「鎌倉殿の13人」第21回「仏の眼差し」を見た。/BRUTUSのマンガ特集を買った。
Posted at 22/05/30 PermaLink» Tweet
5月30日(月)晴れ
今朝はいい天気だ。昨日は10時半に寝て起きたら4時前だったから6時間近くはねられた計算か。毎日睡眠時間を書いていて恐縮だが、このあたり日記の性格もあるので失礼させていただく。
昨日は午前中ずっとヴォルテールやルイ14世についていろいろみたりしていたのだが、午後は松本に出かけようと思ったが少し疲れていたのでやめにして、午後は休み休みマンガを読んだり頭の中を整理したりしていて、夕方夕食を買いに行くついでに書店を物色したらBRUTUSのマンガ特集が出ていたので少し読んで買った。取り上げられているもののうち読んでいる(単行本も買っている)のは「怪獣8号」、「チ。」、「ダンジョン飯」、「紛争でしたら八田まで」、「水は海に向かって流れる」、「ハコヅメ」、「チェンソーマン」、「ブルーピリオド」、「ここは今から倫理です。」、「呪術廻戦」、「ONE PIECE」、「宇宙兄弟」、「GIANT KILLING」、「キングダム」、「進撃の巨人」、「HUNTER×HUNTER」があり、そのほかにも雑誌で読んでいるものには「ひらやすみ」などがあって、それぞれどのように評価されているのか時間がある時に読んでみたいと思った。表紙は「ひらやすみ」。
ただ雑誌の性格や企画の性質上仕方ないとは思うけど、取り上げられているのは一定既に評価されている作品が中心で、「これから出てくる作品」という尖った特集になってないのはちょっと残念という感じ。まあその辺は「このマンガがすごい!」などがカバーしているのだと思うが、ブチブチに尖った「3巻以内で終わった(打ち切られてしまった)けれどもメッチャ面白い」みたいな特集をどこかやらないかなと思ったりする。
しかし、作家の他作家の作品に対するオマージュのイラストレーション(五十嵐大介さんの「鬼滅の刃」、押切蓮介さんの「紅い花」、寺田圭吾さんの「ゴールデンゴールド」、真造圭伍さんの「スキップとローファー」、オノ・ナツメさんの「謎の怪人蜃気郎」、藤田和日郎さんの「狭い世界のアイデンティティ」)はどれも面白かった。こういう他作家のオマージュというものはその作家が力を入れて描くよなというのがあり、この人たち本当に上手いなと改めて実感する。「鬼滅の刃」と「紅い花」、「狭い世界のアイデンティティ」が特に良かった。
夜は「鎌倉殿の13人」第21回「仏の眼差し」を見た。時期としては文治5年(1189)の7月の奥州合戦から翌年10月の頼朝の上洛までの間の時期の話になっている。文治5年の閏4月が義経の滅亡なので、その年の秋には奥州藤原氏が倒され頼朝によりほぼ全国が統一されたことになる。
この後の筋は基本、頼朝と後白河法皇の政治的駆け引きの繰り返しということになるが、頼朝の対抗馬として平家や木曽義仲、義経らを手駒に持ち続けた法皇は、今回は北条時政を手元に置こうとするが、義仲や義経と違い老練な政治家であった時政は法皇にも遠慮せずぬけぬけと「可愛い妻が待っているから」という理由で体よく京を辞し、鎌倉に帰る。
実際には文治2年に京都守護を務めていた時政の手勢がさまざまな乱暴行為を働いていたと「吾妻鏡」にあるようで、実際に時政が法皇にどのように処遇されたのかは調べてみてないのでわからないが、誰の懐にも入ることができ信頼されるというある種の「人たらし=コミュニケーションお化け」のような「父上」像が視聴者もたぶらかす中で、牧の方一筋みたいな人物像を(おそらくは)演じているのもまた面白いし、今後の展開を知っていると怪物化してきたなあとしみじみ思う。
