「経済学を学ぶことは経済的か」/「自分の知の体系をスクラップアンドビルドしていく」
Posted at 22/01/12 PermaLink» Tweet
1月12日(火)晴れ
昨日は一日雪が降ったり雨が降ったりでぐずついた天気だったが、今朝は晴れている。風が結構強くて、寝床の中でも風の音を聞いた。冷え込みはそれほどではないが、風の分だけ寒い感じがしている。
昨日も書いたが日本の現状をよりよくしていくために情報資本主義的なものと中国の世界進出に比較しての日本帝国主義の理解を広げ深めていき、またそれについて書いていきたいと思っているのだが、まず何を学ぶか、具体的には何を読むか、何から考えていけばいいかということをいろいろ考えていた。昨日あげた本がほとんと全部経済学の棚にあり、ああそうか資本主義というのは経済学の問題だったかと改めて認識したのだけど、植民地とかもつまりは経済の問題なんだと考えているうちに理解してきて、自分がいかに経済学について関心を持たないできたかということを改めて認識した。
自分自身のことを考えると、自分の行動をいかに効率よくするかとか無駄を省くかということを考えるのは好きだしそういうことを考えながら行動をしている、つまり「いかに経済的に行動するか」ということを結構いつも考えているのだけど、なぜ経済学に関心を持たなかったかと言えばそれはつまり「経済学を勉強することは経済的でない」と感じていたからなんだなと思う。
理由は身の回りの「お金は問題ではない」という昔の家庭の雰囲気とか(うちはどちらかというと教員が多い家系)、経済についての勉強が自然科学や人文科学に比べて「真理の追究」という感じがしない、つまり勉強しても何かわかるようになるという感じがなかったこと、あとは雑誌やテレビやネットで見ていても経済学者というのはいつも口が悪くてお互いに罵り合ったり否定しあったりしていて人間性に問題があるんじゃないかという感じが付き纏っていた、というようなことも大きいだろうと思う。
だから自分は事実から真実に迫ることができるのではないかと思った歴史学の方へ行ったのだけど、日本では基本的に人文学である歴史学は未来の予測や政策の提言には当然ながら慎重でなければならないわけで、その辺にどうも物足りなさを感じていた。
経済学よりは政治学や社会学の方にまだ関心があったし、実務的には法学も必要だなという感じはあるわけだけど、結局数字をいじっているだけに見える経済学がどうも魅力的に見えなかったことは大きいなと思う。
しかし栗原裕一郎さん、稲葉振一郎さん、北田暁大さんなどの議論を読むようになってから経済政策の重要性は理解できたのだけど、だからと言って経済学そのものに関心が移ったわけでもなかった。ただ、歴史の進展を生産様式とか資本主義のあり方から見ていくのだとしたらそれには当然ながら経済学的視点が必要だということに当然ながら気づいて、今更ながら戸惑っているということなんだなとようやく気づいた。
人文学的な、あるいは倫理的な側面から考えると植民地経営と国際協力は全く別のものなのだけど、開発経済学という視点で言えば結構似たようなものになる(主体がどこにあるかは違うが方法論はかなり転用できるだろう)わけで、経済学的な視点から見た世界の見え方といのはおそらく自分があまり経験したことがないものだろうなという感じがする。
従来の「自分の感受性」と「経済学的な世界の見え方」をどう折り合いをつけていくかが多分結構ポイントになってくるだろうなと思うし、自分の感受性を前提にした上で積極的に肯定できるもの、理解はできるもの、受け入れ難いものというのだが出てくるのだろうと思う。まあその辺はどんなことを学んでも当然あることではあるのだけど。
こういうことは少し本を読んでいくとすぐ感じることで、まずは書いてあることの重要性ということについてなかなか思いが至らないということが大きいのだよな。ただこういう時に感じることというのは実際には専門家の盲点になるような論点であることも多いので、大事にしていきたいとは思う。
日本の植民地拡大に関しても、植民地というのは普通は「原料供給地」と「市場」として重要、というふうに考えるわけだが、最初の新規開拓地である北海道は農業生産、次の台湾でも基本的には資源開発、朝鮮では米の生産だろうか、満洲では大規模投資をして重工業生産を図ったが、内地への輸入では大豆がかなりの部分を占めたとか、それぞれの特性と当時の日本が植民地に何を求め全体としてどういう国家経営を行おうとしていたのかとかは政治や軍事の動きを見ているだけではわからないわけで、もっとそういうところを見ていかないといけないと思った。それによって今中国がやろうとしていることが見えてくるということもある気がする。
とりあえず読み始めたのは「IT全史」なのだが、序章では梅棹忠夫の、生態論に根ざした「情報産業論」を引きながらベルやマクルーハンの先駆者としての梅棹の位置を強調し、現在の日進月歩の情報技術の進歩を梅棹の視点から捉えようとする意気込みが語られている。梅棹といえばもちろん「文明の生態史観」の人ではあるが「知的生産の技術」の人でもあり、今西錦司に始まる新京都学派でも最も著名な人であるわけだが、私は父の関係で川喜田二郎のKJ法の方を学んだことがあり、特に梅棹さんはいいかな、という感じがあったので、この辺りも自分にとっては見てこなかった対象であり、なかなか今になるとキツい感じがある。
フランス革命時代に「腕木通信網」が全国に張り巡らされ瞬時に情報が伝達されていたというのは全然知らなくて(私はフランス革命で修士論文を書いたのだが)、不勉強を恥じるしかないなあと思う部分もかなりある。ということは逆にいえば革命史研究、歴史の分野ではこの画期的な技術があまり重視されてなかったといことでもあり、学び直すべきことは多いなと思う。
学ということはある意味自分の知識や世界認識網をスクラップアンドビルドしていくことではあるのだけど、かなり錆びついた部分も多い自分の知の体系を補修と再構築しつつ、文章を書いていきたいと思う。
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