「書きたいことを書く」をめぐって/「知識のアップデート」の大変さ/人間の判断力には限界がある
Posted at 22/09/17 PermaLink» Tweet
9月17日(土)晴れ
ここのところ、9月にしては暑かったのだが、今朝は17度まで下がっている。多分例年に比べるとまだ高い気もするが、久しぶりに少しひんやりした空気を感じた。
昨日は「何をどう書くか」ということで、「言いたいことを書く」に続いて「書きたいことを書く」ということについて少し書いてみたのだけど、「書きたいことを書く」ということについてもう少し書いてみたい。この辺、思いつくまま書いているので、また思ったことが出てきたりしたら書くと思うけれども、今回は昨日はなんか書きたりないと思ったから書いている。
まあ、「書きたいことを書く」などという大きなテーマは簡単に語り尽くせるものではないと思うのだけど、書きたいものを書いているつもりでもいろいろな理由で思うように書けないということはよくある。
何かについて書こうとして、すらすらとどんどん書くことが出てくる時というのは、例えば私などだったらエリザベス女王が亡くなったことに対して自分の知っている女王についての話、と言っても心温まるほんわか王室エピソードみたいなのではなく、エリザベスという名前の女王がどれくらい前にいたとか、チャールズという国王名にまつわる歴史的事件とか、まあそういうようなことについてはどんどん出てくるわけだが、これは過去に読んだ本や気になって自分が調べた記憶があることについてどんどん書いているわけだ。
このような内容というのはそういう事件があったから、そして自分が知っていることがあるから書けることで、いくら気になってもウクライナとロシアの戦闘のような不案内な部分が多いことについてはそう書けるわけではない。中国の海洋戦略なども気になるけれども中国がそういう行動を起こすのは歴史上そう何度もあったわけではなく、思いつくのは鄭和の航海とか李鴻章の北洋艦隊が長崎で乱暴事件を起こしたとかそれくらいであり、尖閣問題が起こってからの中国の動きというものについては調べなければ自信を持って書けない。
だから歴史的なエピソードというのはそれなりに読んできているからかけることは書けるのだけど、日本史分野においては研究の進展によって昔とは違う解釈がなされていることが結構多いので、自分の知識がちゃんとアップデートされているかどうかというようなことが気になることが多い。
特に今は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で平安末期から鎌倉初期をやっているので、自分の中でも鎌倉時代はプチブームではあり、この機会にいろいろ勉強してこの辺りの知識をアップデートしておきたいということもあり、いろいろ読んではいるが、アップデートしたばかりの知識をすぐ自由自在に書き記せるかというとまあそこまでは行っていない。この辺は、昔は割と読んだことをすぐ書けたのだが、今は一呼吸置いてから書きたい感じになっていて、その分機動性が良くない感じではある。
「知識のアップデート」というのは、大学の場など自分で学ぶ、研究する、読書するということから離れてしまうといっぺんに置いてかれてしまう怖さが現代社会にはある。これは日本史などの研究分野だけでなく、デジタル分野においても、若い頃は普通に感覚的にこなせていたのがなかなか身に付かなくなっている部分がある。フリック入力などもできるようになるまで結構かかったし、今でも時々変な誤変換は出る。知識のアップデートというのは本当に現代の宿命であるわけだが、それに乗っかって「思想や振る舞いもアップデートしろ」と要求するウォーキズムには警戒しなくてはならないが、知識のアップデートはある程度避けて通れない。ただこれは実際のところ、誰でも十分にできるとは限らないことなので、その辺については意識しておかなければならないことだと思う。
逆に、言いたいことや書きたいことはあっても、そのテーマの周辺についてあまり詳しくないと、自分で全体像を描けていないので、書くのを自重したり観測気球的なことしか書けなかったりすることはよくある。きちんと調べる余裕のないことも多いが、特にコンテンポラリなことや現在進行中のことは自分でデータから積み上げないと把握できないことも多いわけで、その辺になると断言できることは少なくなる。ロシアとウクライナの戦争においては自分のスタンスもあるが情報の取捨選択は「この人の判断はだいたい信用できる」みたいなのがあるから良いのだが、社会的な事件をめぐっては「意見のための意見」みたいなものも多くなってしまうし、よく吟味しないと賛成反対の判断ができなかったり、自分の意見は持っていても反対意見が強いと自分の意見の正しさの表現についてある種の慎重さが出てくるので、これも機動的に対応できなかったりする。
自分が素人の分野においては自分のそれに対するスタンスをはっきりさせてから(表明する場合もしない場合もあるが)それについてこう思う、みたいなことを書くことになるけれども、自分のスタンスを抜きにしていかにも自分のスタンスや見方が唯一の正しい解であるみたいな感じで書いている人は実は世の中本当に多いなというのはTwitterを読んでいて理解してきていて、昔は「人のいうことをよく聞く」というのは良いことだと思っていたし、岸田首相のスタンスもそれなりに良いと思っていたが、人は皆聖徳太子ではないので、自分と違う意見や間違った意見のようなものを聞き続けていると判断を誤るというのはあるなと思う。岸田首相も結局は人の意見を聞きすぎて失敗しているように私には見える。
以前小泉首相の時に靖国参拝問題が起こり、飯島秘書官が「小泉さんはどんなに反対意見を聞いても靖国に参拝するだろう」と考えて「こういう反対意見がある」というような話ばかり伝えていたら、小泉さんが参拝を取りやめて「しまった」と思った、みたいなことを聞いたことがある。
つまり、「人間の判断力というものは限界がある」ということで、特に短い時間に大量の情報、特に自分に反対する意見をぶつけられると、判断が鈍るということはあり得ることだ、と考えなければならない。だからと言って反対意見を全く聞かなければ自分の考え方が鍛えられることはないわけで、Twitterにおけるブロックやミュートの問題はその辺りと関わっているのだろうと思う。
いずれにしても、そういう「常に判断と反論に迫られるような場面」になったら、むしろパソコンを閉じて洗濯をしたり、草刈りをしたり、お茶を飲んだりして自分の「気」を充実させてから対処したほうがいいだろうと思う。こういう議論に強い(偏執狂的にではなく、常識の大道に乗った上で)人というのはスタンスがブレないという現象的な面だけでなく、大きな余裕というものを持っているなと感じるので、結局はそういうところから自分を整えていくのが大事だなとは思う。
「書きたいことを書く」ということをめぐって、「書きたいこと」というより「言いたいこと」に近いようなことも書いたが、この辺りは関連することがまだまだ出てくるなあと思う。
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