日本保守の源流を考える/保守とは何か/存在意義のある保守思想とは何か
Posted at 23/01/22 PermaLink» Tweet
1月22日(日)晴れ
今の気温はマイナス6.8度。かなり冷え込んでいるのだが、風がないせいかそんなにめちゃくちゃ寒いという感じはしない。ただもちろん外に出るとかなり冷えているのでほとんど外には出ないのだが、それでもセブンに行って温かいお茶など買うなどした。今朝は早めに出かけるので準備もしなければいけないのだが、まずはブログを書いてから。
日本の保守にとっての一つの拠り所は天皇=皇室だと思うが、それがどういう存在であるかというのを少し考えてみる。
北畠親房「神皇正統記」にあるように、「大日本は神国也」というのが一つ重要な要素だろう。近代化されたインテリ保守にとってはどうなのかよくわからないが、子どもの頃から神話や民話、あるいは古事記(子供向けのものも含めて)などに親しんできた私などにとっては割とビビッドに「日本には日本の神がいる」というのは当たり前のこととして感じられる。そんな中で神々から連なる系譜を持つ皇室というものの存在は一つ神々の国であり言霊だけでなく様々なもののさきわう国であるということを証明して見せているように感じられる。これは昭和天皇がいわゆる人間宣言で否定した部分でもあるけれども、それは戦中の行き過ぎの是正というように考えることも可能だろう。
ちなみに神話から系譜が連なるのは何も皇室だけではなく、例えば諏訪大社の大祝・諏方家もそうだったのだが、こちらは21世紀初頭に子孫が絶えた。同族の旧大名・諏訪家は存続しているので血統全てが絶えたわけではないのだが。
こうした中で神々の中心になるのは天地が初めてひらかれた時に現れた造化三神、神々の祖である伊弉諾・伊弉冉の二柱の神、そして皇室の祖である天照大神という神々になる。神々の系譜については少し前に読んだ「アマテラスの誕生」が面白かったが、東アジアの古代文化の交流の中で様々な神が覇権を争ったというのはそうだろうなあと思う。その争いの一つが「仏」という新しい「神」を導入するかどうかの争いだった、ということなのではないかと思う。
宇宙の起源神としての天之御中主命、神々の起源神の伊弉諾伊奘冉、皇室の祖先神の太陽神・天照大神、そして初代天皇である征服王・神武天皇。天上のドラマと地上のドラマの対比として神話は語られ、地上(出雲)に降りた素戔嗚尊の子孫が日本を統治していたが、やがて高千穂に降りたアマテラスの子孫にとって代わられ、本拠を大和に移す。これは今思ったけれども、「征服」よりも「移動」に含意があるのかも知れない。ゲルマン民族もそうだが、彼らは制服の意図を持ってヨーロッパに侵入したわけではなく、移動だったわけで、天孫降臨3代後の神大和磐余彦命も九州南端の日向よりもより豊かな土地と見た大和に移動した、ということかも知れないと思った。
十代の崇神天皇あたりのエピソードはかなりローカルなものが多く、ただそこを起点にまた四道将軍や景行天皇、日本武尊、神功皇后といった征服的なエピソードが始まる。垂仁天皇のエピソードなどは当麻蹴速と野見宿禰の相撲の話や非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)の話などある種の平和的なエピソードが多いのだけど。
この辺、書き出したら少なくとも自分は面白いのだが書こうとした本旨とはかなり異なってくるのでまた改めて書きたいと思う。
まあつまり大和に本拠を定めた初代天皇が神武天皇であり、日本列島内の統一の動きのエピソードはさ二歩ざまあって、ただ後世から見て次に重要なのは聖徳太子ではないかと思う。
聖徳太子は中国に形式上対等に使者を送るという東アジア史上におけるいわば一つの外交革命をやったわけであり、独立国としての日本を主張したことは確かかなと思う。憲法十七条などの文言の後世に与えた影響も大きい。戦前期もよく「詔を承りては必ず謹め」、「承詔必謹」などという言葉はよく使われていた。
次に重要なのは平安朝を開いた桓武天皇だと思うが、その祖ということで天智天皇も含めて皇室の菩提寺・泉涌寺では供養が行われているという話を聞いた覚えがある。
ただ現代保守的に重視されるのは醍醐・村上の両天皇。この時代は天皇親政の理想的時代だったとされ、後醍醐天皇の建武の新政もそれが目標だった。中世に重視されたのは聖代と言われたこの時代であったが、より大元に帰れということで延喜天暦よりも神武創業を重視したのが玉松操だったわけだけど、後醍醐天皇の試みが幕末の王政復古の一つの手本と考えられていたこともまた間違い無いだろう。
こうして改めて考えてみると日本保守の源流というのはかなり膨大な話になる。明治以降も主に明治政府に反対する人たちの思想の多くが右翼や保守、反動と言われる流れの源流にもなっているし、戦後もアメリカの占領と民主化に対する反発としてのナショナリズム・右翼運動というものもあった。当然ながらそれら一人一人の考えは皆異なるわけで、それらを保守と一括することはなかなか大変ではある。当時鋭く対立した西郷隆盛と大久保利通にしても、その両者それぞれの思想もまた現代においては保守の源流と考えられるということにもなる。
フランス革命で言えば、王党派・立憲君主派(フイヤン派)・穏健共和派(ジロンド派)・急進共和派(モンターニュ派)とあったとして、王党派は文句なく右翼保守派でありモンターニュ派は左翼急進派だったがジロンド派はモンターニュ派から見れば反革命右翼であるし、王党派から見たら「王殺し」の許せない革命派だったわけで、保守というものを一まとめにするのは結局党派的なものの見方の反映でしか無いという一面もある。
しかしとりあえずは「現在の急進派」に対してその流れを止めようとするのが保守派ということになるわけで、そういう意味では保守派は常に野合であるわけだが、ただそれぞれがそれぞれの保守主義(多くは自分のことを保守とも思っていないと思われる)を持っているわけで、急進派が示すテーゼに対して明確なアンチテーゼ、代案を示すことができるということが重要なことだろうと思う。だから日本の進むべき未来として「私はこう思う」というものを示せる保守というのが存在として意味があるし重要なのだろうと思う。
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