昨年読んだ本を17冊あげてみた(1)

Posted at 22/01/03

1月3日(月)晴れ

今朝は昨日一昨日に比べると冷え込みが緩い感じだ。まだ日の出前なのでどこまで下がるかはわからないけど今の所の最低気温はマイナス3.7度。昨日はマイナス10度以下だったので職場に出て年賀状の返信を印刷していたらトイレが凍結していて解凍するのに時間がかかった。でもその条件下でもリコーの複合機がちゃんと動いていて偉いなと思った。ただ、新しい年賀はがきを持っていくのを忘れて家に取りに帰るというのを1日に2度やってしまったので流石にうっかりにも程があった。




 

昨日は「ハコヅメ」を読み直したり無料になっていた「終末のハーレム」を少し読んだりドラマで妹たちが見ていた「義母と娘のブルース」の原作マンガを探し出して読んだりしていた。家に大勢人が来ている(まあ2年ぶりの帰省ということだが)と生活ペースも思考パターンも普段とは変わるので、普段は見ないドラマなども少しは見て、綾瀬はるかの演技がいいなとかこの役者のフラの部分がこの役にあっているなとか原作とはかなり変えているなとかそういうことを考えながら見ていた。全部見たわけではないのだけど。
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昨年読んだ本(読み切ってないものやまだ読んでるものもいくつかあるが)のうち、いくつか思いつくものを紹介。


 

今読んでいる最中、というか年末年始で中断しているのが福嶋亮大「ハロー、ユーラシア」。このブログでも感想や考えたことをずっと書いているのだけど、冷戦終結とともにリバラルデモクラシー一強の時代になり、「歴史の終わり」などと言われたのも今は昔、中国やロシアで新しい「帝国=天下」の思想が起こってきていること、またその周縁である台湾や香港での現代思想について、中華圏全体での「近代以降」の思想史の流れなど、今まであまり関心を持ってこなかった部分がよく書かれていて大変興味深い。ただ、私としては日本をこれからどう建て直していくかという問題意識があるので、それに資するかどうかというあたりが読む気になるかどうかの分かれ目なので、ある部分は読む気が薄くなるところもなくはない。また著者の思想もかなりリベラル寄りなので、その辺りで鼻につくところもなくはない。香港や台湾に新たに起こった中華圏=中華帝国とは別の、自らのナショナリズム=本土主義のような考え方も面白いし、その辺りが日本のあり方にも響いてくる感じがする。


 

與那覇潤「平成史」。まだ歴史になりきってない「新しい過去」について、同時代人のひとりとしての目配りを持って書かれた読みやすい本だった。文学理論や社会理論の変遷など、私が同時代で関心が薄かった部分を解説してもらえて、それでこの世界が今日こうなっているのかという部分がわかる感じがするところがあった。平成を振り返るときにまた読むことになると思う。


 

宮澤孝之「京大驚きのウイルス学講義」。ウイルスについての基本的な知識の解説から、コロナウイルスの特徴など、ウィルスについての基本的な知識は勉強になった。感染症学の人や疫学の人たちとかなり意見が衝突していて、「反ワクチン派」的に見られていた感があるが、一つの現象についても科学的な立場や半ば政治が入ってくる疫学や医療体制の問題が入ってくる感染症学の立場からでは必ずしも意見が一致しないのだということがこの2年の間でよくわかったし、ただ、実際には大勢に沿った行動をするにしても、いろいろな立場の人の意見や見解を聞いていくことは大事だと思った。


 

Rei「生きているだけで疲労困憊」。発達障害を持って特別支援学級に通い、そこでの様々な経験や家庭での経験、普通高校への進学やその後の就職のことなど、よく知らない世界のことが書かれていたが、時々ものすごく身につまされるところがあったり、ゲーム→パソコンの技能を持っていることで全く世界が違ってくることの現代性なども驚きながら読んでいた感じがする。どういう人に響く本なのかはよくわからないのだが、誰でもどこかしら響くところがあるのではないかという気がする。

レンマ学
中沢 新一
講談社
2019-08-08

 

中沢新一「レンマ学」。学問というものの再構築を図っているらしい。特に大乗仏教関係のところは自分の知らないことが多くてとても面白かった。ただ数学の話になるとちょっとよくわからなくて、その辺で読みが止まってしまい、最後まで読めていない。どこまで妥当性・有効性があるのかはわからないのだけど、ある種の極北としてこういうものも読んだことは何かしらの経験には確実になっているように思う。
伊藤俊一「荘園」。今年読んだ歴史関係の本では一番収穫があったと思う。「荘園」というものは古代から応仁の乱、太閤検地まで存続するわけだけど、人が生きていくとはどういうことか、集落が存続することの困難さ、土地争い・水争いの熾烈さ、現代に続く「農村部の閉鎖的な人間関係」がむしろ「中世以来の輝かしい自治の伝統」と裏表であることなど、読んだことや考察したことなどから得るものはたくさんあった。


 

鈴木由美「中先代の乱」。松井優征「逃げ上手の若君」の主人公・北条時行に関しての本格的な研究者である鈴木由美さんの一つの集大成。なかなかまとまった研究がない中で、鈴木さんの本は彼を知るための道標になる。北条早雲を主人公としたゆうきまさみ「新九郎奔る!」もそうだけど、最新の研究がなくては描かれなかった様々な中性子を題材としたマンガ作品がいろいろ出てきたことはとてもいい時代に生きているなと思う。そしてそれを可能にした中世史研究が進んでいることも、「この時代に生きていることの幸せ」を感じることの一つだなと思う。

クローズアップ藝大 (河出新書)
東京藝術大学
河出書房新社
2021-05-21

 

国谷裕子「クローズアップ藝大」。現代の芸術家たちは何を考え、どう行動しているのか、みたいなことがまとまっていたように思う。それは必ずしも私から見て面白いものではないのだけど、トリエンナーレ騒動とかで何が起こっていたのか、どこが大衆と遊離しているかなどが理解できたところもあった。芸術というのはできればその世界で生きてみたいと思っていたところの一つだから、そういう世界がなんというかある意味残念になりつつあるのは私としても残念なのだけど、そこはある意味日本の中で世界が如実に反映している場所でもあるので、日本を守るために「武装」しなければいけないジャンルの一つでもあるのだろうなと思った。

小林秀雄の政治学 (文春新書)
中野 剛志
文藝春秋
2021-03-18

 

中野剛志「小林秀雄の政治学」。文芸評論家が政治を論評するのが日本の伝統、みたいなことを福田和也氏が以前書いていたが、自分の中では小林もその一人だった。しかし考えてみたら彼が直接に政治的発言をすることはそうはなかったわけで、彼の様々な言説の中から彼にとっての政治を読み取り、また文学の世界の重鎮であった彼を評価した丸山眞男らの評の妥当性などを検討したこの本はいろいろと面白かった。

昨年読んだ本はTwitterで17冊ほど上げていたのだが、うち9冊について簡単に書いてみた。続きはまた改めて書こうと思う。残りの8冊は

萩尾望都「一度きりの大泉の話」
渡辺京二「近代の呪い」
宇野重規「保守主義とは何か」
呉座勇一編「南朝研究の最前線」
亀田俊和「南朝の真実」
小林和幸ほか「明治史研究の最前線」
舟橋正真ほか「新説の日本史」
田中克彦「言葉は国家を超える」

というところ。天文関係の本もあるはずなのだが、今回はとりあえずまた。





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