議論が成立しない傾向の強まり/間違っている思想や考え方に価値はないか/「進歩の副作用」と「保守思想にできること」
Posted at 22/12/15 PermaLink» Tweet
12月15日(木)晴れ
よく晴れていて、よく冷え込んでいる。とは言えまだマイナス2度くらいなのでそんなにめちゃくちゃ寒いということもない。ただ、私はいろいろな場所で仕事をしたりしているのだが大体自分しかいないことが多いので、そこにいくたびに暖房をつけなくてはいけなくて、暖まるまで寒いなーと思いながら仕事をすることになる。体を動かす仕事ならまだいいが、文章を書いたりするのは寒いとなかなか大変な部分があるので困る。
昨日は午前中に会計の仕事があり、午後に管理している場所の植木の剪定の人が入り、その合間にタイヤ交換に行ってきたのでかなり忙しかった。自分一人で片付く仕事なら自分のペースでできるのだが、人に依頼してやってもらう仕事はなかなかこちらの想定通りに進まないのでその分仕事が増えたりする。昨日はタイヤ交換に行ったらやはりスタッドレスタイヤが摩耗しているので新しいのに換えた方がいいと言われ、またかなりの出費になった。それで終わりかと思ったら壊れている箇所が見つかり、とりあえず乗ってはいられるが修理が必要だと言われて帰りに車検に出している整備場に寄ったら2万円くらいかかると言われてうわっという感じになった。まあ古い車に乗っているということはそれだけお金がかかるということではあるのだが、買い換える余裕もないので困ったことだなと思う。
まあ何というかいろいろだ。
***
朝目覚める頃、寝床の中で何かの作品(多分マンガ)の内容について、間違った内容、あるいは結果的に間違っていた本や考え方に価値はあるのか、みたいなことをなんとなしに考えていたのだが、そのテーマは覚えていたのだけどその対象になった作品が何だったのかわからなくなった。こういうことはよくあるのだが、その本自体が実在の本かどうかもよくわからないので考えようも調べようもない。その時の自分の心の中では随分切実な話だったのだけど、そういうものもスルッと忘れてしまうのが眠りと覚醒の境目ということなんだなと思う。
例えば私はフェミニズム、特に最近のラジカルなものや朝田理論的なものについては「間違っている部分が多い」と思っているのだけど、それはそれを信じている人たちにとってはそう指摘されることは辛いだろうしそれに固執したりすることもあるだろうなと思う。マルクス主義は間違っていたのでは、みたいなことを言ったりすると、やはり自分より年配な人たちは元気がなくなる人が多い。今、年配の教養があると思っていた人たちの中にロシアの行動を理解したり支持したりする人たちが結構見られるのもある意味でのそういうことの反動なんだろうと思う。
逆に、最近の自衛隊に対してはある種ネトウヨ的な考え方がそれなりに浸透してきているという話も読むし、また降って湧いたような「防衛力強化のための増税」という議論も、史上最高の税収という状況の中でさらに財務省は増税を進めようとしているということでちょっとどうかと思うが、やはりここは妙に頑なになっている人たちがいるんだろうなと思う。
左翼の人たちの議論に対して素朴な疑問だとか常識的な反論をしてみると居丈高なシャットアウトが帰ってくるというのは最近増えていて、フェミニストやポリコレの人たちは以前から議論が難しいところがあったけど、最近は普通のリベラルという感じの人の中にもそういう感じの人が増えてきた、昔はもっと話が通じたのにな、という感じになっているように思う。
何というか、まあこれは私から見ての話になるのだけど、「本当は間違っていることに気づいている」けど「もう引けない」と思ってるからそういうふうにシャットアウトする人たちは結構多いのではないかなという気がする。左翼も、ネトウヨも、財務省も。思考が硬直化し議論ができなくなってくるというのはある種の民主主義の危機なのだけど、全般にそういう傾向が強くなってきているように感じられるのは残念だなと思う。