怪物化といえばもともと「日本国の大天狗」だった後白河法皇が「なぜ平家や義仲や義経を滅ぼしたのか。止めなかったお前が悪い!」と平知康に八つ当たりするのは笑えるが、頼朝の方がもう義時の妻になっている昔の女=八重にズケズケと思い出話をして、義時は落ち込むし政子は怒るしという傍若無人ぶりを発揮し出すのはついにライバルがいなくなった独裁者の怪物性みたいなものが出ていて小四郎かわいそうという感じだった。「全部大泉が悪い」と言われても仕方がない。
義時と八重の子である泰時が大人びて利発で、頼朝が出過ぎた可愛がり方をして自分に似ているとか言い出すのはちょっとやりすぎだなと思ったが、なんとなくぼーっとして出来の悪い坊ちゃんみたいな頼家にちゃんと礼儀を尽くすのも優等生的で可愛いが、頼家のできの悪い坊ちゃんぶりも良い演技だったなと思う。
まあ概ね今回は「八重さん」の回だったわけだが、絵として一番印象的だったのは北条家の人々が牧の方(りく)の出産祝いに全員集合するところで、この子・政範が生まれたのが文治5年なのでちょうど勘定はあっている。そこに初登場の義時の弟や妹たちが出てきて最初で最後の全員集合になるわけだけど、今までどこでどうしていたんだという感じ。時房(時連)は1175年生まれなので14歳、畠山重忠の妻になった娘が懐妊しているが子である畠山重保は生年不詳なのでここに持ち込んだかという感じ。もう一人の娘の娘婿となった稲毛重成は畠山と比べると地味な感じだが、頼朝の死にも関連してくる人物なので多分また出てくるのだろう。
この中で奇矯な振る舞いをする大姫がかなり浮いているが、Twitterで読んだコメントが印象的で、大切な人を救えなかった二人の女性、大姫と八重は、若い大姫はスピリチュアルな方向に走り、八重は子どもたちを助けるボランティア活動に生きる道を見出した、というのはああなるほどなあと思わされた。この二つの演出はややどうなのと思うところもあったのだけど、そこに現代性を持ち込んで二人を造形しているんだなと思った。
奥州で藤原氏を滅ぼすとともに義経の武勲を偲ぶ御家人たちの間で孤独をかこつ梶原景時に割り切れない思いをもったり、土肥実平と義経を偲んでいるところに現れた八田知家に預けられた鶴丸を八重に育てさせたり、頼朝のイジリに落ち込んだりしている義時を八重は「もっと自信を持って」と励まし、仏の眼差しのようだと思う義時だけれども、八重もまた子どもたちを育てる中で実子である泰時が寂しい思いをしていることを訴えられ、お前を一番愛していると吐露するなど、演出が巧みだなと思った。
八重が子供たちを川で遊ばせているとき、千鶴丸を思いだささる鶴丸が溺れそうになっているのを助けにいき、自らは溺れ死んでしまうという演出は、劇的な八重の退場という意味では虚実ないまぜになった巧みな演出だったし、そこに北条氏の菩提寺である願成就院の落成のために伊豆に戻り、そこで運慶作の阿弥陀如来を見て、その面影に八重を見るという義時という構図は、流石にかわいそうな感じだった。
八重が死んだ現場に三浦義村がいたが彼女を救うことができず、「小四郎もほとほと運のない奴だ」と吐き捨てる場面は逆説的に義村の後悔を語っていて、今後の二人の関係を暗示するところがあった。
鶴丸の今後が気になるが、八重を描くためのキャラなのかそれとも今後泰時の郎党になって活躍していくのか、まあ後者を願いたいが15人に増えた子供達の面倒を誰が見るのかとかいろいろ気になることはある。
それにしても八重の死というフィクションと願成就院の運慶作阿弥陀如来を絡めてこのような話にした脚本の妙は相当なものだと改めて思わされた。
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