ジャンププラスの強み/「頼山陽の思想」:「思想を欲しがる人たち」に答えた「顕教としての日本外史」と「忘れられた密教」
Posted at 22/11/25 PermaLink» Tweet
11月25日(金)晴れ
昨夜は報道ステーションでワールドカップ・ドイツ戦勝利関連のニュースを見てからわりと早めに寝たのだが、目が覚めたのが3時半でどうも二度寝もできない感じになったので起き出して、朝の仕事をいろいろ片付けた。寝る間に今朝のTO DOをまとめておいたのがよかったらしく、あまり頭がごちゃごちゃしないで物事を片付けられた印象。こういう感じでやってみるか。
つらつらと思ったことなど。ウェブ漫画といえばジャンププラスが独走しているが、他にもいろいろサイトはあって、ただジャンププラスほど見やすくないので習慣的には見に行っていないという感じ。ジャンプラの前から読んでいたDモーニングは今でも読んでいるが、これはモーニング本誌をサブスクで読めるというものなのでD独自の作品はそんなにはなく、ウェブ漫画に入れていいものか迷う感じはある。
ジャンププラスの良いところは読みやすさということもあるのだが、感想を投稿できるところもかなり良いと思う。アプリ版とウェブ版があるがアプリ版の方が読者数は圧倒的に多いだろう。感想数もアプリ版の方が何桁も違う感じだ。
ただ私が読んでいた初代iPadAirではもうiOSの更新が止まっているので先日の更新で読めなくなった。今は2代目SEのiPhoneで読んでいるが、やはりiPadほどの大きさがないので目が悪いせいもあり読みにくい。MacBookAirでウェブ版を読んでiPhoneで感想を投稿、みたいなことをやっているがなるべくアプリは古いOSでも対応してもらえるとありがたいのだがなあとは思う。まあ新しい機種を買えばいいといえばそうなのだが。
Dモーニングも読んでいて面白いと思うことはしょっちゅうあるので、「感想を書きたい!」という欲望が生じるわけだがこのアプリには感想を書くところがないのでぐぬぬ、となることもままある。その辺のところは幅広く考えてもらえるといいのだがなあと思う。
***
「頼山陽の思想」第2章第2節第2項「権力の把持」読了。この項の後半は徳川幕藩体制の検討が行われているが、読んでいると山陽の幕藩体制理解は現代の標準的なそれの理解とほぼ同じように思われる。同時代にそれを理解し把握していたということは、山陽が透徹した洞察力の持ち主であったということだと思うし、また「理」「気」のようなイデアに属するものを見る政治哲学者ではなく、古今の政治思想や政治哲学を踏まえた上で権力構築の理論そのものを考察したかなり近代的な意味での政治学者であったということだろうと思う。
頼山陽は漢詩でナポレオンについて詠んでいたりするのでヨーロッパの歴史についての理解もない訳ではなかったと思われ、おそらくは蘭学者などとの交流もあっただろうしまた儒学を絶対視しない姿勢は国学者等との交流もあったかどうか、いずれにしても儒学を相対化する機縁がどこかにあったのだろうと思う。荻生徂徠なども朱子学を相対化しているのだが、儒学そのものの相対化のためには儒学以外のものが必要だったのではないかと思う。頼山陽は1780年(安永9年)田沼時代の生まれだが、本居宣長は彼より50年年長で、平田篤胤がほぼ同世代であることを考えると、平田がロシアの脅威を強く感じ最終的には平田神道を打ち立てたように、日本独自の学問を大成する宿願を頼山陽も持っていたのかなと思ったりした。
幕藩体制においては将軍は絶対的な君主であるけれども、それは将軍家と直属の家来である徳川四天王に始まる譜代大名たちと旗本御家人の封土と戦力があり、それに徳川・松平の親藩すなわち将軍一族が日本の国土のかなりの部分を支配するに至った結果でもある。将軍の軍事指揮権には服するが一応は独立した勢力である外様大名は仮想敵国でもあるが松平の姓を与えて仮構的な親族でもあると位置付けられているので、「一族は幕政に関わらない」という原則によって制度的に幕政から排除していた。幕政を担うのは中小大名である老中以下の小領主たちであり、彼らは「権=権力」はあったが「勢=戦力」はなく、大きな石高を持つために相応の戦力保持を義務付けられた外様や親藩の大大名は勢力はあるが権力はない、という形で互いに牽制させあって権力基盤を盤石なものとした、と山陽は称賛している訳である。
これは国内的にも良くできた制度であるし、対外的にも同じような戦力レベルの敵しか周りにいなければ塞外の敵は各地の大名が防げばいいという体勢なので、明らかに斬新で圧倒的な軍事力を持った西欧列強が日本進出を図ることがなければその後も継続した可能性はあるわけで、山陽はそういう意味では今後もこの体制を維持していくために現在の制度の価値を再確認するという目的があったのだろうと思う。
***
こうした国家体制論についてもその基本になるのは「気鋭の士」あってこそというのがつまりは山陽の基本ということになる。ここは民主主義国家においては「自由な人民の健全な国民意識」が基本である訳だから、建前として「人民」を政治の担い手として含むか「エリートである士が政治を領導し民衆を安寧に暮らさせる」という形を取るかの違いということになる。ただ、民主主義社会においても実際にはエリートが政治に責任を持つ、ノブレスオブリージュの思想に頼らざるを得ない面が強かったから、人民の政治参加の進行によってマスとして動く勢力ではあるが気概も倫理もあるとはいえない「大衆」の問題が20世紀には明確に立ち上がってきたわけだ。
逆にいえば民を政治に参加させない山陽の思想から見れば「大衆問題」というのは起こらないものだったのだが、政治化したり非政治化したりを繰り返す民衆の役割が21世紀には問題になっているわけで、左右ともそれをオルグし大衆の政治化がはかられているのが現代の先進国の状況だということになるだろう。
そういう点から見れば山陽の思想はもちろんアナクロニズムなのだけど一周回って山陽の大衆論や組織論、政治力学論といったものは現代の政治展開に全く有用ではないということはないように思われる。
SNSを見ていてもわかるように、政治的な議論を眺めているうちに思想や政治的主張に「目覚める」人は左右とも少なくない。誰が中心かもわからないような政治行動はイスラム諸国でもアメリカでも、また日本でも珍しくなくなっている。
彼らは思想を求めているのであり、特に日本においては本格的な保守の理論が十分にあるとはいえないから、長い期間の検討にも耐えるような保守の思想が求められていることは確かだと思う。
徳川時代の末期にもそうした「思想を求める人々」は下層武士や民衆の中からも草莽崛起の形で多く現れたわけで、彼らの思想に対する枯渇を満たしたものの一つが「日本外史」で尊王という原則と気概を説いた山陽の思想だった訳だろう。
ただ山陽の思想もいわば「顕教と密教」があったわけで、顕教である「日本外史」の尊王愛国の方は爆発的に普及したが密教である統治理論や権力理論などが扱われた「通議」はその時代には生かされてはいたがその真髄はすでに徳富蘇峰の時代には忘れられつつあった、ということなのだろうと思う。
この辺りのことはまた読み進めていきたい。
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