「推しを持つこと」の積極的な意義:「「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か」を読んでいる
Posted at 22/08/23 PermaLink» Tweet
8月23日(火)曇り
昨日は色々と気になることがあってそのせいか体調が変なところがあり、甲子園の決勝で深紅の大優勝旗が白河の関を越えたのをラジオで聞いていたりしながら体調を整えつつ少し仕事を整理したりしていた。夕方になって思い立って岡谷の書店に本を買いに行き、久保(川合)南海子「「推し」の科学 プロジェクションサイエンスとは何か」(集英社新書、2022)と中古CDのJohn Lewis「Grand Encounter」を買った。
「推しの科学」は、最近比較的広い意味で使われるようになってきた「推し」という言葉の積極的な意義と、「プロジェクション」という認知科学での概念の関係というあたりが面白いと思い、買ってみた。「何かが好き」といういわゆる「ファン」という状態より一歩踏み込み、「推しを応援する」「推しのために自分の行動を変える」になってきた状態を「推しを持っている」という状態だとしている。
この本にもいくつか例が挙げられているが、「推しを持つことで救われる」というような積極的な意義が取り上げられていて、この辺りはマンガ「【推しの子】」で難病で苦しむ少女が「推しのいる生活はいいよ。毎日が好き!って感情で満たされて」というようなことを言っているが、この辺りは何か前向きなものがあると心が前を向く、というくらいのことかと思っていたけれども、その辺が整理されて理論化されてきているのだなと思った。
プロジェクションというのは主体が外界にある人間や事物(投射元=ソース)を見、外界から受け取る情報をもとに「表象(イメージ)」を形成する。そしてその表象を特定の事物や人物(対象=ターゲット)に向かって投射する、この一連の作用を「プロジェクション」というのだそうだ。
投射にはソースとターゲットが一致している通常の投射が多いが、ソースがないのにターゲットが形成される「虚投射」やソースと異なるものがターゲットに形成される「異投射」があるのだそうで、虚投射は例えば壁に西城秀樹の身長の線を引いてそこに西城秀樹を想像してうっとりする(from「ちびまる子ちゃん」)というものであり、異投射は例えば枯れ尾花を見て幽霊だと思う、というようなことだという。
プロジェクションのこうした例では、例えばマンガや小説で何も書いていない関係性を読み込む、つまりスポーツマンガを読んで男性同士の恋愛の関係を読み込む「腐女子」の活動などもこういうものと解釈できるわけで、その辺りの誤読文化というものがこうした形で説明できるのは面白いなと思った。
まだ読みかけなのだが、認知科学というものがどういうものでどういうところで役に立つのか、私はいまひとつわかっていないところがあるので、そういう勉強としても読んでみようと思っている。
「Grand Encounter」はMJQ、Modern Jazz QuartetのピアニストのJohn Lewisの1956年のアルバムで、まだ少ししか聞いてないがゆっくりとした運転にはちょうどいいアルバムである気がした。
「ウクライナ戦争と世界のゆくえ」の感想は、改めて書きます。
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