「歴史の真実」について考えてみる/68年と連合赤軍と毛沢東主義とその影響
Posted at 22/01/15 PermaLink» Tweet
1月15日(土)くもり
歴史修正主義について一度書いてみたのだが、まだ発表するには早いかなと思ったのでもう少しもんでもう少し考えてからアップすることにし、その辺も含めて雑談的に書いてみる。
人が「歴史の真実」にこだわるのは、「自分の持ってる国家像」を「歴史的「真実」」によって補強し組み立てたいからだよなあ、と思う。だから歴史認識問題というのが起こるのは国家像に左右対立がある日本史の分野であって、西洋史とか他の国の歴史の「真実」に関しては割とおおらかだったりする。アイルランド問題について泣くほど語る人は日本にはあまりいない。
私は西洋史専攻だったので、歴史というのは客観的なものだという考えを持っている。高校の社会科(後に地歴公民科)教員になったときに教科書を改めて読み直したのだが、日本史はあまりに主観的・物語的に思われて驚いたことがあった。また東洋史は中国中心史観だったのが解体されつつあり、何かわけがわからんものになりつつある印象はある。
そういう「主観性の支配する部分が結構ある」日本史分野において、「〇〇の真実」という主張をするのは、時の支配的な歴史観が虚偽と隠蔽に満ちているという見方からである場合が多い、つまり陰謀論的な見方が背景にあることが多いわけだけど、しかしそういうものがあとからあとから出て来るのは、公式的な歴史に虚偽と隠蔽が全くないかと言えばそうでもないわけで、実際のところ「闇から闇に葬られた事実」みたいなものはあるからとは言える。それがどの程度の規模かはまた別の問題だけど。
「歴史修正主義」という言葉がどうもひっかかるのは、この問題には「イデオロギー」問題の部分と「史料実証」問題の部分とがあって、これは左右双方とも(かなり意図的に)混同している部分が多いからのように思われる。実際のところ水掛け論に持ち込まれることも多く、今のところ肯定されている歴史観の側は水掛け論に持ち込めば勝ちみたいなものだから団扇を左手に持ってやってるし、歴史観を変えたい側は目を三角にしてやってるからキモいと思われがちということになる。
実際のところ、林房雄「大東亜戦争肯定論」は史料実証問題ではなくイデオロギーの問題、近代史全体のとらえ方の問題からきているわけで、「西力東漸」という東アジアでは一般的な歴史の見方に日本史を組み込む組み込み方を巡る論争を引き起こしたが、現代ではその枠組みを利用して中国が自らの正当化を図るなど日本の左右対立では対応しきれない現実が起こっていて、「〇〇はなかった」という史料実証次元でない主張がこれからはより見直されていくのではないかと思う。
また、忘れられているのは戦争の歴史以前に戦後の歴史である、という話からは「1968年」の特集に連合赤軍が取り上げられていないというトピックが話題になっていたのでそのことについて少し。
連合赤軍が出来たのは1971年だから「1968年」には関係ないという主張については、当たり前だが「連赤」は1971年にいきなり虚空から出来たものではなくて、68年時点ではブント(第二次共産主義者同盟)だったり日共(日本共産党)を除名された毛沢東主義者だったりした人たちが紆余曲折をへて一つの集団になったわけで、「連赤は68年と無関係」だというのはちょっと馬鹿げていると思う。「室町幕府」と「建武の新政」が無関係だというようなものだと思う。
ただ書いていて思ったのは、連赤の一つの要素として「毛沢東主義」があったことはもう一度確認しておいた方がいいかも、ということだ。当時はある種の「中国ブーム・毛沢東ブーム」みたいなものはあったわけで、それこそ中国の「68年」である文化大革命とは強い関係があっただろう。
武装革命路線としての「山村工作隊」から「あさま山荘」への流れというのは、「毛沢東主義」というものを媒介に考えれば脈々と続いていたと考えていいのではないかなと思ったのだけど、つまりは「農村から都市を包囲する」という思想だからこそ「革命家の山籠り」という一見奇妙な現象が起こったのだと思う。その影響はエコロジーとか自然食とかそのさきの左派系スピリチュアルの諸現象や、「動物の権利」などの方にも無関係ではない印象はある。
毛沢東主義はポルポト政権を始めネパール共産党や南米の左派テロリスト集団など広範な影響を与えているので、連合赤軍事件もその文脈の中で位置付けてみるとまた従来とは違う側面が明らかになるようにも思った。
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