昭和10年代の国体論と神道をめぐる動き
Posted at 23/04/09 PermaLink» Tweet
4月9日(日)晴れ
今朝は冷え込んでいて、ストーブをつけている。最低気温は1.3度、県内は零下の予想もあったが、当地はそこまで下がらなかった。
「国家神道」は戦時体制の強化とその遂行のために宗教界にも国家に奉仕する方向性を強めてその方向性から逸脱しているとみなした「大本」や「ひとのみち」を弾圧した、という方向の記述になっている。それを「ファシズム的国教」と表現しているが、元来ファシズムと宗教は相容れないものだと思うのだが、分析というより著者の確信というか信念に沿っての記述になっている感がある。
ただ、二二六事件を受けて岡田内閣が総辞職し、その後日中戦争が始まったのを受けて総辞職した広田弘毅内閣の後に宇垣一成に組閣の大命が降下したが陸軍の反対で潰され、成立した前朝鮮軍司令官の林銑十郎が「祭政一致」を唱えて内閣を組織したわけだけど、それもこの文脈で見てくると意味が感じられるとは思った。東條英機が対米戦争を決意したときに「精神右翼」からの攻撃が激しかった、というような記述を読んだことがあるが、この辺り神社・神道界の主体性みたいなものがどうなっていたのだろうかとは思う。
昭和15年の紀元2600年祭については触れられていて、これを契機に内務省から神社局が独立して内務省の外局としての神祇院が設立されたというのも国家が神道の役割に大きな期待を持ちその教化力を動員しようとしたというのはわかるし、一方で教部省が廃止されて以来独立の官衙を持たなかった神社界にとってもそれはある意味悲願であったわけで、しかしこうした状況への危機感は無かったのだろうかという疑問もある。
Wikipediaを見ると葦津珍彦は大東亜戦争に反対し、ドイツや東條内閣を批判して論文が発禁になったりしているので、少数ではあってもこうした動きそのものへの批判というか先々を危惧する人もいなくは無かったのだなと思う。
また、昭和10年の天皇機関説問題やそれを受けての国体明徴声明については触れられていなくて、国家側の動きのみを書いて国体論に対する民間の傾斜については触れていないのはちょっと片手落ちであるような気はした。
こういう左翼アカデミア論壇でいうところの「天皇制ファシズム期」における国体論や神道をめぐるさまざまな立場についてもう少し分析を読みたいような気がした。なくはないと思うのでまた探してみたいと思う。
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