通信と放送のビジネスモデルの問題について
Posted at 22/01/18 PermaLink» Tweet
1月18日(火)
今朝起きていろいろ考えていて、やらなければならないことがあるのは確かなのだが把握しきれてないなあと思って書き出してみたら結構いろいろあった。毎日本を読んでいたらちょっと現実に対応するのが疎かになってきていて、ちょっと時間をとって現状把握をしないといけないなと思ったり。
昨日はずっと本を読んでいたのだけど疲れてきたので夕方になって出かけて岡谷でマンガを買た。ついでに本を物色していろいろ探したのだけど、今読みたい感じの本があまりなくて、というか実際のところは必要な本はすでにある程度あるので先にそちらを読むのが先決なのだけど、なかなか読み進められないというのが本当のところ。で結局買ったのはヒロユキ「カノジョも彼女」9巻(講談社)と大井赤亥「現代日本政治史ー「改革の政治」とオルタナティブ」(ちくま新書、2021)の2冊。
カノカノはだいぶ話が進展してきてキャラとして紫乃が割と好きになってきた感があるのだが、最近結構話の中心になってきていていろいろヤキモキできていい。後者は立ち読みしながらいろいろ考えたのだけど、「改革」の正体というか新自由主義との関わりというあたりで現象面を押さえるのに割といい感じがしたので買ってみた。ただ順番として先に読みたいという感じではないのでなかなか難しいところ。ぱらっと読んでみた感じではあまり賛成できないまとめ方の部分があり、是々非々で読むことになりそう。
***
「IT全史」第五章。ラジオの民間放送が始まった初期(1930年)からすでにサーノフは白黒テレビとカラーテレビを射程に入れていたということを知ってへえっと思った。この章は最初だけはアメリカの話なのだけど、途中からずっと日本の話になる。1925年のラジオ放送の開始から戦争を挟んで1951年の民間ラジオ放送開局とその後の展開が書かれているのだけど、民放ラジオの開始当時から電通の吉田秀雄が、つまり広告会社が大きく関わっていたということを知った。
広告で経営を成り立たせるというラジオのビジネスモデルはすでにアメリカで成功例はあったのだが、最初は民間放送開局をGHQにも拒否されてなかなか始めることができず、1951年になってようやく許可されたと。そしてこのラジオの広告料収入によるビジネスモデルはそのまま白黒テレビからカラーテレビの時代のテレビ放送に受け継がれて、技術革新はあったけどビジネスモデルとしては同じ延長線上で発達した、という話はなるほどと思った。
そして実は白黒テレビはNHKよりも日本テレビの方が先に放送免許を得ている、というのは日本テレビ放送網を構想した正力松太郎がアメリカの構想に乗っかってどんどん話を進めたからだというのがへえっと思った。NHKは先を越されることを恐れて全力で国産技術を開発し、1953年に先に開局に成功。しかし半年後に日本テレビも開局し、最初から広告を流したそうだが、それは精工舎の正午の時報だったというのもへえっと思った。
NHKがテレビ放送の開始をゆったり構えていたのは、いずれカラーテレビが開発されるからそれまで待てば良いという考えだったというのがこれもまたへえっという感じなのだが、正力は構わず民間放送を広告付きで流す構想をぶち上げ、受像器不足の問題を「街頭テレビ」で解決するという荒技に出た、というのは草創期のエピソードとして面白い。白黒テレビは1959年の皇太子御成婚で広く普及し、カラーテレビは1964年のオリンピック中継で普及したというが、私の幼稚園時代(1968-70)はほとんどの番組は白黒だったし、カラーの番組には「カラー」という字幕が出た。
私の子どもの頃はまさに白黒からカラーへの移行期だったので、アニメも「どろろ」(1969)とか再放送でやってた「トムとジェリー」(1964)とかは白黒だったし、「妖怪人間ベム」(1968)や「タイガーマスク」(1969)はカラーだった。写真も子どもの頃は白黒だったし、NHKが白黒を飛ばしてカラーから放送を始めようとしていたというのはちょっと驚いた。子供は最初に見たものを過大に評価する刷り込みがあるからだろうなとは思うのだけど、逆にいえば白黒テレビというのはせいぜい20年ほどの短い時間の主役だったのだなと思う。円谷プロの特撮も「ウルトラQ」は白黒だったが「ウルトラマン」以降はカラーになった。
双方向だった電信電話の有線の技術が、無線通信の発達とともに「送信は事業者が行い、一般の人は受信のみという形態」に発展したが、当初はアマチュア無線という双方向の分野も大きな存在を占めていたというのも重要だろうと思う。ただ「自分で送信したい」という情熱のある人はそう多くはなかったということだという。私なども通信技術の経験はラジオやテレビの「受信オンリー」の経験からスタートしているので、インターネットの双方向性をとても新しいものと感じたけれども、元々はそうではなかったということも認識しておきたい。しかしラジオやテレビの番組構成技術、コンテンツ作成技術というものが通信経験をとても豊かなものにしたとは言えるし重要だと思う。
インターネットもテレビに比べれば双方向性は現在でも遥かに高いけれども、プロの参入によるコンテンツ性もかなり高まってきた。ただ、ラジオやテレビのマスメディアの時代に比べればブロガーや動画配信者のような素人上がりでも食える可能性が出てきたのはかなり新しいことだとは思う。
また収益化の方法もラジオ・テレビ以来の広告によるものと書籍の系統のコンテンツ販売の形式の双方が出て来るとともに、新聞や書籍・NHKの聴取料的な月額制のサブスクのシステムも始まり、ネット初期の広告偏重の時代から比べると多様な方法が可能になってきたなと思う。
後半部分はまだ読んでない時代のことを書いてしまったが、やはり収益化の問題は重要だなと思う。RCAなども初期は機器販売の利益がかなり大きかったし、電話事業における日本の電電公社の機器貸与によるハードの独占というシステムもベル電話会社→AT&Tがすでに行っていたものの踏襲であるということもなるほどと思った。通信料自体も高額であったし、電話の時代は、ビジネスモデルも一緒に輸入したわけである。
しかしネットの時代になるとアメリカで開発したシステムを日本が直輸入するという国境の壁を前提としたシステムは成り立たなくなったわけで、全ての収益がGAFAなどのアメリカ企業に吸収されていくことになった。この辺の変化はかなり根本的なものであって、日本独自のシステムの構築はほとんど成功していない。まあそれは日本に限ったことではなく、国境の壁の構築に成功した政治システムの違う中国を除けばほぼ世界中そうなっているわけなのだけど。
多くの情報がオープンにされていく中で情報自体を収益に結びつけていく方法はこれからも模索はされていくと思うが、通貨と違って情報は量だけでなく質の問題が伴うので、その辺りがどのような形で整理されて行くのか、見ていきたいし考えていきたいと思う。
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