安倍元総理の国葬/宗教色を排した国家色の強い式典/菅前首相の同志愛/安倍政治を振り返って
Posted at 22/09/28 PermaLink» Tweet
9月28日(水)曇り
安倍元総理の国葬をテレビで見て、いろいろと考えたこと、思ったことがあった。
***
昨日はずいぶん早く目が覚めてしまったのだが、今朝も2時半に目が覚めた。寝たのは11時半ごろなので3時間くらいしか寝られてないのだが、トイレに行って心を落ち着けて心と体をほぐし、お腹に手を当てていたら4時まではもう一度寝られた。4時はもう起きていることも多い時間なので、起きていろいろ始めて入浴してから着替えたり少し物の整理をしたりして5時過ぎに出かけてマガジンを買い、一度戻ってもう一度車を走らせた。
ガソリンを入れてからパンを買い忘れたことに気づき、少しファミマを探して走ったのだが、少し普段と違う道を走るうちに諏訪大社の上社本宮の近くに出たので久しぶりにお参りに行った。帰りにファミマに寄ってパンとエビアンを買い、家に戻ったら6時を過ぎていた。
昨日は朝車を走らせていたら茅野の西友の交差点のところに高齢者の方々が集まっていて何をしているのかと思ったら「国葬反対」と書かれたA4の画用紙見たいのを持って声をかけていて、なるほどこれがシルバー民主主義かと思ったのだが、彼らを駆り立てる情熱が何なのか、なかなか理解し難いなと思った。
昨日は不規則な眠り方をしてしまったためか体調が変で、急に口元がピクピクしたりして困ったのだが、ググってみるとそういう顔面の痙攣はまず目の周りに出て、それと同期するように口元が震えたりするとあったので、そういえば以前から時々目の周りは痙攣することがあったからそれと関係あるのかなと思って口元や目に手を当てて温めていたら大体治った。ストレスが原因だそうなので気をつけたいと思う。
***
昼食後、なんとなくTwitterを見ていたら献花の行列のことなどが書かれていたのでそう言えばもうすぐだなと思いテレビをつけたら、ちょうど安倍さんの遺骨が日本武道館に到着するところで、そこから結局3時過ぎまで見てしまった。
国葬に際し、色々なことを見、また直前にあったエリザベス女王との葬儀と頭の中で比較したりしていたのだが、女王の葬儀は教会で英国国教会の司教により執り行われるという宗教色と古い伝統が反映された物だったが、安倍さんの国葬は憲法により国の主宰する行事では宗教色を出せないから、どのように執り行うのかというところに関心があったのだけど、基本的には8月15日の戦没者慰霊式典とか原爆忌の式典等と同じような、宗教色はないけれども荘厳な雰囲気の中で執り行われたという感じだった。
ただ、戦没者慰霊式典と違うのは、天皇皇后両陛下は御臨席されないこと。皇族方は秋篠宮皇嗣殿下をはじめとして参列されていたが、両陛下と上皇上皇后両陛下は臨席されず、勅使ならびに皇后宮使、上皇宮使・上皇后宮使を派遣されるという形になった。これは臣下の葬儀には陛下は臨席されないという先例に基づくものと思われるが、明治維新以来洗礼のない状態で上皇陛下はどのようにされるのかと思ったが、四陛下とも使いを送られるという形での対応となった。
会場の外では弔砲が十九発。これは国家元首に対する最高礼の二十一発に次ぐもので、亡き総理大臣の洗礼に則ったものだっただろう。
黙祷の際には自衛隊の儀仗隊が入場し、葬儀のしめやかさに荘厳さを加えた。日本国憲法下ではこうした儀礼に宗教色は出せないので、その分国家色が強くなるのだなと思った。
葬儀委員長の岸田総理の心のこもった弔辞の後、衆参両院議長・最高裁判所長官の「三権の長」の弔辞。これが「国葬」であることの日本国憲法下での最高表現ということになるだろう。現役国会議員の葬儀の際には、その院の代表による弔辞が読み上げられるが、これは形がほぼ決まっている。私が参列した葬儀と同じような弔辞だった。最高裁長官の弔辞はあまり例がない気がするが、それだけに形式も決まっておらず、普通の葬儀の弔辞のような形で読まれたように思う。
その後に流れた安倍総理の生前の映像はよくできていて、演奏されているピアノが安倍さん自身が弾いたものだったというラストはちょっとうるっときてしまった。また、多くの人が書いているが、菅前総理の「友人代表」としての弔辞は大変感動的で、昭恵夫人も涙を拭っている様子が映されていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA263590W2A920C2000000/
菅さんが銀座の焼き鳥屋で3時間かかって安倍さんの総裁選への再出馬を促したこと、それが憲政史上最長の第二次安倍政権を生み出し、またその後継として自身の政権も実現させた。もし第二次安倍政権がなければ菅政権もなかっただろうし、本当に大きな転換点になったなと思う。
また、弔辞の最後に安倍さんの読みかけに終わった本の話が出てきて、それが岡義武「山縣有朋」であったというのは、出来過ぎというか歴史の皮肉のようなものになってしまったなあと思う。山縣が凶弾に倒れた伊藤博文を偲んで詠んだ
かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ
という歌にマーカーで線が引かれていたというのは、日本において政治家の暗殺という残念な事態がまた繰り返されてしまったという無念もまたひとしおであろうと思う。山縣有朋も伊藤博文も言うまでもなく安倍さんと同じ長州・山口県の出身であり、山縣が国権の確立に努力し、伊藤が藩閥政治から政党政治への移行を図っていた政治家であったことを思うと、またさまざまな思いが出てくるよなあと思う。