まあこの辺難しいのだが、間違った議論でも全く価値がないかと言えばその過程でそれなりに意味があることはあるわけで、マルクス主義の理論全体は地球上にかつてない惨禍をもたらしたとは思うけれども、資本主義の分析などについていまだに取り上げることに意味がある議論はなくはないと思う。
フェミニズムやポリティカルコレクティズムなども、その議論の中には面白いところもなくはないのだが、これは思想というよりも行動、運動の形態としての強硬さに大きな問題があって議論を難しくしているところが問題なのだと思う。思想自体も間違っている部分はあるように自分には感じられるが、人間観察的なところで面白いなと思う部分はゼロではない。ただ、声の大きな強硬な態度の人たちが目立つのでそういうプラスと考えられる部分が見えなくなり、強硬な押し付けに対しては強い態度の拒否しかない、みたいな感じになっているからその辺は何とかした方がいいとは思う。
まあこんなことを書いているのはジェンダーを扱ったマンガというものが自分は実は嫌いじゃない、というか結構読んでるので、自分の感心領域ではあるのだけど、フェミニズムの理論やLGBTの運動にはげんなりさせられているので、それに近づきにくくなってる感じがとても残念だということなのだろうと思う。作品の例としてはこのブログでも取り上げている「ぼくらのへんたい」や、最近完結した「性別モナリザの君へ」なのだが、逆に読み始めたけどそのフェミニズム臭に当てられて読むのをやめた作品もあり、そういうのはテーマは面白いのに違うアプローチをすればいいのになという感じがした。
まあ人類の歴史の中には膨大な「結果的に間違っていた」みたいな知識やその体系がたくさんあるわけなのだけど、地球平面説みたいななぜそんなものが?と思う考え方がリバイバルしたりすることもあり、逆に「科学」というものはその「正しさ」に寄って権威を得てきたということがあるので「正しさ」を失うことを極端に嫌い、正しくないと判明した(あるいはそういうことになった)ものは直ちに捨てられ新しいものに入れ替えられるけれども人々の意識や身体は必ずしもそれにはついていけないということもあるから、科学の進歩、いや人間社会のさまざまなものの進歩のスピードが早くなればなるほど、それらのものと社会や人間性というものについての摩擦や軋轢が大きくなるのは致し方ないし、それを補償する常識的に考えたら珍妙な議論が出てくるのも「進歩の副作用」のようなものなのだろうと思う。
「保守」というのは自分の中では「設計主義的な革新思想」に対するアンチテーゼなのだけど、こうした「科学的・技術的な急進性」みたいなものについてもある程度ブレーキになる思想はあった方がいいという気もしてきた。それは例えばクローン技術などについては今までも言われているけれども。
日本で最も反進歩主義的な統治思想が強かったのは江戸時代かなとは思うが、その辺のところの理論的裏付けなどはよく理解していない面が大きいのでここでは書かないけど、原理主義的な復古思想というのはすぐに極端な革新に転換するという傾向もまたあるから、そうではない保守思想の系譜みたいなものはなるべく辿っていければいいなと思っている。
保守思想にできることがあるとすれば、本来はこうした議論の硬直化と軋轢の増大化に対し、一度常識に戻って考えてみようと提案することだと思うのだけど、自分自身もまだ十分に理論構築ができていないし日本の保守思想家全般もまだ広範な共感を得られるような思想構築に成功していないように思われる。アメリカにおいては「社会正義はいつも正しい」(原題は"Cynical Theories How Activist scholarship made everything about race, gender, and identity - and why this harms everybody")が正当に評価されるだけの常識的・保守的な基盤はちゃんとあるように思われるのだが。
ただ日本が日本であるためには、また人類社会が人類社会として存続するためにはそうした思想は必要不可欠だと思うし、その辺のところを自分ができる範囲でしかできないが、なんとかしていきたいという気持ちはある。
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