道と国家にまつわる祭祀を必要とする一方、時には国家に叛逆し時には乗っ取る可能性すらある宗教団体というものはなるべく抑え、管理下におきたいという考えがあるわけで、治安の維持などの側面も含めた「宗教行政」というものが重要であったということなのだと思う。
「国家神道」によれば、その完成形は上記のような「国家の祭祀としての国家神道」と「宗教としての神道ないし神道系新宗教」を分離し、後者を「教派神道」として管理するというもので、それらの範疇に入らなかった中小の宗派は公認された教派神道の傘下に入ったり、あるいは「奉賛団体」という形を取ることで生き残ることになり、公認された宗派も独自の神のみを崇拝することは許されず、造化三神や天照大神などの国家神道によって公認された神を祭神に加えることを求められたわけだ。
私は各地の神社を参拝するときに、祭神を調べるとどう考えてもあまり縁のないこれらの神が祀られていることがすごく不思議だったのだけど、そういう経緯からこれらの神が祀られているということを知ってようやく理解できた感じがある。天理教や金光教など教祖のいる宗派においてもそれが強要されていたわけだが、戦後はそれらは教義を変えて本来の創唱宗教の性質に戻ったということのようだ。
宗教行政の変遷という観点から見てみると、神道のかなり中心部分も大きな影響を受けていることがわかる。もともと神道の中の有力な一派であった伊勢派は一時神宮教と名乗ったが、伊勢神宮が国家神道の本宗となることにより、宗教と名乗る不都合ができて「奉賛団体」に衣替えし、「神宮奉斎会」となった。しかし戦後「神道指令」が出されたことに危機感を感じた葦津珍彦に主導されて、大日本神祇会・皇典講究所と共に神社本庁を組織することになった。この「神宮奉斎会」の東京に置かれた「神宮奉斎会本院」が、神社に「復帰」して東京大神宮になったということなのだという。
日本においては宗教は神道と仏教の二つであると認識されていて、陰陽道や儒教は宗教行政の対象にならなかったのだが、キリスト教もまた昭和14年の宗教団体法の成立まで、キリスト教は「神仏道以外の宗教」という位置付けにされていたと。実際には明治32年に黙認に近い形でその存在は許容されてはいたようだが。
諸宗教はつまりは日本政府の宗教行政上の問題によって様々な形態の変遷を辿ることになったわけだが、現代日本における宗教組織の多様性はそうした戦前からの経緯や戦後の宗教行政などに影響されてできたものなのだなと思う。
特に戦前は宗教団体として公認された存在でないと迫害を受ける可能性があったわけで、中小の宗教組織は公認された大組織の下部団体という形を取ることになった。大本については調べた限りそうした上部団体が見当たらないから、それで弾圧を受けたということがあるのかなと思う。
キリスト教や大本以外で宗教弾圧といえば創価学会だが、創価学会は1930年に作られ1937年に日蓮正宗の法華講(信者組織)として位置付けられた。1943年(戦時中)に神社神道批判により治安維持法と不敬罪によって会長の牧口以下が逮捕され、牧口は翌年拘置所で死去。戦後は戸田が中心になり池田も加わる。
1951年に日蓮正宗との話がついて創価学会は1952年に東京都によって宗教法人として公認された。当初は信者は正宗の各寺院に所属することになっていたが正宗本山大石寺との対立が起き、1991年には「破門」されて関係が絶たれ、現在では「在家仏教団体」ということになっている、ということだろうか。
日蓮正宗の内紛とか創価学会との対立とかについては調べる必要があるのかよくわからないのでとりあえず後にしようと思う。
ただ、創価学会もまたそういう日本の宗教行政に様々な影響を受けて現在のような組織になっているということなので、その辺の経緯は一応書いておこうと思った。
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それにしても、「保守」という言葉は人気がないな、というかなんか普通に悪口に使われていて、いろいろと納得できないものがあるなと思った。一つには今朝ニュースを見ていて、プーチン政権が国民の自由を制限しようとしていることを「保守的な政策」と表現していて、保守=国家権力の側に立つこと、みたいな認識が一般にはかなり強いのだなと改めて認識したのだが、それは違うよなあと思う。
これは、論壇やジャーナリズムを支配しているのが左翼ないしリベラルの人たちであることから、マスコミは自分たちの対抗勢力=敵を保守と呼ぶ呼び方になることがある。
