左派批判のための左派の思考枠組/ショーペンハウエルとニーチェとフロイト
Posted at 22/06/29 PermaLink» Tweet
6月29日(水)晴れ
「現代思想入門」、昨日はフーコーのところを読み終えてニーチェとフロイトのところを読んでいたのだけど、大変わかりやすい。フーコーは要は権力批判な訳だが、近代的な権力のあり方というもの全般に対する批判のために使える見方を示しているので、つまりは大学において思想的覇権を握っているフェミニズムやポリティカルこれクティズムに対する批判にも十分使えるということになる。デリダやドゥルーズに対してはともかく、フーコーに対しては私は結構反感を持っていたので、著者の整理による理解の方向から見直してみるとかなりその考え方も理解できる、また共感できるところもかなりあるなと思った。
最近は右派思想・保守思想を主に読んでいたので、その論理の枠組みを使って左派思想・進歩主義思想を批判するのは難しいなと思っていたのだけれども、左派の側が前提としているこれらの思想を用いて左派自身を批判することが、最も有効な批判になり得る感じはした。吉本隆明とかがやっていたのも結局そういうやり方だったような気がするが。
なかなか時間がないとこうした本格的な思想の著述された大部の思想書にトライする気にはなれないのだけど、こうやってかいつまんで思想の要部が紹介されていると、時間がある時に頑張ってみるかという気持ちにはなれる。こういう啓蒙書というものの価値はそういうところにあるのだろうと思う。
啓蒙書の書き方の難しさというのは、要点をきちんと押さえていることはもちろんだけど、その要点というもの自体が読み手にとって届くものとそうでないものがあるし、読み手の背景もそれぞれだから年配の読者にはこんなことにも触れてないのかと思われたりもするけれども、基本的には「現代の若者」に向けて書かれているものが結局は読みやすいような気がする。というのは、年配の読者も哲学や現代思想にトライしようというヒトなら「現代の若者」を理解しようという気持ちはあるので、その方面に多少はアンテナは立っているだろうからだ。そういうものがない人にはちょっと取り付きにくいとは思うが、自分としてはこういう説明の仕方によって著者が「現代の若者」をどうみているのか、またどのように対応してきているのかもわかるし、そこを含めて面白いなと思うところがある。
ニーチェは意志の哲学と言われるが、意志論を最初に取り上げたのはショーペンハウエルだ、という指摘は言われてみたらその通りなのだけど単なるぺシミスト的なイメージが強く、その側面をあまりみていなかった。ショーペンハウエルにおける意志は「盲目の意思としての世界」、苦の中で痛めつけられながら生きているからこそ生が肯定されるみたいな話だったのが、その「盲目の意思」をプラスな明るいものに転換したのがニーチェである、というある種の弁証法的発展みたいな説明がなるほどと思った。
フロイトにおける「無意識」の問題や精神分析の方法論の説明も面白く読んだが、最近はこの方向性を否定するものの方を読んでいたので、改めてこういう角度で肯定的な方向から説明されると、意志論や無意識論が自分の思想のかなり真ん中辺にあることが改めて感じられ、その辺から自分自身を見直してみるのも見直しやすいなと思ったりする。
人生のアクシデント的なものが起こった時、それを物語的に理解することで自分なりの理由づけをしてそれを無意識下のパックに入れてしまうことはあるわけだけど、そのことが帰って「こころのこわばり」を固定化してしまうことがある、という指摘は全くその通りだと思った。というのはまあ、つい最近そういう過去のこだわりみたいなものをようやく相対化できた部分があったからそう思うのだけど、そういうことを下手に物語化することで何十年も無駄にしてしまうということはあるわけで、この辺りのことももう少し深められると自分だけでなくヒトの役にも立つ部分を得られるかもしれないとも思った。まあ、精神分析はまだ死んでないんだな、と思ったと言えばいいか。
最近アクセスやビュー的にあまり伸びていないのだが、それはまあどちらかと言えば読みやすいことを書いてはいない、つまり「自分の問題」について書いている部分が多いからだろうなあと思う。以前はある程度、自分の抱えている問題についても同じように思っている人もいないとは限らないしそのような人に何か役に立てばいいかなという感じで書くことも多かったのだけど、最近はどちらかといえばそういう人に伝わるようにというよりは自分の思ったことをそのまま、あまりわかりやすくなく書いているので読みにくいだろうなあとは思う。
ただ自動書記ではないがなるべくその時の言葉の羅列を残しておいた方が、つまりよりゴツゴツしたものとして書き残しておいた方が後で見て引っ掛かりになる、状況を再現するのに役に立つ気もするし、そこから思想的な思考も始まるようにも思うので、読みにくいものではあるけれどもお付き合いしてくれる方にありがたいと思いながら書いているという感じになっている。
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