資本主義の変化が「個人のコミュニケーション能力」を要求しているのだとしたら、「職人的な日本」はどう対処していけばいいのか
Posted at 22/02/02 PermaLink» Tweet
2月2日(水)晴れ
寒さは少しましだが昨夜は眠くて風呂に入り損ねたので朝入浴。少し体のあちこちがかゆい。乾燥しているのだろう。ちゃんと水を飲まないと。
マガジンを買いに出かけたついでに少しその辺りを車で走ってきたのだが、広々としたところで東の方を見ると山の間に富士山が小さく、そしてその左上に金星が見えて、少しいいことが起こりそうな感じがした。写真を撮ってみたら両方フレームに入った。今日は旧暦1月2日。立春は4日なので、「年のうちに春は来にけり」ではないんだなと思うなど。
冬ももう少し。感想もあるし少し食べ過ぎな感じもする。コロナ対策もあるけれども、その他の体調にも気をつけて毎日を過ごしたいと思う。
***
「資本主義の新しい形」を読んでいる。
2-1-2「非物質主義的展開」の定義 では、先行議論は「知識」を強調するが、非物質的側面は「知識」だけではないというのが本書の論点。資本主義の変化は非物質的な方向ではあるが、ものがなくなるわけではないので「脱物質」ではないというのはそうだろう。「物的なものが非物的なものによって新たな価値を与えられる」というのはわかる。最近の広告を見ているとうるさいくらい周辺情報がついてくるわけだけど、自動車の性能だけでなく環境に配慮した、とかデザインが優れている、などと「非物質的な側面」によって付加価値が与えられるようになっているのは「非物質化」ということはできるだろうと思う。
2-1-3資本の非物質化 では、競争優位の源泉になるのは研究開発・アイデアとイノベーションを引き出す環境整備・経営戦略・ネットワーク構築などの制度構築とそれを担う「人的資源」への投資である、と言っているが、それもその通りだろう。
それに関連してロバート・ライシュの「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」(1991)で、高い価値を生み出す人間の能力として重視されるべきは「問題解決の技能」「問題発見の技能」それらを結びつける「戦略的媒介者」の三つだといい、企業は「モノを売って終わり」ではなく持続的なサービスを提供し続けることが価値創出の源泉になるので、それらへの投資が必要になる、という内容が紹介されている。
これは本当によくわかる。それができる人=「相談したくなる人」と仕事をしてみると、もっとこの人に仕事を頼みたいと思う。しかし同じ会社でもそれができる人はそう多くないから、担当が変わるとがっかりしてしまうことはよくあり、逆に言えばそのレベルに引き上げることはなかなか大変なんだろうなと思う。
2-1-4労働の非物質化 ではネグリ・ハート「帝国」(2000)で展開されている「非物質的労働論」が取り上げられ、知的・コミュニケーション的・関係的・情動的でありネットワーク的な共同作業から生み出される発想からくる価値創造の重要性が指摘される。またその発想は彼ら内部だけでなく家庭や地域における気付きからもたらされることもあり、外部性も持っているということが紹介されている。
これもその通りだと思うし、介護や看護などの現場仕事もどんどんコミュニケーション的な要素の重要度が高まってきていると思う。「創造」が「個人の力技」で行われる状況から、「集団のコミュニケーションの中で生まれる」傾向への変化は強まっているだろう。
2-1-5消費の非物質化 では消費がモノ消費からコト消費へ、つまり消費そのものの対象が非物質化しているということへ、つまり生活の基礎条件が確立していれば「非物質的な欲求」を満たす方向へ人々の優先順位がシフトし、「ポスト近代社会」においては生活の質や主観的幸福など非物資的な方向へ転換しつつあるという、イングルハート「Modernization and Postmodernization」(1997)の内容が紹介されつつ述べられている。
これはまあそのままだなと思うしむしろ私はこの社会の中で物質的側面の不足、つまり生活の基礎条件が崩壊した層が一定部分以上生み出されていることが問題だと思うのだけど、現代のいわゆる「中流」が求めるものというのはまさにそういうものだろうとは思う。
***
この節の内容を全体的に考えてみると、著者の言う通り「資本主義の非物質化」はかなり進んできているな、ということは思った。
以上に述べたようなことを教育論的に考えれば、全人的な能力の開発というか、特定の技能に習熟するだけでなく様々な情報を共有しアイデアを出し合って新しいものを生み出していく「コミュニケーション能力」と「活動力」が重視されているわけで、そのような力を持った人たちとそうでない人たちの差はますます開いていくことになってしまうだろうなあと思う。ASDなど、そうした活動を不得手とする人が可視化されてきているのは、逆に言えばコミュニケーション能力の重要性が社会的にも高まっているからなのだろう。
それがいいことか悪いことかは難しいなとは思っていたが、それが資本主義の変化による必然的要求であるとすると、その変化に対して個人がどう対処するかだけでなく、特によく言えば職人気質の人が多く考え方が強い日本において、どのように経済システム内でそういう人たちを活かしていくかはかなり重要な問題だと思うし、その辺りのところにうまく対応できていないのが現代の日本の経済停滞の一つの原因だと言えるのかもしれないと思った。
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