「鎌倉殿の13人」:第34回「理想の結婚」を見た:京の饐えた陰謀と鎌倉の血生臭い陰謀/田舎の人のいいオヤジっぽく腐敗していく北条時政
Posted at 22/09/05 PermaLink» Tweet
9月5日(月)晴れ
昨夜は10時ごろ寝てしまい、起きたら3時だったのだが、少しジャンプラを読んでから一度入浴してもう一度寝ようとしたが、結局4時半ごろ起き出して、5時過ぎに車で出かけてジャンプとヤンマガとスピリッツを買った。今書いているものがあるのだけど、そのアイデアを車を運転している最中にいろいろ思いつくので、その辺りをドライブして、24時間営業の西友の駐車場に立ち寄った時、ソースと醤油がないのを思い出して買い物して帰ってきた。
帰ってからいろいろネットを見ていたのだが、昨日見た「鎌倉殿の13人」の感想を書く日なので、そろそろ書こうと思って書き始めた。
https://www.nhk.or.jp/kamakura13/story/34.html
「鎌倉殿の13人」第34回「理想の結婚」。
この結婚は、義時自身の伊賀の方(役名はのえ)との結婚と、新たに鎌倉殿になった実朝への後鳥羽上皇の従姉妹にあたる女性の輿入れの話が掛けられていて、泰時と初(三浦義村娘)の関係や、和田義盛と巴との関係などが「結婚とはどんなものか」の例として描かれている。まあ、時政とりく(牧の方)の関係もあるが。
お悩みモードに入った義時と、スパルタ教育に疲れてきた実朝が並行して描かれるが、一方で時政の放漫な政治運営、陰謀含みの実朝の御台所の輿入れ問題の進行や、武蔵国総検校職(武士たちの指揮権を持つ)をめぐる北条時政と畠山重忠の舅と婿の対立といった生臭い事態も進行し、特に出てきたばかりの政範が後鳥羽上皇の周辺、特に源仲章の陰謀によって平賀朝雅に毒殺されると言う展開が起こる。
これは史実では病気とされているが、朝雅の野望刺激する上皇周辺や、朝雅自身の屈託を表現するにはなるほどと思うところがあった。京都に行って仕舞えば時政や特にりくの手も及ばないので、陰謀はしたい放題という京の政界の饐えた感じがよく現れているとも思った。関東は血生臭いが、京もまた上品なだけではない。
一番印象的な場面はアバン(OP前)の義時が泰時に政子からもらった頼朝の守り仏を譲るところだったなと思う。義時は頼家と一幡を殺した罪の意識から、自分にこれを持つ資格はないと感じ、泰時に譲ろうとする。泰時は拒否するが、結局受け取らされる。泰時は、「頼朝への負い目をちゃんと直視すべきだ」という超真面目なスタンスなのだが、鶴丸の「義時の思いも汲んでやってくれ」という気持ちもいいなと思う。
この親子関係、ここのところずっとすったもんだしているのだが、義時が苦悩の中で下した結論と実行に泰時が正論で刃向かうという血のでるような関係になっているのだが、それを周囲が宥めてその関係が決定的に壊れないようにしている。義時がのえを娶ると言い出したことに対しても泰時は「人の心があるのか」と食ってかかり険悪な空気になったところを初が泰時をビンタして引き下がらせる。まあこの辺りは一緒に育っている遠慮のなさみたいなものもあっていいのだけど、こう言う周りの人たちがあって義時家も保っているのだなと思わされる。まあ、泰時も義時に決定的な反抗はしない(頼家に逃げるように説得に行くなど、言いつけに従うばかりではないのだが、それは義時も好きにさせてやれという感じも現れている)ので、いい子すぎるがいい子ではない泰時という青年のある種の類い稀さみたいなものがよく描けているなと思う。
後鳥羽上皇の方には乳母の藤原兼子という新キャラが現れたが、土御門通親が出てこないのがちょっとあれ?と思うのだけど、まあ京の貴族社会はなるべくシンプルに描こうという意図があるのだろうなとは思う。今回の後鳥羽上皇の「あそび」は貝合わせで、まあ「婚姻」というテーマに合わせているのだろうなと思う。この辺の演出も芸が細かい。
