「わたしの保守主義」についていろいろ書いてみる
Posted at 23/01/12 PermaLink» Tweet
1月12日(木)晴れ
本当に毎日よく晴れるな。しかも今日は移動性高気圧が日本列島上にある春のような気圧配置だから、放射冷却は結構すごくて今(8時10分現在)でもマイナス5.6度なのだけど(最低気温はマイナス7.7度)、昼間はだいぶ気温が上がりそうだ。当地の予想最高気温は10度。これはほぼ3月の平均。
保守主義の本を書く、ということを考えているのだけど、とりあえずどういうことを書くのかと考えてみると、保守主義の理念というかテーゼみたいなことを書いていくのかなと思うが、まあいろいろ思うところはある。それぞれ思いついたことを断片的に書いてみる。
***
民主主義や社会主義、共産主義などの理論は基本的に設計主義なので、例えばロックなどでも、架空の民主主義国家成立の経緯を描いてそれを前提にして話を進める。ホッブズならまだ「万人の万人に対する闘争」という手応えのあるイメージをもとにその闘争を防ぐために君主に権利を移譲する、という話を展開するわけだが、ロックの方は現実的な手応えが感じられず、理念の概念操作みたいな感じがして、そんな前提で現実に対応していくのは無理があると読んでいていつも思ってしまう。これはハーバーマスもそうだしロールズもそのようなところがあり、こういう議論の展開はどうも得るものがあると感じられない。
これは基本的に「方法的懐疑」というデカルトの思考実験から似たような展開を使うようになっていると思う。その思考実験で見出された人間とは何かとか社会とは何かといったものをより良くしていくためにはどうしたら良いか設計していくという架空の上に架空を重ねる思考によって思想が組み立てられているように見える。
保守主義の考え方は当然ながらそういうものを否定するところからスタートするのだけれども、西欧方面からの保守主義の思考はデカルト的思考を「人間社会を考える上では」否定したヴィーコの思想からスタートすることになるのだと思う。
方法的懐疑も「何が否定できないか」と考えて全てを否定した上で自己を肯定し、そこから全てを組み立てるというある意味気持ち悪い思考なわけだけど、ヴィーコを踏まえた上でのでカルト批判というのは必要になってくるのだろうなと思う。デカルトを批判することでその延長線上にあるカントらの批判にもつながるのだと思うが、カントを批判するのはちょっと面倒そうでその辺はまだ構想が思いつかない。
また思想書というのは読んでいると、その当時の個別具体的な問題が論じられていることも多い。だから現代における種々の問題もそれを取り上げていくことで思想の立体的な深みのようなものを描くことにつながるのではないかと思う。
また、現代における保守というのは例えば明治時代の保守とはかなり違うものになるだろう。保守は基本的に反動主義とは違い特定の「帰るべき望ましい故郷のような世界」は想定しにくい。個々の思想家にそういうものはあるとしても、保守思想全体を貫く「帰るべき場所」が必ずしもあるとは言えないだろう。また保守は伝統と密接に関係してくるから、日本における保守とヨーロッパにおける保守とでは宗教との向き合い方において全く違ってくるだろう。ギリシャローマの古典思想とキリスト教思想が伝統であるヨーロッパと神道・儒教・仏教がその大きな思想的根幹である日本の伝統思想とは社会に対するあり方も考え方も全く違ってくる。
そういう意味で、「日本における個人主義」というものをどのように捉えるかなど、自分が構想する思想を考えてみると従来の伝統思想とはかなり違うものが出てくる感じはするし、一般に現代人が考える保守思想というのはやはり個人主義をどう捉えるかは大きな問題になるだろうと思う。
安易に日本の思想と西欧思想を融合して、みたいなことを言うのは難しいし、自分自身において何をどう取捨選択するかしかないのではないかと思うけれども、それでも一般的にこれはこうではないかみたいなことを考えることはできるわけで、まあなぜそれをそう考えるかと言う根拠とともに、考えていくべきことはいろいろあるなと思う。
だからいわゆるリベラル、少なくとも明治時代には相当リベラルだった考え方が、現代においては保守的となる場合もあるし、また「若年女性を保護する」と言うむしろ家父長制的な保守的な思想が過激なフェミニストによって主張されるような倒錯も起こってきているわけで、こうした現代思想の混乱に対してどう言う視点を持つか、と言うようなことも保守の立場としては重要であるような気がする。
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あと、リベラル思想との根本的な違いという意味でいえば、話はルネサンス時代に遡るけれども、当時起こった新しい思潮は人文主義 humanim、英語で言えばヒューマニズム、フランス語読みすればユマニスムと言うことになるが、元々はギリシャローマの古典研究から始まったわけだが、キリスト教優位の時代においてはその研究そのものが、神に対する人間の主体性を主張することにつながっていくわけだ。カトリック教会の強力な理論はそうした研究に十分抑圧的だったのだけど、人文主義の研究が盛んになるとカトリック教会に対する理論や現実両面における批判も起こってくる。西欧における様々な学問がそれぞれある種硬質な強度を持っているのは、カトリックの理論と対抗しなくてはいけないという要請が最初から強くあったからだろう。
時代が降るに次いれて啓蒙主義の時代から科学主義の時代に入って19世紀末には神は死んだと言う思想も出てくるわけだが、思想においてそう言うことが叫ばれても現実面で宗教が力を失ったわけではない。というか人間にとって理屈ではどうにもできない部分を支えるものが宗教であったわけだから、世の中が複雑になればなるほど宗教の必要性は増す、と言う結果にもつながっていくわけだし、より大衆にとって理解しやすい宗教が求められるようになる、と言うこともあったわけだ。
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保守主義と進歩主義のスタンスの大きな違いの一つは、よくわからない非合理的な制度などがあった時に、進歩主義はそれを批判し、否定して新しい合理的な制度を作ろうとする考え方で、保守主義は理由のわからないものが存在する時にはとりあえずそれが存在すると言う事実を重視して保存する方を選ぶ、と言うところにある。もちろん全てがそうなるわけではないが、つまり進歩主義が「いま・ここ」にいる人間の理性や経験、理念だけを重視して決めれば良いと言う考え方なのに対し、保守主義は歴史を尊重し、「今までの人たちが必要だと判断したこと」も含めて考えていこうという姿勢だと言えば良いのだろうと思う。進歩主義はすぐラディカルになりがちと言う弱点があり、保守主義には退嬰主義に陥りがちという弱点はあるのだが、現代において進歩主義に破壊されたものの多さを考えるとき、守って行ったほうがいいものについてはより重視して考えていくべきだと思う。
その意味において宗教感情であるとか神聖感情のようなものはまさに不合理なものであって、それとどう付き合うかというのは大きな問題だし、「保守」ないしは「反左翼」を称している人たちの中にもこうした非合理的な思考に対し極めて否定的な人たちも多い。しかし自分としてはそうした感情こそが人間を人間たらしめている部分でもあるように感じるところもあるから、そこは大事にして行った方がいいと思うし、またそれについても考えておきたいと思う。
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今考えていることをいろいろ列挙してみたが、そんな感じだろうか。
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