世界の枠組みを考え直す/ウクライナはなぜ「西側」の支援を受けられているのか/「権威主義」という認識の枠組み/「民主主義」の魅力と弱点と価値と可能性
Posted at 22/05/03 PermaLink» Tweet
5月3日(火・憲法記念日)晴れ
今朝は3時台に起きた。というのも昨夜寝たのが8時半で、一度起きたらまだ1時半だったのでもう一度寝床に入ったのだが、いろいろやることもあり、勿体無いので起き出して部屋を片付けたり、風呂に入ったりお茶を飲んだりしてから車で出かけた。まだ4時台だったと思う。
今朝はかなり冷え込んで、5時半までの最低気温で2.1度。連休ってこんなに寒かったっけと思うのだが、今年は雪も多かったしまあいろいろな具合があるのだろう。
先日インドにいる友人と話したりしながらいろいろ今自分の考えていることなどを整理していたのだけど、大事なことは、今度のウクライナ・ロシア戦争で「自分の中の世界認識の枠組み」をかなり考え直さなければいけないところが出てきたということ。特に、自分の中ではとりあえず(当事者意識を持って)考えるべきは日本のことまで、みたいな縛りが自分の中に結構あって、政治的には保守主義で経済的にはケインズor社会民主主義的な主張というのを自分なりには持っていて、そこを深めていくためにいろいろ読もうというようなところはあったのだけど、(それで保守主義に関する本とか資本主義に関する本を読んでいた)戦争が起こってみるといろいろと今まで自分がとりあえずこんな感じ、と考えていた世界の枠組みのようなものが結構さまざまなところで影響を受けて、とりあえずさまざまなことを地球大で考えていかなければいけないなというところが出てきた。
とは言ってもまずは戦争に関するいろいろなテーゼみたいなものから日本の歴史、特に第二次世界大戦を振り返ったりロシアやウクライナの歴史についてもう一度調べてみたり、ソ連時代と今のどこが同じでどこが違うのかなど、いろいろな視点で考え始めて、まあ今は特にテレビに国際政治学者や軍事学者がよく出ているということもあり、やはりそういう方面の勉強は足りていなかったなと改めて思っているので、そっち方向のことをとりあえずは少し勉強しようと思っている。
我々は中国の脅威に直面してきたからソ連崩壊後のロシアとその周辺世界についてそんなに本気になって考えてこなかったところがあるけれども、よく言われているようにロシアとウクライナの関係は中国と台湾の関係のケーススタディでもあり、我々にとっても身近な問題になる可能性があるということと、もう一つ忘れてはならないのはウクライナと同じく我々もロシアの隣国であるということだ。中国だけでなくロシアを知ることは今の我々にとっても必要なことだと改めて思う。
シリアやジョージア、チェチェンに対してもロシアは侵攻していたわけで、そういう国々と比べてウクライナはより大きな支援を「西側」の諸国から得ているように見え、それに対する批判はあるわけだけど、そうした国々とウクライナはどこが違うのかということを考えてみた。
西側諸国が本気になって戦う一つの相手は膨張主義であるわけだけど、それも「西側」にとってより脅威になる場面・状況でそれが発動するということはある。敵とするのはロシアのような民族的な膨張主義、イスラム過激派のような反近代・反資本主義的な膨張主義、中国のような経済的・軍事的膨張主義であるわけだけど、逆にいえば、「西側」が本気になって支援するのはどういう国かということだ。
ウクライナとロシアのことを考えてみると、ソ連から独立した後のウクライナというのはあまりアイデンティティのはっきりしない国だった。宗教も西部の東方典礼カトリック教会とロシア正教、ウクライナ正教などいくつかの周波があり、言語もウクライナ後だけでなくロシア語を使う人たちも多い。民族的にもウクライナ人が3000万人くらいいるがウクライナ人はロシアにも300万人、カナダにも120万人住んでいるし、ウクライナにもロシア人が700万人以上、その他にもクリミア・タタール人、モルドヴァ人、ブルガリア人、ハンガリー人、ルーマニア人、ユダヤ人、朝鮮人もいる。彼らの言語・宗教を考えればその多様性も理解できる。
こうした特性から西部ではヨーロッパ志向・EU思考が強く、東部ではロシア志向が強い傾向があり、そういう意味での統一性はあまり強くなく、国家全体としても親EU派と親ロシア派が政権を交代していた。しかし全体としては2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命はいずれも親ロシア派の政権を倒すために起こっているので、ベースとしては親EU派が主導権を取る傾向はあったように思う。そうした状況に危機感を持ったのがウクライナをも自らの「ロシア」の範疇と考えるようになったプーチン政権で、彼らは2014年にクリミアに侵攻して一方的に併合し、また東部2州の武装勢力を支援して分離運動を起こした。その火種はずっと続いていたのだが、2019年に成立したゼレンスキー政権がEUおよびNATOに接近する動きを強めたこともあり、ついに侵攻に及んだわけだ。