菅さんの弔辞はとてもエモーショナルで、本当にある意味恋人のようなものだったのだろうなと思うのだが、日本の政治家どうしの関係というのは実際にはこうしたウェットな、同志愛の強さのようなものが動かしている部分が多いのだよなあなどと思った。
映像の上映後と菅さんの弔辞の後には会場から拍手が起こった。これは葬儀としていかがなものかと思うところもあったが、気持ちはわかると思った。
そして勅使による拝礼。何か勅旨があるのかと思ったらそうではなく、ただ祭壇に進み出て深々と一礼し、そのまま会場を後にする、と言う拝礼であった。
日本国憲法下での最高礼は先に述べたように三権の長の弔辞であったと思うが、日本国家としての最高礼は直視拝礼であり、ここがこの「国葬」における最も重要な儀礼だろう。そしてそのいわばクライマックスが、「深々とした一礼」のみであるというのが、この日本という国の中心にあるのが「充実した空虚」であるということを示していて、とても良いと思った。
その後三陛下のお使いの拝礼、皇族方の献花と続き、その後は参列者の献花になったかと思うが、そこで私は時間切れでテレビの前から離れた。
九段に設けられた一般弔問客の献花台の前の行列は、一番長い時には周囲を折り返しながら四谷駅まで続いていたといい、夕方までに終了となったが献花のできない人も出たようで、永田町の自民党本部前に急遽設けられた献花台には夜の報道ステーションの時間になっても花を持って訪れる人が絶えない様子が映し出されていた。
安倍さんが銃撃されたからの80日、国葬に至る野党や報道の迷走とそれにふらふらし続ける印象となった政権側の対応は、見ていてあまり気持ちの良いものではなかった。統一教会についての訴えのために安倍さんを殺害した山上容疑者にとっては、勝利に近いものだっただろう。ニュージーランドの首相が「テロリストには何も与えない。名前もだ」と言っていたのに比べると、日本は容疑者の意図をそのまま野党や報道が実現するという最悪の対応になった。曲がりなりにも国葬が実施され、彼の完全勝利にはならなかったことは胸を撫で下ろす気持ちはあるが、こんなことは2度とあってはならないと思う。
統一教会の問題については、落ち着いた環境の中でちゃんと議論し方向性を決めていけばいいことだけど、日本国憲法の信教の自由、集会結社の自由などを考えると難しい問題は多く、ただ「政治家は関わるな」だけで済むものではないだろう。信者も国民である以上、その意見は封殺されるべきではない。カルト問題の困難さ、二世信者の問題等がクローズアップされたのはいいことだけど、単なる政治的な消費に終わらないことを望みたい。
報道でも言っていたが、安倍さんというのは良くも悪くも対立軸を作る政治家だった。日本の政治家は右翼と言われた中曽根政権以降、与野党対立よりはむしろ国民の幅広い理解のようなものを優先させてきて、特に小泉元首相は「自民党をぶっ壊す」をキャッチフレーズにしてマスコミを味方につけ、郵政民有化などさまざまな公共機関のリストラを進めていった。後になってその弊害が明らかになってきても、その推進を担った竹中平蔵氏は強く批判され悪者にされてはいるが、小泉首相だけはまだ「いい感じ」が残っている。反原発の方に動いて影響力自体はかなり減退してしまったとは思うが。
その後継者だった安倍さんは第一次政権では「美しい国、日本」を唱えて幅広い支持を集めながら憲法改正等の推進を図ったがうまくいかず退陣することになった。第二次政権ではアベノミクスを引っ提げて株価を上昇させ、日本経済の少なくとも表面的な好調を実現して、民主党政権時代のどん底の経済からの復活で憲政の常道史上最長の政権を実現した。
一方で民主党など野党に対して「こんな人たち」と呼ぶような強い批判も厭わず、また安保法制や日米同盟の強化など左翼・高齢者の嫌がる政策も進めたため、強く支持と不支持が分かれる日本にとっては割と珍しい対立軸の明確な政治を行なった。それが「アベガー」と呼ばれる反対者層も生み出し、また最終的には暗殺という悲劇も呼んだのだろうと思う。伊藤博文にしろ、原敬にしろ、濱口雄幸にしろ、高橋是清にしろ、暗殺されたのはそういう信念を持った政治家たちだった。この21世紀にそのようなことが繰り返されるというのは信じ難いことだが、起こってしまった以上は2度と繰り返されないように警備を考えていくしかないだろうと思う。
安倍さんが亡くなった時も思ったし、また岸田さんや菅さんの弔辞でも思ったが、これからの日本は否応なく「ポスト安倍」の時代になってしまった。これは原敬暗殺後の日本政治の低迷を強く思い起こさせる。
変化の激しい現代という時代においては、安倍さんのように国内においても国際社会においても良くも悪くも強力なリーダーシップの取れる政治家が必要であるのだけど、安倍さんのようにできるだろうと思われる政治家は見当たらない。岸田さんも国葬問題など、聞く耳を持つ必要のないところで立ち止まり逡巡してしまったところを野党や報道に突っ込まれているように見える。それでも国葬をやり切ったことは良かったので、ここを一区切りにしてしっかりとしたリーダーシップを確立し、総裁選公約の通り、新自由主義からの脱却を実現してほしいと思う。
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