寒い朝、カラスの大群が/「貴族とは何か」イギリスの融通無碍な貴族院改革と日本への貴族院制度の導入
Posted at 23/02/16 PermaLink» Tweet
2月16日(木)晴れ
天気はいいが、気温はかなり低い。最低気温はマイナス8.5度。8時現在でマイナス6.9度まで上がって来てるが寒いことは寒い。
朝、作業場の天井がどんどんするのでカラスかなと思って外に出てみたら、斜面と畑に無数のカラスが集っていて驚いた。私が手すりをカン、とやると一斉に飛び立ってどこかへ行ったが、この集団がいたら流石にうるさいな、とは思った。
昨日は確定申告の書類を税理士さんのところに持って行った後、半年点検に車をディーラーに持って行き、待ち時間の間に「ランドリオール ガイドブック」を読了して、「貴族とは何か」を読んだ。その後書店とスーパーに寄って昼食を買って帰った。
今日は今週の週日で唯一午前中に予定のない日なのだが、ブログを書いたり自分の身の回りの片付けをしたりした後で今日出る新刊と銀行の用事を済ませて昼食を買い、帰ってきて実家の中を少しどうにかする予定。いろいろなことがなかなか思うようにはいかないが、一つ一つ、少しずつ、なんとかしていこうと思う。
***
「貴族とは何か」読んでいる。第3章のイギリスのところを読み終え、第4章の日本のところに入っている。イギリスの貴族たち、特に貴族院の制度は何度も大きく変わっていて最近では労働党のブレア首相による改革も大きなものだったのだが、かなりドラスティックな改革が繰り返されている一方で没落していく貴族もあれば生き残っていく貴族もあるし、事業家や金融業者などでも爵位を獲得して新しい貴族層が日々作られていて、労働党の議員経験者の中から貴族に叙爵されるものもあるなどその多様性がすごいなと思った。
ブレア改革まではイギリス貴族院=上院は控訴院、つまり最高裁判所も兼ねていたので、そのために法律家が一代貴族として任命される、というようなこともあったが、これはまだわかるのだが「一代庶民」というのもあるというのを知ってちょっと笑ってしまった。
これはつまり、叙爵すると同時に貴族院議員になるからなのだが、そうなるとそれまで庶民院(下院)議員だった人は下院の議席を失うわけである。イギリスでは時代が降るにつれて下院の優越が法制化され、また19世紀末のソールズベリー侯爵以降は貴族院議員として首相になることは無くなった。
労働党の議員が叙爵して世襲貴族になった人物の息子が貴族制廃止を唱えて下院議員に当選したが、父親が死んで爵位を継がざるを得なくなり、爵位返上を申し出たがそれも叶わなかったので「その人物一代の間は貴族身分を放棄し、死んだら子供が爵位を継ぐ」という制度ができたのだという。
これは保守党で首相を務めたアレック・ダグラス・ヒュームの例もある。彼はもともとヒューム伯爵として貴族院保守党の指導者であったが、首相に指名されたので爵位を放棄して下院で立候補して当選し、首相に就任したのだという。こういうその時その時でかなり強力な便法を使うところがある意味イギリスの凄さだなと思うし、貴族というものを生き残らせようとする強い意志があるのだなと思う。
私がこの章を読んでいて一番印象的だったのは、まさにこういう繰り返される改革そのものであり、かなり抜本的な制度的な改革が何度も行われていることだ。日本でも省庁改革などはブレアと同じような時期に進んではいるが、議会の制度を一気に変えるような改革は憲法改正も必要になるだろうし、そう簡単ではない。
しかし、イギリスでそれができるのはつまりは「イギリスには成文憲法がない」という強みでもあるのだろうなと思う。またアメリカでもかなり大きな改革を憲法を改正、というか追加・「修正」して行うけれども、例えば上院が全米各州選出の2人を構成員として、50州ある現在では定員が100人になっている、というような根本的なことは建国以来全く変わっていない。日本では憲法改正は帝国憲法が日本国憲法に変わった(変えられた)時の一度だけであり、敗戦と占領というとんでもない状況だからこそ行えたもので、憲法改正のための国民投票法ですらつい最近できたばかりだというのはイギリスとは大きく違うなと思う。
それはまたイギリスに根付く「コモンロー」思想のなせる技だろうとも思う。日本は基本的には大陸法的な法源があって初めて成文法ができる、というようなところがあるが、それに戦後は英米法の自然法思想が継ぎ木されて現代の法体系ができているように思うが、背景にある自然法思想みたいなものが日本にはそう強いものがないし、あるという前提で動くと党派的な運動に取り込まれる危険性が高いので、なかなかこうはいかないだろうなと思いながら読んでいた。
第4章は日本の華族制度・貴族院制度などについて読んでいるが、華族制度については浅見雅男「華族誕生」などを読んでいるので、ある程度は知っていたのだが、貴族院制度については勉強になるなと思いながら読んでいる。貴族院制度、つまり華族を政治への参加を義務付けるという発想は、もともと木戸孝允から伊藤博文に受け継がれたもので、自分が公家出身である岩倉具視は同僚をよく知っているということか、この制度には強く反対したというのも面白いなと思った。
もともと日本の華族はイギリスのような大土地所有の世襲貴族がそんなにいたわけではない、大名という「諸侯」もつまりは自分の封土では王様であって、「土地所有者」ではなく「領主」であったわけだ。彼らは版籍奉還によって領土を返納させられたわけだから、財産は極めて限定されたものになったわけだ。また公家たちは中世以前の荘園などは全く失っているわけで、大名華族に比べて極めて小さな財産しか持っていなかったし、京都で外国などに目を向けずに育った彼らが「国政に参加する」などとはあり得ない、というのが岩倉の考えだっただろう。
貴族院の動静についてはあまりちゃんと調べたことがないので初めて知ることが多いなという印象で、243/279ページまで読んだのだが、この辺りを知れるともっと面白いだろうと思う。
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