「安倍晋三回顧録」:日露北方領土交渉への期待と現実/日本の戦前における権威主義と自由主義の構図
Posted at 23/02/28 PermaLink» Tweet
2月28日(火)晴れ
今日で2月も終わり。2月は逃げる、と何度も書いてるが、本当に逃げ足が早い。1月と3月ならあと3日あるわけで、スピード感が違う。月末の会計処理なども早くやる必要があるので気忙しくなるのもそのせいだろう。
今朝は冷え込みは少し緩く、最低気温はマイナス3.8度。最高気温は12度の予想だからかなり暖かくなりそうだ。東京の最高気温は18度の予想か。これはかなり春めいた感じだろう。
昨日の朝は東京だったが、朝マンガ(ジャンプ、スピリッツ、ヤンマガ)を買いにローソンへ行ってブログを書いた後、いろいろやって11時ごろ西友に出かけてお昼の買い物、なんとなくパックの鮨モードになっていたので久しぶりに食べてみた。洗濯や片付けを少しやって2時ごろ出発。昨日はもう上の階の内装工事は終わっていたのか、騒音がなくて助かった。
バスと地下鉄を乗り継いで東京駅に出て、えきネット予約の切符を取り、丸善に戻って本を探す。と言っても日曜日に見た本を確認して買っただけなのだが、土田健次郎「儒教入門」(東京大学出版会、2011)とあと仕事関係の本を買った。時間を見るともう2時50分くらいで少し気忙しかったのだが4階のカフェの窓際の席を取り、アップルパイと紅茶。美味しかった。3時20分には切り上げて2回でコミックゼロサムを買い、駅で少し弁当を物色したがいいのがなかったので中央線に乗って新宿に出て、新宿で幕の内弁当を買い、4時の特急に乗車。その際リマインダーを見たら他にも欲しい本があったことに気づき、ホームでマケプレでポチった。今週中には届くだろうか。
前回4週くらい前に特急に乗った際には事故による遅延等があり予定外に4時の特急に乗ったのだがとても早く比較的空いていて良かったので昨日もそれにしてみたのだが、やはり空いていてのびのび座れたのと停車駅が少なくて6時7分には地元駅に着いたのでこれはいいなと思った。結局帰ってから弁当を食べたのだが、この時間だと帰宅してからも時間が使えるので(やる気の問題はあるが)いいかもしれないと思った。
***
帰りの特急ではゼロサムを読んだあと「安倍晋三回顧録」を読んでいたのだが、あまり進んでいない。第7章は2016年、熊本地震への対処から始まり、北方領土交渉へと話が進む。要はプーチンとの交渉だが、清和会はロシアとの交渉を課題として取り組んできたところがあり、安倍さんは1956年の日ソ共同宣言を根拠として「現実的に」二島返還で話をつけようとしたようだ。鳩山一郎内閣の時はそれで決まりそうだったのが日ソ接近を快く思わないメリカから「ダレスの恫喝」の横槍が入り、岸信介内閣でも四島返還の原則論へ戻ってしまった。日本としても沖縄が返還されないという事態は避けたかったわけで仕方なのだが、この時の不決着は後々尾を引いてしまっている。安倍さんはそのことを解決すべき課題として感じていたようだ。
安倍さんは見込みを感じていたのだろうとは思うが、2022年に第二次ロシア・ウクライナ戦争が始まった今となっては、というか少なくとも現時点ではこの見通しは甘かったということになるだろう。2014年のクリミア併合・ドンバス占拠以降続いている西側の対露制裁の足並みを乱すということで、オバマからはソチへの訪問を強く反対されたようだが、それを押し切って訪問したということのようだ。トランプ政権になってからはアメリカの対露姿勢が変わると予測していたようだけど、プーチンは「トランプとは話せるとは思うが、アメリカには幻想を抱いていない」と言ったそうで、結局はサイバー攻撃を理由に対露経済制裁を強めるということになったと。
トランプは2022年にロシアによる侵攻が起こったときに、自分が大統領だったら侵攻は起こらなかったと言ったが、その可能性はなくはなかったとは思う。ただその状況がどうなっていたかはわからないわけで、トランプがウクライナに対し譲歩を要求するようなことになっていたという気もしなくはない。ウクライナはバイデンの息子のスキャンダルの舞台でもあるから、トランプだったらもっと圧迫を強めた可能性はあっただろう。ウクライナに対して米露協調が成り立てばプーチンは敢えては侵攻はしなかっただろうし、ゼレンスキー政権の失脚を狙う政治工作の方向でやろうとしたかもしれない。
