公正世界仮説とウクライナ/結構ソ連だった昭和の日本/クルプスカヤの全面教育論とコミュニケーション能力偏重主義の始まり
Posted at 22/03/09 PermaLink» Tweet
3月9日(水)晴れ
日中はまあまあ暖かくなる、と言っても5度くらいなのだけど、朝はまだ冷える。今朝の最低気温はマイナス3.6度になるだろうか。いろいろと考えてしまうこととか多くて夜中に何度か目を覚ましたりしていた。今日も色々仕事はあるので無理せずに少しずつ乗り切っていければいいなと思う。
***
戦争前のウクライナは問題だらけの国ではあったが、ゼレンスキー政権の失策がロシア侵攻の原因だったという考えは、「公正世界仮説」そのものであるという指摘を見た。
https://twitter.com/OKB1917/status/1500942574651342848
公正世界仮説というのは「人間の行いに対して公正な結果が返ってくるものである、と考える認知バイアス、もしくは思い込み」(Wikpediaによる)のことだが、つまりウクライナが酷い目に遭ってるのはウクライナが酷いことをしていたからだ、と考える人が出てくる、という話だ。これはつまり、「叩かれているんだから悪いことをしたんだろう」と考える傾向のことで、これによってネットの炎上などはさらに強まる、というようなことは最近多くの人に認識されてきているが、まだまだそう考える人は多いのだなと思う。
ウクライナも問題だらけの国だ、という指摘は多分その通りで、開戦前は結構そういうイメージでウクライナのことを見ていたのだけど、戦争が始まり、実際に街の風景や逃げ惑う人々、戦う人々を見ていたりすると、なんというか「ちゃんとした国でちゃんとした生活をしている人々」に見えてくる。このイメージのギャップはどこで生まれているのかと思う。
一つ考えたのは、ウクライナの風景、特に都市の風景がどこかで見たようなある種懐かしいものである、ということがあるように思った。恐らくは旧ソ連の一律の近代化というか、それによって自分がイメージする都市生活みたいなものにウクライナの景色が近いからで、アメリカなどよりむしろウクライナの風景の方が私にとっては親近感がある感じがすると思った。画面にうつる無粋な白い直方体のビルなど、妙な懐かしさがあって、むしろ昭和の日本を彷彿とさせる。
ということは、昭和の日本というのは「結構ソ連だった」のではないかとも思った。
経済や社会においても昭和の日本については「最も成功した社会主義国」と言われていた時期があり、アメリカ的な自由主義や成果主義が導入されて日本は没落していったことが考えられるけれども、急速な近代化は定型的な建造物の量産という形を取り、そういうことに日本の社会的風土があっていたということはあるのだろう。それは野口悠紀雄さんが「1940年体制」と呼んだものかもしれない。
それとは少し違うことだと思うが、日本は教育に関しても実はソ連の影響を強く受けているということを昨日知った。
クルプスカヤ、つまりレーニン夫人の唱えた「全面教育論」が日本に特に1970年代から大きな影響を与えた、というのを昨日読んですごく納得したのだった。もともと日本では「知育・徳育・体育」みたいな「バランスの取れた=全面的な」成長、それを促す教育の重要性みたいなものが言われていたのが、それがさらに「クラス作り・仲間づくり」みたいな方向に行き始めたのが1970年代だというわけである。
これこそが「コミュニケーション能力偏重主義」の始まりなのではないかと思った。私の小学生時代は1969-1975なのだが、まだそこまで浸透はしていなかったような気がする。ただ、道徳の時間に見せられた教育テレビの番組は、「仲間作り」がテーマだったのは覚えている。
特に思ったのが、こうした教育の副産物が「同調圧力」や「いじめ」の激化だったのではないかということ。特にコミュニケーション能力の低さが問題視されるようになると、それは表面化しやすいのではないかという気がする。
「コミュニケーションが不得意=コミュ障」という問題が現代のように話題になるのは、昔はなかった気がする。もちろん以前からそれで悩んでいる人は多かったと思うし、私もそういう部分はなくないのだが、社会的にコミュニケーション偏重主義が特に教育によって高まったことと、「コミュ障」の顕在化は関係はあるのかもしれないと思った。
ウクライナだけでなく日本も、そしてロシアでさえ、「ソ連」からようやく解放されようとしている、それが今の2022年の現状なのかもしれない。まだその解放のされ方がどのようなものになるのか、見えないところは大きいのだけど。
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