実朝は連日の御家人衆のさまざまなジャンルの特訓によって疲れてしまうが、和田義盛が鹿汁をご馳走しようとするのに義時も便乗して和田邸に行き、また巴とのほんわかギャグを見せられて義時も実朝も和む、という演出になっているのがまあ救いではあるのだが、この先和田義盛の孫と実朝は和歌友達になるし、それが和田との親密な関係にもなり、和田合戦に発展していくきっかけも描かれているのかなとこの先も想像してしまう。
政子の配慮によって実朝が和歌と出会う演出はいいなと思った。与えられるのではなく、自分で発見することによってその世界に目覚めることを動かすというのが本当の家庭教育だよなと思う。私自身が子供の頃、家にたくさんあった本に興味を持って読み始めたのでこういうのはよくわかるし、その本も母が意識的に置いてあったということを後で知った。ある意味お釈迦様の掌ではあるが、「自分で見つけた好きなもの」がその人にとって重要なものになっていく瞬間を見られた感じで心温まった。
実朝の貴族の娘の輿入れへの不安は、やはり周りに貴族出身の女性がいないからだろうし、いてもりくでは手を焼きそうだと思ってしまうのは仕方ないだろうと思う。初や巴のような関東の女性の方がいいと見ていて思ったかもしれない。
もう一つの柱は義時の結婚だが、二階堂行政の孫ということもあり、文官系の人々に詰められて会ってみて、朝時や重時にも懐かれ、「きのこが好きだから嬉しい」という鎌倉殿の謎の大キーワードに合格したために結婚を決めるのだが、「本当はきのこは好きじゃない」と同じ宮仕の女性たちに放言しているところを泰時に見られ、波乱含みとなった。というか最高に後味を悪くしてくれたのがすごいなと思ったが、まあもちろん菊池凛子さんの配役で一筋縄で行くはずはないと思ってはいたが、これかあ!とは思った。泰時は見た、だったな。
いろいろとタイムラインで読んでいてなるほどなあと思ったのは、時政が時政の描かれ方のままで腐敗していくのがすごい、という指摘で、つまり「田舎の人のいいおっちゃん」が実は権力を握ると結構怪物になる、みたいなものとして描かれてるのは一つの描き方だなと思った。「お土産を持ってくるやつの味方をする」というのは公正を旨とする権力者はやってはいけないことなわけだけど、「来るものは拒まず」の悪い面が出てしまう時政というのはある意味魅力的であるのは面白いし、最初はそれほどその気でなかった「武蔵乗っ取り」も義時や畠山の懸念を他所にどんどんエスカレートしていき、義時に「畠山と一戦交えるつもりですか」と問いただされても「説教は一日に一回にしてくれ」というのは笑ったが、三浦義村に畠山に対する旧怨を思い出させ、「北条と畠山が戦うことになったらどちらにつく」とやり始めるのはある種関東武士の本能の血が騒いでいるような感じさえあって、「なぜそれが起こったか」という説得力のあるストーリーが生まれているなと思った。この辺、京の饐えた陰謀の世界とはまた違う、いざとなったら婿でも討ち滅ぼすという血生臭い世界だなと思った。まあ考えてみればすでに時政は主君であり孫である頼家とその子を討ち滅ぼしているわけなのだけど。
「鎌倉殿の13人」、今回はつなぎ回という感じだったが前半のような微笑ましい場面はわずかに鹿汁の場面くらいで、あとは実朝の和歌との出会いが救いという感じだったが、来週もまた一つの破局が描かれるように思うけれども、でも義時はおそらくだんだん自分を取り戻す感じがあって、来週も目が離せないなと思うのだった。
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