「リストラとはなんだったのか」/「資本主義の新しいパラダイムへの不適合」
Posted at 22/02/11 PermaLink» Tweet
2月11日(金・祝)晴れ
昨日は大雪で、当地では28センチの積雪になったが、朝は路面も凍結していて私も各所で雪かきをしていたら一段落したのは10時になった。今日は散髪に行こうと思っていたのだが、今からブログを書いたら何時になるか。まあ書けた時点で考えよう。
「資本主義の新しい形」2-3-5無形資産投資の経済政策・産業政策上の含意 を読んでいる。ここで述べられていることは前項までの議論を踏まえた上で、「今何をやらなければいけないか」の提言ということになる。
まず、無形資産投資が経済成長に大きな役割を果たしていることが明らかになった以上、それを支援する経済財政政策が必要であり、またそれを実行し効果を図るためにも無形資産投資を国民経済統計等に反映させるような統計の整備が必要になる、という政府に対する指摘・提言である。
これはおそらく基本的には妥当なのだと思う。具体的には研究開発投資に対する法人税優遇措置だけでなく、人材教育訓練投資を活発化させる優遇税制、また人的資本投資を強化することが提言されている。また、統計も無形資産の形成が統計に反映されるようになったら、経済の成長率はもっと大きい数字が出るかもしれないという。2016年度に研究開発費を国民経済統計に算入したら2015年度のGDPは30兆円増加したという。日本の2020年のGDPは529兆円なので、5%以上の違いになる。また、前項で指摘されているような無形資産投資全体、特に人的資産への投資などを参入したら、各国ともかなり積み増しされると思うが、恐らくは中国やアメリカ、インドなどの国々は激増しても日本はそんなに増えず、「世界第3位」から転落する可能性は高いだろうと思う。
統計的にGDPが増えたら日本人の現状認識が甘くなるのではないかと少し思ったのだけど、実際にはおそらく他の国々の延び方に比べてそうは増えないだろうから、返って日本の置かれている状況の危うさがより浮き彫りにされ、また問題点が明確化されるのではないかとも思った。
二つ目は日本企業の無形資産投資に対する停滞の問題である。現状に対し対応するために必要なのは企業が
1.競争力を高めるために科学技術的な知識を集約して研究開発を行いイノベーションを引き起こすこと
2.非製造業においても研究開発を行い革新的なビジネス・サービスを生み出すこと
3.企業内部の人的資本に投資=研究訓練投資することで知識を生み出し活用する人的資本を育てる
4.無形資産投資の成果を管理活用し新たな製品サービスに結びつけるための組織構造形成に投資する
ことだとなるが、日本企業ではこれらに効果的な手が打たれていない。それが日本経済が停滞している原因であると指摘している。
日本企業の無形資産投資の伸びが鈍ったのは1990年代後半だとされているが、これはちょうどアジア通貨危機や住専処理などで企業がリストラクチャリングをより活発に行なった時期と重なる。まあ因果関係が明確にわかっているわけではないけれども、これらのことから判断されるのは、日本企業は「投資を削らずに伸ばすべき部分を削り、切り離すべきところを残した」結果現在の停滞を招いたのではないか、ということだ。そこでは社内政治などビジネスとは少し違う次元のことで動いてしまった結果かもしれないし、一度そう動いしてしまったら合理的な方向には戻せなかったということかもしれない。
結局「リストラとはなんだったのか」という根本的な問題に遡るように思う。そこを総括しないと先に進めない部分が大きい気がするが、しかし現在の企業幹部は「リストラによりとりあえずの危機を回避した功績によって生き残っている人」が多いと思われ、自分たちのしてきたことを否定できないためにより困難が引き延ばされているということもあるのではないかという気はする。
「資本主義の非物質化」というのは、簡単に言えば「資本主義のパラダイムチェンジ」ということになるわけだけど、日本企業の多くはそのパラダイムチェンジを見誤って成長の芽を摘んだ、ということになるのかもしれない。
日本企業は高度経済成長後、2度の石油ショックを乗り切り、円高にも対応して高い経済力を維持し続けてきた。ということは、一定の枠内であれば日本企業は情勢変化にうまく対応する能力があったということだけど、こうしたパラダイムチェンジには対応できなかった、「新しいパラダイムへの不適合を起こしている」のだとしたら何が原因なのか。その辺りのところを先のところで考えていくことになるのだろう。
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