ゼレンスキー演説とウクライナ南部の老人の夢
Posted at 22/03/24 PermaLink» Tweet
3月24日(木)曇り
そんなに忙しいわけではないのになんだか気が急いているというか、落ち着けという感じ。年度末の忙しさもあるし、思いがけないアクシデントがいくつも起こることもあるし、ウクライナの戦争もある。今朝は夢の中でウクライナ南部の老人がロシアへの支持を訴えている夢を見て、なんだか複雑な気持ちになった。頭の中でこの人はクリミアのロシア人なんだろうかとか、ウクライナにいるけどウクライナに不満なんだろうかとか、架空の人物のことをあれこれ思い巡らせてしまい、でも実際さまざまな立場の人がたとえ少数でもいるのだろうなとか思った。まあこれは、昨夜ウクライナのゼレンスキー大統領の国会におけるオンライン演説を聞いたからだろうなと思う。
演説のソースをいくつかあげておこう。まず動画。
https://www.youtube.com/watch?v=h6y69mgZO_Y
全文訳も今朝調べたらいくつか出ていたので列挙してみる。まずUkrinform。
続いてSakisiru。
それからAERA。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3788245b2b869fe9392b727adfcaba6827f3c2e1
AERAのものは同時通訳からの構成とのこと。
ウクライナ語の原文が下になるので、いずれより正確なものが出るかもしれない。
https://www.president.gov.ua/news/promova-prezidenta-ukrayini-volodimira-zelenskogo-v-parlamen-73769
まだじっくり読み込んだわけではなく、動画で同時通訳で見ただけだが、さまざまな人がさまざまなコメントをつけていて、やはり大きなイベントだったのだということはよくわかった。
距離は離れていても平和を望む気持ちは同じだ、という話から始まり、2月24日の侵攻の日に、日本が直ちに「アジアで初めてロシアに圧力をかけた」ことに感謝する、としていた。これに「アジアで初めてロシアに勝利した」日露戦争への示唆を読み取る人もいて、それは気がつかなかったけれどもかなりメタな文脈で読める部分が多く、そういう意味でそういう文章を好む日本人に向けてよく考えられた、よく練られた文章だなと改めて思った。
原発事故の恐怖を共有し、家族の離散と故郷に帰って住みたい気持ちを共有するという点で東日本大震災への間接的な言及とも取れるし、またシベリア抑留などの過去も読み取ることも可能だろう。
ロシアへの非難で、「最大の国だが道徳は最小だ」というフレーズが耳に残った。
また化学兵器でサリンに言及したことは世界初の大規模化学兵器テロであった地下鉄サリン事件を思い起こさせるし、北方領土が奪われた、という表現もあった。こうした日本とは自分たちそれぞれの問題を共有することができる、という話の振り方は巧みだったと思う。
求めることはまずはロシアへの経済制裁の継続だが、続いては恐らくは中国やインドなどのアジアの国々へのウクライナ支持を呼びかけることへの期待、復興支援への協力の期待。日本が調和を築き、それを維持することに長けている、と称賛し、その支援を求めていることを暗示した。
もう一つは、これは日本に対してだけではないけれども、国際機関が十分に機能していない、安全保障理事会がロシアが拒否権を持つこと、また侵略を止める手段を持っていないことに対し不満を表明し、新しい国際機関を作らなければならない、そのリーダーシップを日本がとってほしい、ということを訴えた。
この演説にはもっと本格的な論考がいろいろ出てくるだろうけれども、本当によく日本を研究して書かれた文章だと思う。軍事支援は期待しないが、外交によりアジアでロシアを非難する空気を強めるためのリーダーになってほしいということ。これは中国やインドがロシアよりなだけに日本が一際際立つのは確かだろうと思う。インドやカンボジアを歴訪してそういう立場への支持を求めた岸田首相の外交もきちんと見ているということなのだろう。
演説で言及された日本の昔話は「桃太郎」だったそうだが、「一緒に鬼退治をしよう」というメッセージともとれ、このメタな文章の深さはまだまだ読みきれない感じがする。
ウクライナには複数の大学に日本語学科があり、常に百人単位の日本語の学習者がいるそうだけど、日本国憲法をはじめとした日本の法制度や日本の世間の空気もよく把握しているように思ったし、平和や繁栄や復興や外交や経済制裁など軍事以外の協力を求めたところでも最大公約数的な、右も左も納得せざるを得ないような内容になっていた。
私なども、戦争が終わったらぜひウクライナに行ってみたいなあなどと思ったので、ちょろいものである。
この内容についてはまた書く機会もある気がするし、恐らくはこの演説を批判する向きも結構あるような気がするが、今後そういうのもまた観察するとして、とりあえずはこのくらいにしておこう。
戦争は続いているし、この戦争に対してさまざまな立場の多くの人たちの苦難もまた、続いている。「国際関係に疎いので」などと言わず、できることは協力して行けたらと思う。
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