侵攻前にはさまざまな内政・外交両面における失敗によって支持率が低下していたゼレンスキー政権だったが、戦う姿勢を前面に出し欧米各国の支援を取り付けたことでウクライナ軍の士気も上がり、支持率は90%以上に急上昇した。このように、イラクやアフガニスタンがなかなかイスラム過激派、「イスラム国」や「タリバン」と戦う姿勢を見せない中でなし崩しに弱体化し、あるいは崩壊していく状況、またシリアでも結局はロシアに支持されたアサド政権が復活するなど、「支援する甲斐がない」状況が続いた中で、ウクライナが勇敢に戦い続けていることは西側にも感銘を与え、より強く支援することになった面は否定できないと思う。
しかしおそらくはそれだけではない。社会主義国であるソ連が崩壊した後、旧ソ連の国々はカザフスタンやベラルーシをはじめ、多くの国々が独裁状態に近い権威主義体制になっていった一方で、バルト3国とウクライナだけは「近代民主主義国家」であろうとし、ウクライナも政治腐敗や東西対立による政争による低迷などさまざまな問題を抱えつつも民主主義的国家体制だけは守り続け、落選した大統領や首相たちもほとんどの場合(ロシアに亡命したヤヌコーヴィチなどを除き)国内にとどまって今度の戦争においてもキエフにとどまり、あるいは帰還して戦争を支持している。おそらくは、ウクライナが「近代民主主義国家」である、あるいはあろうとし続けていることが、「西側」が強力な支援を行っている大きな理由なのだと思う。
欧米諸国はスペイン内戦で市民派の政権を、ミュンヘン合意でチェコスロヴァキアを、第二次大戦開戦でオーランドを見殺しにしてきた苦い歴史があり、ウクライナの頑張りもあってここは見殺しにしてはならないというコンセンサスが生まれたのだと思う。
第二次大戦後の日本の繁栄も日本人が頑張ったこともあるが戦前の権威主義的(と西欧諸国には思われた)な体制から戦後の民主主義体制になり、一貫して欧米側を支持する姿勢もあって目に見えない支援を受けてきた面もあったかと思う。現在の日本の低迷は資本主義諸国内部での競争に敗れた面もあるわけだけど、戦争をしない民主主義国であるという評価はそれなりに定着している(あるいはそれゆえに舐められている)ように思う。台湾をアメリカが支援しようとしているのも同じ理由だろう。
ウクライナは白人国家だから支援されているのだという見方があるけれども、それだけではないと思う。「近代民主主義国家」を運営しているということは、それだけで国際政治上のアドバンテージがあるのだと思う。
一方でソ連崩壊後のロシアは、アイデンティティが失われた状態からの立て直しは結局のところロシア正教による宗教的一体性と「権威主義的」な強固な国家体制に依拠する形で行われたように思う。
権威主義体制Autocracyというのは曖昧な用語だが、非民主主義で排他的な独裁に近い体制をまとめて呼ぶには便利な用語だと思う。全体主義や社会主義・国家社会主義体制なども細かくみていけば相違はあるが、現在使われているような中国とロシアを「権威主義」とまとめて表現する用語は割とその両国の親縁性などを考えても妥当な用語のように思う。狭義の全体主義=ファシズムやスターリニズムもそのあたりでまとめておくのが、実際には使い勝手がいいように思う。社会主義=スターリニズムは理想があるから国家社会主義=ナチズムとは違うというような議論も私はもともと同意できないが、権威主義という箱のバリエーションであると考えておけば考えやすいように思った。もちろん、少し前に書いたように「進歩という理想を持ったソ連の社会主義」と「進歩の理想を失ったプーチンの権威主義」はそこにおいて本質的に違うとは思うのだけど。
https://note.com/kous37/n/ndd81d6901764
http://www.honsagashi.net/bones/2022/05/post_3826.html
現在の世界には民主的な選挙の過程を経て選ばれる権威主義的な指導者が多いという状況もあり、それらの「分類」は一筋縄ではいかないところはあるのだが、民主主義の魅力でありまた弱点でもあるのが「変化の可能性」なわけで、人間の変化する可能性までもを織り込んでいるところに「民主主義の価値」と「可能性」があるのだろうと思う。
と、なんとなく「憲法記念日」に相応しいような議論になったところでこの記事はこのくらいにしておこうと思う。
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