「2.5次元の誘惑(リリサ)」131話「君たちは何をしたいのか」で語られる創作論と、創作そのものがつなぐ「夢」
Posted at 23/02/04 PermaLink» Tweet
2月4日(土)晴れ
今日は立春。まだ冷え込みは厳しいが、少し朝明るくなるのが早くなってきたような感じがある。まだ、心持ち、という感じではあるが。
昨日は午前中母を病院に連れていき、その後でツタヤでジャンプコミックスを数冊買ったがないのがあったので他の書店に周り、「てるてる建設」2巻と「全部ぶっ壊す」6巻を買った。「全部ぶっ壊す」は面白かったのだがこの6巻が最終。確かにネタとしてはこのくらいで全力を出し切った感じはあるのかなと思ったが、またこの作者さんたちがどういうものを書くのか楽しみにしたい。ストーリー?も絵も好きだった。
なんとなく最近疲れていて、というかよく眠れなくてどうもパッとしないのだが、昨夜は比較的よく眠れたのだけど、睡眠時間自体は5時間弱くらいで、ちょっと少ないかなという感じ。でも起きた時に「眠れた感」があったのでよかった。
朝起きてさてやることはたくさんあるがどうしようかと思い、そうか土曜日だなと思ってジャンプ+で「2.5次元の誘惑(リリサ)」を読んだのだが、とても面白くて一通り読んだ後でその時点で投稿されている感想を全部読んだ。8時9分の時点で投稿数が852になっているが、私が読んだ5時過ぎの時点でも800近くはあったのではないかと思う。
https://shonenjumpplus.com/episode/4855956445047391266
読んでいただければわかるが、今回のテーマは創作論。前回の翼貴ちゃんがらみの話では「二次創作とは何か」みたいな話が出てきていたけれども、今回はガッツリと「人はなぜ作品を作るのか」というところに踏み込んでいる。
結論としては「何を」「なぜ」作りたいのか、ということが重要だということで、今までの話は基本的に「コスプレをする理由」みたいなことがずっと語られてきていて、どちらかといえば「なぜ作りたいのか」、つまり「コスプレをする動機」のようなことがずっとメインテーマだったように思うけれども、今回のエリカと奥村のやりとりでは「何を」が、つまり「作品に込める意図」がない、という指摘をズバリ受ける。
今まではリリサがコスプレをする動機、意図みたいなもの、またリリサが何を意図してコスプレ衣装を作っているのかということは語られてきていたと思うけれども、ROM(CDorDVD-ROMに収録したコスプレ写真作品集)を作るとなるとその写真を撮る側の「動機」と「意図」も重要になってくる。奥村は頼りになる部長であり先輩であるのだけど、「みんなにコスプレを楽しんでもらう」「リリサの夢をサポートする」という動機はしっかりあっても、「どういう作品を作りたいか」ということを考えていなくて、そこはリリサにお任せだった、ということに気づかされてしまうわけだ。
「奥村くんは何で撮ってるの?」と聞かれて、「リリサの夢に乗っただけ」と応える奥村にエリカは「若いのに自分を守らないんだなあ」というのだが、つまりはそこが足りないんだよ、弱点なんだよ、といってるのだということが後でわかる。
リリサ自身も「どういうROMを作りたいのか」というヴィジョンがないのでスランプに陥ってしまったのだが、奥村も「リリサがスランプを抜け出すのを待つしかない」と構えていたが、奥村は「何を作りたいのか」を「「自分の問題」としてとらえていなかった」ことに気がつく。
「俺が撮りたいリリエル・・・」と言葉にし、恐らくはそれがエリカの意図した答えだったのだけど、奥村はさらに「二人で撮りたいリリエル。それをハッキリさせないと前に進まないんだ」という。
そして「俺が無責任でした」という奥村に、エリカは本当に心を打たれている描写がとても良くて、「リリサと話してみます。二人で作りたいROMの話」という奥村に、エリカは「リリサちゃん良いカメラマンを引いたなあ・・・それとも彼が鍵だったのか」と感動しさらに二人に対して関わりたい欲望を刺激され、自分たちが撮影のためにファンタジーっぽい場所に行くのに一緒に行かないかと誘う。それはエリカがいう「コスプレで目指すゴール」と関係があるようなのだが、それはまだ明らかにされていない。
エリカが語る創作論は、感想を読んでいると「すごい!」という人もあれば「ここは違うんじゃないか」という意見もあり、「藝大出てるから考えたことある」という投稿もあれば「左利きのエレンやブルーピリオドなど(他のアート系マンガ)を読ん出る感じ」という意見もある。
ただこの作品でのこのテーマに関する説明はとてもよくできていると思うし、かなり文字は多いけれどもこなれている。こういうことを描こうとするなら毎週更新の連載では無理だろうなと思う。ネーム(マンガの作品の内容のプラン)を書く段階だけで1週間はかかるだろうから。
作品というものは遥か昔から作られているわけだし、創作論についてもやはり遥か昔からああでも内向でもないと語られてきている。だから創作論というものは全くオリジナルというものはあり得ないし、そういう意味では誰が創作論を語ってもある意味「創作論という二次創作」でしかないということはある。
そして、だから価値がないということはないわけで、その時代によって、その書き手によって、本質の掴み方やその人の個性を反映して何を大事にするべきか、どこを強調したいかは変わってくる。「人は言葉でしか考えられない」というのは全くそうで、「言葉でしか考えられないし説明できない」わけだ。まあ、漫画とか絵というものはそれを超えた考えや説明も可能だという考え方もあり得るが、それはそれをある種の記号として扱っているという意味で、記号=言語であると考えれば同じことになるだろうなと思う。
それを「言葉の綾」といっているけど、抽象化することで起こるリスクみたいなことと言えるし、問題が混在してしまうことで本質がわからなくなるということでもある。
そしてそこに深入りしすぎないで奥村とリリサが今どういう問題に直面しているのかを正面から指摘し、奥村はその指摘をさらに超えて「二人が作りたいもの」という発想に至るのは、逆に言えばエリカが「自分が作りたいもの」をユキに「協力してもらって」作っているということに対する気づき、自覚、ある種の痛みみたいなものも感じられて「二人=コンビで作ることの本質的な意味」みたいなものが立ち現れてくるように思う。
そこまで考えてみると、エリカが奥村たちを撮影に誘ったのは、リリサと奥村が二人であーでもないこうでもないと議論するところをユキに見せることで、「コスプレをやめたい」といっているユキに対するメッセージにしたい、という意図があるのかもしれないと書いていて思った。
こういうところは本当にジャンプ漫画として王道だなと改めて思うのだけど、今後の展開にさらに期待したいと思う。また、創作そのものが「夢」であり「夢の実現」であるのだけど、そこに挑み続けて「夢」につないでいくことで、立ち現れる素晴らしいものが無限にあるのだなとしみじみと思ったのだった。
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