これはよく考えればわかるのだけど、例えば1970年代には保守という言葉が「資本主義」を指している事例がとても多かった。今は人権を制限する方向のロシアとかを保守と呼んでいる。「保守」という言葉は固定された特定の人々を指しているわけではなくて、彼らの用法では敵=保守ということになることが多い。だから自分たちを保守と考える側からはそうした言葉の濫用を切り分け整理していかないといけない。
現在のところ、そうしたジャーナリズムにおける言葉の使い方の主導権が左翼リベラルに握られているので、そこにもっと中立性・公平性を導入することが重要だろうと思う。そこをなんとかしないと言葉の混乱が続くし、いまだに保守というのを単なる罵倒語で使う人たちがいる。
「保守=プーチン政権支持」、みたいな図式を描くことだけはやめてもらいたいのだが。
ただまあ、「保守」を自称する人たちの中には嬉々として国家権力の側に立つ人たちも多いので、まあ混乱もやむを得ないかなと思う面もある。ただだからそういう人たちは保守と言わずに「権力側」と正しく自称して貰えばいいのだが、まあそれも印象が悪いと考えているのかなとは思う。
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これも今朝のニュースだが、ウクライナ情勢をめぐってロシアの政権の内外では様々な意見があるということ。一応は民主主義の形態を取り、大統領選挙も行われれるロシアにおいて、路線が重要であることは間違いなく、今朝はグラジエフ、オルホフ、スースロフ、などの名前が上がっていた。昨日はサンクトペテルブルクでプーチンを支持するブロガーがテロにあったが、こうしたことは今後も続く恐れがあるという。
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またこれも今朝見たニュースだが、ベトナムから誘拐された女性が中国へ売られ結婚させられて、昨年あたりに急に強制送還されたケースが2000件以上あるのだという。
日本でもそうだが、中国では一人っ子政策で特に農村部では深刻な嫁不足になっていることを背景に、ベトナムやラオスなどでさらわれた女性が中国で売られているのだという。
日本や中国でも少子化は問題になっているが、韓国ではさらにそれが進んでいるけれども、現在韓国では男性が女性に望む第一位がフェミニストでないことだという。フェミニズムはバースコントロールの問題と地続きではあるから、「嫁問題=結婚する女性不足」がそこでさらに加速されることになってるのだろう。
中国で男女バランスを崩す一人っ子政策が行われたためにその歪みが周辺諸国に及んでいるわけだがフェミニズムも実質的に少子化対策の一つの障壁になっているだろうと思う。中国でも上野千鶴子氏の著書が売れ、フェミニズムの影響がはじまっているようだが、それがさらに盛んになると切羽詰まった農村の男性たちはさらに人身売買による嫁取りみたいな話がより激化する可能性もなくはないだろう。
国家はこういう問題に介入せざるを得ないのだろうけど、なかなかその目的を達成することは難しく、弊害もまた多いのだなと思う。
昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の現場で主演の小栗旬さんが撮影した膨大な写真から、一冊の写真集が編まれて昨日発売になった。私は昨日早速買ったのだが、なかなか面白かった。ただ、写っている人に結構偏りがあって、自分が見たかった義時の2番目の妻・比奈の役の堀田真由さんがあまり写っていなかったのは残念だった。
今小栗さんのインタビューを読んでいたらその辺の事情が書いてあって、ちょうどみんなマスクをつけている時期だったから撮る気にならなかった、少なくなってしまって残念だ、とあったのでそうか、残念だなとは思ったが、まあ仕方ないと納得した。こういうのはまあ、いろいろな事情が入ってきてしまうので仕方ないよね、とは思う。
三谷さんと小栗さんの対談も収録されているが、まだ読みかけなので楽しみにしたいと思う。
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いろいろと考えすぎてくさくさすることも多いのだけど、なんというか歳をとったということもあり、「生きる力」とか「エネルギー」みたいなものが減退しているところがあるよなあということを今朝考えていて思った。余計な部分を削ぎ落としていくことでまたそういうエネルギーを復活させて、死ぬまで元気でやっていきたいと思っているのだが、まあ、そうなるように頑張っていきたいと思う。
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