日本経済の復活:無形資産投資とイーロン・マスク/日本のコンピュータサイエンスと半導体産業
Posted at 22/02/16 PermaLink» Tweet
2月16日(水)雪上がり
昨夜も雪が降り、そんなに大したことはなかったのだが車に積もったのと氷着したのがちょっと厄介。どうしようかなと考えたがそうかドライヤーか!と思ったが考えてみたら電源がない。とりあえずお湯をぶっかけるなり、後でやってみようと思う。
職場でメインに使っているパソコンがいきなり動かなくなり、いつもみてもらっている人に来てもらってみてみたのだが、メモリの接触不良かもしれないと言って筐体を開けてメモリを取り出して掃除し、ついでに中の埃もとって再起動してみたら動いた。これは経験からそういうことがあったからということでやってくれたのだけど、わからなかったら買い直すことになったわけなのでとてもありがたかった。その道の人はなんでもすごいなと思う。
今年は本当に立春後によく雪が降る。漢詩などによく春の雪が歌われるが、まあ歌いたくもなるよなという感じ。
***
「資本主義の新しい形」3-1-4なぜ無形資産投資の重要性を理解できなかったのか を読んでいる。
著者は、少子化による人口減少などを理由に「日本では投資機会が喪失している」という主張に対し、それは間違っているとする。つまり、資本主義が非物質化している現在、世界的には「投資の非物質化」も進行しているのに、日本の経営者は「ものづくり信奉」が強すぎて、こうした変化を認識できず、事業構造の転換が必要なのにそれが認識できていないとする。
経営コンサルタントのフランシス・マキナニーはアップルの戦略を事例にとって日本の経営者に事業戦略の採用を迫ったが、「ものづくりに無関係な計画は検討することができない」と退けられたのだという。
日本企業は「売上原価を重視したものづくり指向」のため、「キャッシュ化速度の速いハイパーものづくり競争」において競争優位を失ってしまっているとマキナニーは言う。
ここで無形資産投資について再度確認しているのだが、先に述べたように第一に情報化資産、第二に革新的資産、第3に経済的競争力があった。革新的資産への投資とは「広い意味での研究開発投資」であり、経済的競争力とは「人的資本投資」と「組織構造構築投資」である。これらは当然ながら従来の物的な設備投資とは全く異なるわけだ。また、著者はそれらは「製造業のサービス産業化」とも深い関わりがあるとする。
これらの点において、日本は全く立ち遅れているという。ドイツ等の事例を見れば、無形資産投資は有形資産投資よりも成長を促進することが観察されているという。神戸製鋼の報告書も高付加価値分野に事業の重点を移行させる事業再編が遅れ、古い不採算事業を構造転換できずに低収益に甘んじているのが日本企業の現状だとしている。
著者はこの先において脱炭素化と構造転換を結びつけることを提案しているのだが、それが最も成功している例を考えてみると、テスラかなと思う。
テスラは電気自動車で有名だがソーラーパネルなどもてがけ、脱炭素事業の最も目立つ成功例だろう。経営者のイーロン・マスクは南アフリカ出身で、アパルトヘイト下の南アフリカにおける徴兵を嫌ってカナダに移住したのち、オンラインコンテンツ出版ソフトのZip2社で成功し、その売却によって得た資金でPayPalになる会社を立ち上げ、宇宙開発事業のスペースXを手掛けた後、テスラの開発に参加した。
注目されるのは、彼が一貫して「知識集約産業」に関わっていることだ。初期のコンピュータソフト事業での成功者はその方面に限定して考えられがちだけれども、宇宙開発や電気自動車の開発など常にリスクは大きいが一番成功の果実が大きなところに飛び込み、事業を拡大していることについては昔の日本やアメリカの事業家たちと実際のところそんなに違うわけではないと思う。彼がやれたことは日本人でもやれたことだろう。
ただ、それが日本でやれたかどうかは正直言ってわからない。宇宙開発に乗り出した堀江氏や実際に宇宙旅行に行った前澤氏などについても多くの視線は冷ややかであるように思われるし、彼らに続いて宇宙開発に大々的に投資しようという動きはまだ出ているようには思えない。電気自動車事業にしてもトヨタなどに気兼ねをして出資を渋る人は日本では多そうだ。日本にはそういう土壌のようなものはあるけれども、こうした新しい事業に飛び込むベンチャー的な心意気があったからこそ、ソニーやホンダが成功したことは忘れてはならないと思う。
最近読んだものでいろいろ思うところがあったのが一つは野口悠紀雄氏の以下の記事だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6fbbd6e3511a4ec06fc84163ed80c8f895a0d79b
農学部を削れ、という意見にはあまり同意できないけれども、日本にはコンピュータサイエンスをもっと強くプッシュした大学ないし学部が必要だというのはその通りだと思うし、世界の最先端の人材と丁々発止できるような場を作る必要はあると思う。できればそれを日本語でやれる環境を作ることがベストだが、英語でもやれるような場面が作れると良いと思う。
こうしたコンピュータサイエンスの事業の現場は勤務時間や仕事量的にかなり厳しいところもあるだろうから、一度一線から引いて現場を離れた人材に教育を行うことができるようないわば「一旦休憩」の場を提供し、またそこで人材を育てて一線の会社がリクルートに来るようなそういう教育の場、それもかなり大規模なものを作ることは必要だろうと私も思った。
もう一つは「日本半導体 復権への道」をちらっと読んで思ったのだけど、日本は半導体産業をもう一度復活させる必要があるのは確かだし、それに必要な投資を無形なものを含めてしっかりやっていく必要があるだろうと思った。
半導体は過去日本が得意とした分野でもあり、「具体的なものづくり」の側面は強くあるし、知識集約的であるから無形資産投資もかなりしなければならないという点において、従来の発想から完全に離れることなく(「資本主義の新しい形」の著者は無形資産投資と脱炭素産業への転換を同時に説いているので両方とも日本では抵抗が大きいから難しいのではないかと思った)新しい産業構造に移動するためにはやりやすいのではないかと思ったということから注目してみたわけである。
このような提案はおそらくまだまだいろいろできることであって、産業構造の転換の中でより多くの労働者を正規で雇用し、社会全体を豊かにするような変化をどうもたらせるかを考えていけると良いと思ったのだった。
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