「古楽の楽しみ」でフランソワ・クープランを聞いてルイ14世の初恋と晩年の安らぎについて考えてみたりした。
Posted at 22/05/25 PermaLink» Tweet
5月25日(水)曇り
相変わらず頭がちゃんと休まってない感はあるのだが、昨日は11時半に寝て起きたら4時前だったので4時間半くらいは寝ていることになる。最近はもう4時をすぎるとだいぶ明るくなっている。整体に行ったときに足湯をすると良いという話を聞いたので昨日もやってみたのだが結構頭が休まる感じがしたので、今朝もやってみた。だいぶ緩んできた感じはしたのだが寝床に戻っても眠れたわけではないので4時半くらいに起き出していろいろやっていた。
5時前に家を出て国道沿いのセブンイレブンまで行ってコーヒーを買い、諏訪湖畔の方まで戻って高島城横のファミリーマートでアフタヌーンとエビアンを買い、一番近いセブンイレブンでマガジンを買って帰ってきた。車の中で「古楽の楽しみ」を聞いていたのだが、ルイ14世後半期には文化の保護者としての側面は失われ、信仰心の厚いマントノン夫人とヴェルサイユ宮殿にこもり、夫人の影響下でカトリックの信仰に反すると思われた演劇などから足が遠ざかり、庇護していた芸術家たちにも保護が失われていったために、パリの市民からマントノン夫人は嫌われていた、という話が興味深かった。
ルイ14世は1638年生まれ、1643年に父のルイ13世が死去して5歳で王位につき、母アンヌが摂政に、また枢機卿マザランが宰相として全権を握りドイツの三十年戦争に介入してフランスは領土を拡張したものの1648年にフロンドの乱が起こり、その影響で何度もパリを離れざるを得なくなったルイ14世はパリをあまり好まなくなったという。ヴォルテールの「ルイ14世の世紀」によれば王はパリ高等法院で17歳のルイ14世が法服貴族たちに対してL'État, c'est moi.(朕は国家なり)と言い放ったというが、これはこのようなパリとの、特に高等法院との対立から出てきた台詞のようだ。
ルイ14世は艶聞の多い王であるわけだけど、最初の恋人はマザランの姪のマリー・マンシーニで、結婚前のルイ14世は本気で結婚しようとしたために摂政アンヌと宰相マザランは急いでマリーをナポリ王国の貴族と結婚させ、傷心のルイ14世はスペイン王女マリー・テレーズと1660年に結婚。このことはルイ14世の心に深い傷を残し、ラシーヌは「ベレニス」の中に「あなたは皇帝、あなたは支配者 そしてあなたは泣く! 」という言葉で取り入れているという。初恋の君の結婚はうまくいかなかったが、ルイ14世はその死まで彼女との再会を拒んでいたとのこと。
ルイ14世の王妃や愛人たちの話は「フランスの歴史を作った女たち」4巻で読んだはずなのだが、ほとんど覚えていない。取りに行くのも大変なのでAmazonで中古を注文したが、大河ドラマなりアレンジなりでこれらの宮廷恋愛についてストーリーを作ったらいろいろと面白い話が書けるのではないかという気がした。
マントノン夫人は王妃や寵姫モンテスパン夫人、若い愛人たちと違い、ルイ14世より3歳年上で父とともにマルティニック島に渡ったりいろいろと苦労して育った人で、父はユグノーで母はカトリックという複雑な宗教環境もあり、いろいろ苦労してカトリックの強い信仰に目覚め、王妃の子供たちやモンテスパン夫人の子供たちを育てる中でその献身ぶりを王に見出されたという女性のようだ。1683年に王妃が亡くなり王と秘密結婚をしたのが(身分違い(=貴賤結婚)のために正式の結婚はできなかった)1685年だが、その年にルイ14世はナントの勅令を廃止して国内のユグノーが大量に国外に逃れるなどの大変動が起きている。このことは私の友人も祖先がこのときにフランスからドイツに移住したということを言っていたし、実際大きな事件な訳だけど、このことにどのくらいマントノン夫人が関わっているのかは確定はしていないようだ。
ただ、この結婚の時に王は47歳、夫人は50歳なので王が求めたのはセクシュアルなものでは必ずしもなかっただろうし、二人の間には子供もいない。王にとっては安らぎであったのだろうと思うが、それがフランス国民に幸いだったのか不幸だったのかはまた難しいところがある感じはする。
またマルティニック島といえばナポレオンの最初の妻・ジョゼフィーヌの出身地であることはよく知られているわけで、その辺りのクレオールとの関わり、また17世紀半ばのこの島と18世紀後半のこの島の有様の違いなども興味が惹かれる部分はある。
考えてみると英蘭戦争に介入し、イングランド王政復古後のチャールズ2世とドーヴァーの密約を交わすなど活発な外交・戦争活動を続けていたルイ14世だが、治世後半のファルツ継承戦争(1689)以降の侵略的な戦争を行い、イングランド≒大ブリテン≒連合王国との間で第2次百年戦争と言われる植民地戦争を戦っていくのはマントノン夫人との信仰生活の中でであり、そのような中で王子と王孫を疫病で失ったルイ14世の72年余りの治世は、現イギリス女王エリザベス2世(現在70年)より長いのだが、まあまさに栄光と悲劇、愛と孤独に満ちていると言えるのだなあと思ったりした。
歴史をやっていると外征や国内政治など、政治面・経済面・軍事面などに関心がどうしても偏ってしまうのだが、ルイ14世自身の関心事項としてはそれらと同じくらい、あるいはそれ以上に宮廷生活というものは重要だったはずで、一条天皇時代の宮廷生活が枕草子や源氏物語、あるいは御堂関白記などに現れているように、ルイ14世の宮廷生活もラシーヌの悲劇やヴォルテールの著作に描写されているものにもっと関心を持っていたらまたその面白さも違ったかなと思う。
ただこれは革命史研究をしていたときにも思ったのだが、日本史の勉強と違ってフランス史の勉強は、それぞれの個人の感覚にあまり共感できないことが多くて、ある意味面白くない感じがある。彼らが大事にしているものや誇りに思っているもの、感覚的な好みなどが現代日本人である自分とかけ離れているところをより強く感じるからなんだろうと思う。それを面白く感じられるなら外国史研究も面白いのだがなあと思うのだが、結局そこまでいかなかったのは残念だった。
宮廷生活について調べるということはよりそういう感情的な部分への共感なり反発なり、つまりこちら側の感情の動きが起こらないとあまり面白くないように思うし、それらを日本人にも共感可能なように「翻訳」して表現する人が出てこないかなと思ったりもした。
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