ウクライナ・ロシア周辺で進む外交革命/ロシア文化を愛でることとロシア政府を非難すること
Posted at 22/03/16 PermaLink» Tweet
3月16日(水)晴れ
このところだいぶ暖かくなってきたのだが、朝夕はまだ冷え込む。とはいえ、今朝も最低気温がプラスだったのでもう冬日ではない。昨日一昨日の暖かさはフライングだと思ったが、明後日はもう彼岸の入り。暑さ寒さも彼岸まで、の格言はまだ生きているのだなと思う。
https://twitter.com/nexta_tv/status/1503834223848869902
ロシアとウクライナをめぐる外交が活発化してきた。一番注目されたのはポーランド・チェコ・スロヴェニアの首脳が戦時下のキエフを訪問しゼレンスキー大統領と会談したことだが、数日前にイスラエルのダマスカス空爆によりイスラエルやアメリカに報復攻撃しているイランの首脳によるモスクワ訪問と停戦の要請の動きも注目される。
https://twitter.com/JunkoYasmin/status/1502876442039889925
https://twitter.com/DmytroKuleba/status/1503408003143409664
一方でアルメニアがトルコ国境を開くかもと言っていて、これは2020年のナゴルノ=カラバフ戦争でアゼルバイジャンに敗れ、ロシアのみに頼ることの困難を感じたアルメニアの動きでもあるが、地域の安定を目指すトルコ側の働きかけもあったのではないかと思う。また、トルコはギリシャとの関係改善にも動いていて、黒海南岸を安定させることで北岸のロシア・ウクライナの交戦に影響を及ぼそうとしているのだろうと思う。
https://twitter.com/nexta_tv/status/1503779329959989253
https://twitter.com/eurasia_watcher/status/1503050690578776065
トルコのエルドアン大統領は、今回の事態を招いたのは2014年のロシアによるクリミア併合の際にアメリカをはじめとする西側諸国が早々に手を引いたことが原因だ、としていてこれはオバマ政権で副大統領でありロシアとの協調を重視して現状を追認したバイデン大統領の責任に言及しているわけであり、逆にいえばこの自体はアメリカがもっとなんとかしろと促しているのだろうと思う。
カザフスタンもロシア離れの動きを見せたり、ベラルーシも空弁当をロシアに攻撃されたりしているし、フィンランドではNATO加盟の世論が盛り上がっていたり、ロシアのウクライナ侵攻によってロシア周辺各地で停滞していた外交関係に幅広く動きが出てきているようだ。特にトルコとアルメニアやギリシャとの関係改善はトルコ革命以来の対立関係緩和の動きであり、まさに18世紀オーストリア・ハプスブルク家の女帝・マリア=テレジアがプロイセンと対抗するために末娘マリー・アントワネットを後のフランス王ルイ16世に嫁がせたような外交革命と言えるのではないかと思う。
それもこれもプーチンが独裁的に振る舞っているロシアの核戦争を招きかねない現在の動きがいかに危険であるかを物語っているわけだけど、今まで北方領土交渉を物欲しげに進めてきた日本政府はなかなかロシアに手玉に取られてしまって必要な交渉ができていないのではないかと思う。現在は変に二股膏薬をすべき時ではなく、「北方領土からロシアは撤退し日本に返還されることは当然であり、同様にロシアはウクライナから即時撤兵すべきだ」と強く主張することが必要だろう。
日本人は戦争というものが「この世に存在しない幽霊のようなもの」みたいに考える感覚が戦後教育の結果身についてしまっているように思うが、実際に戦争は存在するわけだし現に一方的な主張による全面戦争というあってはいけない戦いが行われているときに、それに強く反対するのは当然のことだ。だから戦いをやめるように呼びかけるのはロシアに対してであり、ウクライナ人、特に日本にいるウクライナ人に対してではない。
逆にロシアに対してロシア文化は別とエールを送ること(差別を避けることは大事だしロシアという国について知ることも大事だが、ロシア政府に対する精神的支援ではないことはより明確にすべきだろう)よりもウクライナに実態のある援助をし、ウクライナを理解し、ウクライナ文化に触れ、その民族主義的な問題も踏まえた上ではっきりとウクライナを支持して物心両面で支援しようとすることがより重要だろう。
ロシアという国は今、過去のドイツと同じように人類的な悪 ー 鬼舞辻無惨に匹敵するような ー を背負う存在になっているわけだけど、なぜロシアがそのようなことを始めたのかについても理解するためにロシア文化を研究すること自体は必要だろう。ロシア文化への愛とロシア政府への非難は両立することであるが、それが同じ起源を持つことにも自覚的である必要があるということだ。
ドナルド・キーンのような日本文化の理解者が元は戦時下米軍の日本研究から始めているというのもヒントになる。平和になったときにロシア文化を愛することと、現在のロシア政府の暴挙をやめさせることはおそらくは二つのことではないのだろうと思う。
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