多くの専門家が「まさか」と考えていたウクライナへの軍事侵攻という手段を取ることに関し安倍さんに予測できなかった罪を問うことはできないにしても、ロシアや中国という国の本質が明らかになったいまでは経済協力により返還の機運を醸成するという方向では北方領土問題の解決は難しくなっていると言えるだろう。
北方領土問題はアメリカの横槍でこじれているという面もあるのでアメリカからの干渉を拒否する場面もあるのはおかしくないのだが、本質的にはソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄して侵攻し、占領したことが原因なのであって、原則論にこだわることは意味のないことではない。ただそこは安倍さんという政治家の理念とプラグマチズムの微妙なバランスの問題なのだが、妥協しながら前進していく安倍さん得意の手法がプーチン・ロシアには通用しなかったということではあるのだと思う。
***
こう考えてくると、第二次世界大戦の決着というのは78年経ったいまでもまだ完全にはついていないのだなと思う。78年というのは、明治維新から敗戦までの年月と同じだ。そして第二次世界大戦後の世界は米ソ対立、つまりイデオロギーの対立の時代だと思われていたけれども、冷戦終結後も中露が権威主義国家として自由主義圏と対立関係にあることを見れば、その対立の本質は実際にはイデオロギーだけではなく、国家観の違いにあったということなのだろうと思う。
こうなると返す返すも残念なのは、1920-30年代に英米の自由主義諸国の側につくのではなく、ドイツやソ連と接近する方向を選んだことで、日本自体が権威主義の方向(ファシズムというよりは権威主義といった方が実態に則していると思う)へ行っていたことは事実なのだが、少し考えていて大正末期から昭和初期にその分岐点があったのだろうと思う。
日本の権威主義傾向への傾斜が特に顕著になったのはこの時期だが、その対立の本質は「武」を扱う軍部とそれに接近した新官僚たちと、「文官」たち、すなわち政党政治家や自由主義的な官僚の対立ということなのではないかと思うし、ということはつまりは秀吉の時代にあった武断派、加藤清正や福島正則たちと吏僚派、石田三成らの対立と構図は似ているように思う。文官と武官の対立というのはおそらく結構普遍的なものだと思うのだけど、それにさまざまな要素が加わってあのような対立になったのだろう。
そして大きく方向性を変えたのは「政党政治家の腐敗」や「財閥の貪欲」などの批判もあったけれども「張作霖爆殺」であるとか「満洲事変」などの軍部による政府の意向を無視した特殊工作によって状況が動かされてしまったことが大きいように思うし、また一部の軍人によるテロリズム・クーデターの試みも逆説的に「軍人を抑えられるのは軍だけ」ということになってバランスが崩れていったのだろうと思う。つまり、国家としての統制が取れていなくて、またバランスを取ろうとしてより傾いていってしまったということで、それは明治憲法をはじめとする国家形成過程で定められた国家組織そのものの在り方の問題だったと言えるだろう。
現憲法においてはこうした問題はかなり解決されていて、内閣総理大臣に権力を集中させることで自衛隊も組織上総理大臣の統制下にあるから、戦前のような試みはできないし人事的にも更迭が可能なのでそういうことが起こる可能性は低くなっている。つまりはシビリアンコントロールということだが、それが導入できたという点においては優れていると言えると思う。
こうした仕組みがなぜ明治憲法になかったかといえば軍部を育成した山県有朋が伊藤博文らの干渉を嫌って組織の独立性を高めたということもあるのだけど、元々が「江戸幕府」を倒して出来た政権だから天皇に変わって文武両面で全面的に政権を牛耳るような「幕府的組織」に強い忌避感があったということもあると思う。今となってはもう遠い問題なのだが。
こういうことを考えると日本国憲法をやめて帝国憲法に戻せというような主張はそれはそれで難点があることは確かで、「ぼくの考えたさいきょうのけんぽう」ではなく、より難点の少ない憲法を歴史的な失敗を踏まえて検討した国制の再構築から考えて作っていかなければならないのだろうと思う。
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