「鎌倉殿の13人」第37回「オンベレブンビンバ」を見た:大江広元から見て「頼もしい限り」の義時の「成長」
Posted at 22/09/26 PermaLink» Tweet
9月26日(月)晴れ
昨日は大きな書店に行って久しぶりに外食し、帰ってきてからはヱビスビールの赤いのを飲みながら「鎌倉殿の13人」をみていたのだが、9時からやっていたNHKスペシャルの労働問題の方も見ながら結構いろいろ考えたので、逆にいつも月曜日に書いている鎌倉殿の感想に集中できないところはある。とりあえず先ず「鎌倉殿」の感想を書こう。
「鎌倉殿の13人」第37回「オンベレブンビンバ」を見た。
1205年6月の畠山重忠の乱をおさめたのち、御家人たちの信頼を失った時政は政治の場から外され、畠山の所領の分配から政子が表に立って差配することになる。また泰時は義時が自分のもとで働くようにしたために実朝の御前からは外され、実朝は落胆する。そのかわりに実朝に近侍するようになったのは実衣(阿波局)と阿野全成の子、時元だった。
実朝の場面では、妻になった千世に心を許せない実朝の悲しみのようなものと、おそらくは魅かれるところのある泰時が離されてしまった落胆と、一緒に育っていながらどこかよそよそしい時元との懸隔とが描かれていて、それが和田の屋敷に入り浸る一因となる、という展開がなるほどなあと思った。また小骨が多い魚が苦手だ、というのは頼朝を思い起こさせ、政子となれ初めなどが政子とのえとの会話で語られるが、京での話を千世に自慢するのえの屈託のなさというか怖いもの知らずというか恥ずかしさみたいなものが現れていて、この「ずれた感じ」というのが今後どうなっていくのか、気になるところではあった。しかし千世が実朝を一生懸命支えようとしている感じはちょっと安心した。
一方りく(牧の方)は時政の失墜に更なる策謀を重ね、三浦が養育する善哉を次の次の鎌倉殿にすると言って三浦義村を引き込んで実朝を引退させ、平賀朝雅を鎌倉殿にしようとする。この策謀には阿野時元も関わるが、彼は同じ源氏の血を引く実朝とともに育ち、差をつけられて育てられたことに遺恨を表明していて、実朝死後の蜂起につながるのだなと思った。
義村は義時に時政の策謀を伝え、義時も政子に伝えるが、その場に時政が現れ、上機嫌で飲もうという。時房と実衣も加え北条家の「最後の晩餐」が始まるが、そこで時政が上機嫌に「オンベレブンビンバ~」と唱え始める。
これは前回の北条家大集合、つまりりくが故・政範を生んだ祝いの席で、政子と頼朝の娘の、義高を失った後スピ系が入っていた大姫が唱えていた呪文「オンタラクソワカ」を覚え間違えていたのだった。(元ネタは穀蔵菩薩の真言、「オン バザラ アラタンノウ オンタラク ソワカ」だと思われる)この席では時房が初登場だったし、全成もいたし、滅ぼされたばかりの畠山重忠・稲毛重成夫妻もいたし、八重もいた。みな大姫の突飛な行動に戸惑いながらも、平和な北条家の風景が描かれていて、ここでその場面を回想するというのは、逆に言えばこの北条家がもうなくなるということに対する作者のフラグ立てだということなんだなと思った。
朝廷、というか院では鎌倉での畠山の滅亡や時政と政子の対立など、後鳥羽上皇や近臣たちの策謀がうまく行ったことに上機嫌だが、時政の陰謀を伝え聞いた平賀は動揺し、そんな策謀には乗れないとこぼす。
義時は義村に時政の策謀に乗ってくれと伝え、和田義盛の屋敷で上総介の話を膨らませた義盛の昔語りに盛り上がる実朝を迎えに行き、そのまま時政の屋敷に連れて行く。時政はそこで実朝に出家すると一筆書けといい、実朝は義時や政子に相談できないなら書けないと拒絶する。
義時は時政の謀反を宣言し、討伐すると宣言するが、政子は父を殺すなといい、時政は実朝に対し刃を握り、その緊迫の中でラストとなった。
誰が見ても無理なりくの策謀に時政が乗ったのは、自分はここで死んでもいいという決意があると義時は見る。また泰時に、お前をそばに置いたのは自分のやることを見せるためだ、という。ことの顛末を知っている身からすればこういうふうに演出するのか、という話だが、知らない人にとっては胸がつぶれる思いがするだろうなと思った。
また、政子と義時は重忠の妻だったちえに畠山の本領を残すと伝えるがちえはそれを拒絶し、畠山の城に帰る。おそらくはこれが最後の出番だろう。彼女の再婚とその子孫が畠山を名乗ることはナレーションされたが、その相手が足利氏であることはおそらくは敢えて触れられなかった。ちえを演じた福田愛衣さんのコメントが畠山重忠の在りし日を回想していて涙が出てきた。
また、政子が政務をとる場面で自分たち文官がかわりにやると申し出る場面では大江広元が変ににやけていて可笑しいのだが、義時のことを「頼もしい限り」という栗原英雄さんのインタビューは、なるほどなあと思った。
次回はついに時政追放の回がやってくるわけだが、どのように演出されるのか楽しみだ。最初に書いたNHKスペシャルの話はまた稿を改めて書こうと思う。
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