「日本はものづくりの国」というイデオロギー&文化に代わる「新しい企業文化」が求められているのではないか
Posted at 22/02/12 PermaLink» Tweet
2月12日(土)晴れ
一昨日の大雪が昨日の晴れでだいぶ溶けたのだけど、一昨日昨日はずっと雪かきをしていて大変だった。今日もまだ雪はだいぶ残っているのだが、天気がいいからこれからまた溶けるのだろう。今の気温はマイナス4.9度。日中は3度くらいまで上がるようだけど、天気が良いと0度以下でも放射熱のせいか雪が溶ける場合はあるのだよな。
「資本主義の新しい形」第3章製造業のサービス産業化と日本の将来の第1節日本企業の国際競争力低下 を読んでいる。
3-1-1象徴としての電機産業の凋落 では、日本企業の国際競争力低下の典型的な例としての家電産業の凋落について書かれている。1990年代までは電機産業は付加価値、出荷額、雇用者数などで日本の製造業の15〜20%を占めていたという。今からでは考えられないような全盛期ぶりで、まさに日本のリーディング産業であったとしている。それが、三洋は消滅し、シャープは台湾企業に買収され、パナソニックとソニーは凋落したまま、日立と東芝はインフラ産業に軸足を移したものの原発事業で失敗している。
半導体事業でも90年代には世界市場の半分以上のシェアを占めていたのが2017年にトップ10に入っている企業は東芝だけで、その東芝の事業も売却されてしまった。
携帯電話事業では2008年のシェアは11.3%だったのが2011年には3.8%に急落している。このような「日本企業の「象徴」の凋落」は改めて読んでみるとかなり急激な現象だったように思われる。
重要なのは、このような事業の不振だけが問題なわけではなくて、これは後にも書かれているのだけど昔では考えられなかったような「不祥事」が日本企業に頻繁に起こるようになってきているのも問題だと思う。
一番身近なのはみずほ銀行のATMの不具合が多すぎることだが、これは恐らくはシステム全体に何か致命的な欠陥があるのだろうと思う。復旧にも時間がかかるし、恐らくは何か起こっても原因の特定がすぐにできるようなシステムになっていないのだと思う。
また品質をめぐる不祥事も相次いでいて、マンションの構造計算が不適切だったとか、鉄鋼の強度不足が明らかになったとか、ちょっと昔では考えられないことが起こっているし、果ては経済産業省の統計にまで改竄されていたということになるとこの状況には深いところに構造的な原因があるということになるだろう。
恐らくは経済状況が悪いことが大きな原因なのだが、その理由が結局は「資本主義の非物質化」「知識産業化」「無形資産への投資」に対して日本企業が懐疑的で十分な投資がなされてこなかったことだとしたら、それは「経営責任」ということに、つまり「経営者が無能だったから」ということになるわけだけど、もちろん経営者も損をしようとして事業をしているわけではないので何か認識に大きな間違いがあるというような原因があるのだろうと思う。
その認識の間違いにはおそらく「日本はものづくりの国であり、その強みを生かして」というお題目があって、それがイデオロギーの域にまで高められてしまっていることがあるのではないかと思っている。
「日本」において「ものづくり」が盛んであり、特に「職人の技」を尊重する風土があり、職人が尊重されてきたというのは事実であるけれども、それは「経営者が偉かったから」とか「先見の明があったから」ということではないことは確かだ。ものづくりにおいてそうした伝統的な要素がプラスに働いてきたことは確かなのだけど、経営者までその神話に縋るようになってしまったらまずいだろうと思う。
「ものづくり=製造業」と考えると、そのいいところは「多くの労働者を雇い雇用の安定に寄与する」とか「その利益が工場や本社の存在する地域に還元されて潤う」とか、地域社会にも経済的な恩恵を大きく与えるというところがある。
また官僚による規制に対し技術者がその工夫を発揮しやすいというようなこともあるのではないかという気がする。
逆に言えば、日本は製造業において特殊な「ものづくり文化」みたいなものが特に戦後は形成されてきたということがあるのではないかというふうに思われた。
製造業から他の業態への転換というのは単に事業の転換だけではなく文化の転換も伴う大きなものであり、新しい分野に移ったら自分たちの経験は全く役に立たないものになる。というような経営者層の本能的な自己保身が「資本主義の新しい形」を認識させないようにしている、ということはあるのではないかと思われる。
逆に言えば会社というものに滅私奉公してきた意識からすれば、「製造という事業」が時代遅れになったということは主家の断絶の危機であり、断じて認められないことで、なんとか製造業の範疇で立て直さなければという無駄な足掻きが行われているということなのかもしれないと思う。
ただ製造業でもトヨタのように世界的な企業として生き残っているところはあり、それは家電と違って販売単価が個人に売るものなのに100万単位で高額だということもあるのだとは思うが、今なお生き残っている企業が実際には作っているのが昔と同じような意味で自動車なのかとか、生き残っている企業の特性のようなものも分析していくといいのではないかという気がする。
日本の経済界は問題だらけで、ただ経済界が復調して利益を上げていってくれないと日本自体が沈没していくだけになるのは確かなので、なんとか復活の足がかりを掴んでもらいたいと思う。
後半は内容のまとめというより現状認識と何をどう考えればいいかということを取り留めなく書いたけれども、今求められていることは恐らくは「日本はものづくりの国」というイデオロギーに代わる「新しい企業文化の創造」なんだろうというふうには思っている。
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